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第187話 変化と幸せ
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帝国と戦いの後、程なくレナンは懐妊した。
あの時の感動と驚きは忘れられないが、そこから世界はがらりと変わるとは予想だにしていなかった。
過保護すぎるくらい甘やかされ、大事にされ、守られて、一人になる事は殆ど許されなかった。
それは跡継ぎを宿したからなのかもしれないが、とかくエリックが縛り付ける勢いで次々に指示を出していたのは覚えている。
「レナンに傷一つつけるなよ」
彼は率先して妊娠や出産についての勉強をしたり、直に話を聞いたりしていた。
レナンの実母トゥーラにも頭を下げ、支えて欲しいと頼んだのもある。
恐らく妊娠していたレナンよりも、エリックの方が精神的に追い詰められていたのではないかと言うくらい、あの時のエリックは殺気立っていた。と、二コラが後から教えてくれたのだ。
何とか出産を終え、レナンが無事であったその時にようやく憑き物が取れたように落ち着いたと。
生まれた男女の双子を見て、エリックの目も潤み、まさに鬼の目にも涙だった。
アルフレッドもアナスタシアも、久しくエリックが泣いたのを見た事がないと言っていていたし、余程嬉しかったのだと安堵した。
「ありがとう、レナン」
そう言って労わってくれる、だが、そこからまた甘やかされるという生活は終わらなかった。
「もうすぐ皆さんがいらっしゃる時間ですね」
ラフィアの促しに時計を見る。
「もうそんな時間だったのね」
縫い途中の産着を綺麗に仕舞うと、別な箱を取り出していそいそと準備をする。
「喜んでくれるかしら?」
もじもじと自信なさそうにしているレナンに、ラフィアは優しく微笑む。
「勿論です。レナン様が心を込めてお作りしたものですもの。絶対に喜んでもらえますわ」
レナンの代わりに綺麗に包まれたプレゼントを大事に持つ。
それはプレゼント用の手製の産着だ。ミューズとマオに渡そうと並行して作っていたのである。
「二人には良くしてもらったし、なかなか会えなくなってしまったもの。せめて何か記憶に残るものを渡せないかなって思って」
ミューズやマオと話す時間は大幅に減っていた。
帝国の復興で移り住んでしまったマオはともかく、ミューズとも離れてしまったのである。
それまでリオンが請け負っていた外交の部分を補うために、ティタンもまたアドガルムを離れることが増えた。
他国の言語、文化についての知識はリオンに遠く及ばないが、人柄の良さと目に見える誠実さで、他国の者に割と好感触であった。
足りない部分はミューズやセシルが補い、そしてルドやライカも剣だけでなく話術を磨く努力をする。
ティタンと共に色々な国を回れることが嬉しいようで、ミューズはよくレナン宛に手紙に送ってくれた。
その内容がまた微笑ましい。
「何を見るのもどこへ行くのもティタン様と一緒だととても楽しいのです」
外交で諸外国を回るのは大変だが、それでもその合間に色々なところを見せてくれたり、お土産を買ってくれたりするらしい。
「どうやらリオン様と密にやり取りしているらしく、お勧めの店や観光地など私が好きそうなところを聞いているようですわ」
そのおかげで少ない時間でも楽しみを見つけられているようだ。
そんなミューズと久々の再会になるなのは、何も外交にいっていたからだけではない。
ミューズもまたレナンの後に、妊娠し、そして出産場所をセラフィムに決めたからだ。
「我が儘を言って申し訳ございません。ですが母の近くで出産をしたくて」
心配ではあったが、ミューズが決めた事ならばと反対はされなかった。
何よりセラフィムは薬学の国。
最高の薬師がおり、優秀な医師も多く、産後の対応も慣れている。
そういう意味での安心感はあった。
「うふふ、どんな可愛い子かしら」
実はレナンはまだミューズの子には会っていない。
薄紫色の髪をした女の子だとは聞いたが、それ以上の情報はまだだ。
早く会えることを楽しみにしている。
色々な事を考えているとノックの音が聞こえてきた。
あの時の感動と驚きは忘れられないが、そこから世界はがらりと変わるとは予想だにしていなかった。
過保護すぎるくらい甘やかされ、大事にされ、守られて、一人になる事は殆ど許されなかった。
それは跡継ぎを宿したからなのかもしれないが、とかくエリックが縛り付ける勢いで次々に指示を出していたのは覚えている。
「レナンに傷一つつけるなよ」
彼は率先して妊娠や出産についての勉強をしたり、直に話を聞いたりしていた。
レナンの実母トゥーラにも頭を下げ、支えて欲しいと頼んだのもある。
恐らく妊娠していたレナンよりも、エリックの方が精神的に追い詰められていたのではないかと言うくらい、あの時のエリックは殺気立っていた。と、二コラが後から教えてくれたのだ。
何とか出産を終え、レナンが無事であったその時にようやく憑き物が取れたように落ち着いたと。
生まれた男女の双子を見て、エリックの目も潤み、まさに鬼の目にも涙だった。
アルフレッドもアナスタシアも、久しくエリックが泣いたのを見た事がないと言っていていたし、余程嬉しかったのだと安堵した。
「ありがとう、レナン」
そう言って労わってくれる、だが、そこからまた甘やかされるという生活は終わらなかった。
「もうすぐ皆さんがいらっしゃる時間ですね」
ラフィアの促しに時計を見る。
「もうそんな時間だったのね」
縫い途中の産着を綺麗に仕舞うと、別な箱を取り出していそいそと準備をする。
「喜んでくれるかしら?」
もじもじと自信なさそうにしているレナンに、ラフィアは優しく微笑む。
「勿論です。レナン様が心を込めてお作りしたものですもの。絶対に喜んでもらえますわ」
レナンの代わりに綺麗に包まれたプレゼントを大事に持つ。
それはプレゼント用の手製の産着だ。ミューズとマオに渡そうと並行して作っていたのである。
「二人には良くしてもらったし、なかなか会えなくなってしまったもの。せめて何か記憶に残るものを渡せないかなって思って」
ミューズやマオと話す時間は大幅に減っていた。
帝国の復興で移り住んでしまったマオはともかく、ミューズとも離れてしまったのである。
それまでリオンが請け負っていた外交の部分を補うために、ティタンもまたアドガルムを離れることが増えた。
他国の言語、文化についての知識はリオンに遠く及ばないが、人柄の良さと目に見える誠実さで、他国の者に割と好感触であった。
足りない部分はミューズやセシルが補い、そしてルドやライカも剣だけでなく話術を磨く努力をする。
ティタンと共に色々な国を回れることが嬉しいようで、ミューズはよくレナン宛に手紙に送ってくれた。
その内容がまた微笑ましい。
「何を見るのもどこへ行くのもティタン様と一緒だととても楽しいのです」
外交で諸外国を回るのは大変だが、それでもその合間に色々なところを見せてくれたり、お土産を買ってくれたりするらしい。
「どうやらリオン様と密にやり取りしているらしく、お勧めの店や観光地など私が好きそうなところを聞いているようですわ」
そのおかげで少ない時間でも楽しみを見つけられているようだ。
そんなミューズと久々の再会になるなのは、何も外交にいっていたからだけではない。
ミューズもまたレナンの後に、妊娠し、そして出産場所をセラフィムに決めたからだ。
「我が儘を言って申し訳ございません。ですが母の近くで出産をしたくて」
心配ではあったが、ミューズが決めた事ならばと反対はされなかった。
何よりセラフィムは薬学の国。
最高の薬師がおり、優秀な医師も多く、産後の対応も慣れている。
そういう意味での安心感はあった。
「うふふ、どんな可愛い子かしら」
実はレナンはまだミューズの子には会っていない。
薄紫色の髪をした女の子だとは聞いたが、それ以上の情報はまだだ。
早く会えることを楽しみにしている。
色々な事を考えているとノックの音が聞こえてきた。
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