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王家

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アレックスは驚いた。

パーティの後、緊急の家族会議だといわれ、エレオノーラに呼び出されたのだ。

婚約者を決めたという話だ、エレオノーラが婚約者にと望んだのは、有名な公爵令息。

あの男性にはなるまいと思っていた者をピンポイントで選ぶとは、ある意味凄い。

「エレオノーラ、それは本気なのか?」
恐る恐る国王は再確認する。

本人の意志が大事だとは思うが、心配だ。

「はい、彼でなければなりません」
否定などさせないとばかりに強く言い切られる。

「姉上が決めた方ならばいいのではないでしょうか?」
妹のティアシーアは否定もせず、応援する。

「そうですね、エレオノーラ姉様が言うのだから、きっと良い人ですわ」
末の妹のリオーネも同意する。

長姉の言うことに全幅の信頼を寄せている妹達は、何ら心配していない。

「もう少し、意見はないの?」
王妃のアデレードが怪訝そうにティアシーアとリオーネに声をかけた。

「レナード様と言えば、スフォリア公爵家の方。そこと縁続きになるのは、王家としても損ではないかと。それに公爵のリュシフェル様は魔力が高く、一目置かれている存在です。その血筋を取り入れられれば、今後王家でも強い魔力持ちの者があらわれるかもしれません」
ティアシーアは聞かれるまま意見を述べる。

「エレオノーラ姉様が本当に無能な方を夫にと言うとは思えません。直に話し、噂とは違ったから、心惹かれたのだと思いますよ。それにエレオノーラ姉様が心から好きになった方でなければ跡継ぎは出来ないでしょう、レナード様が良いというのならば、私達は応援するのみです」
リオーネも強く訴えた。

やはり反対意見はないようだ。

「そうか……俺とてエレオノーラの幸せを願っている。幸せになれるというのなら、反対はしない」
国王も同意した。

確かめてもない噂を信じるよりも、エレオノーラの意見を尊重した方がいいと判断したのだ。

次期女王となるのだから、成功だろうが失敗だろうが、自分の決定に責任を持つだろう。

「えぇ、大丈夫ですわ。ありがとうございます。もしも駄目とあらばお父様の判断でわたくしごとレナードを切り捨ててもらって構いません。次の女王はリオーネに継がせればいいでしょう」
次女のティアシーアは政治に向いていないと幼き頃より、騎士として研鑽を積んでいる。

なのでエレオノーラの代わりはリオーネという話になっているのだ。

「私はエレオノーラ姉様を支えられれば良いのですけどね。私が女王になる未来が来ないことを祈るばかりですわ」
ころころと可愛らしい声でリオーネは笑う。

「私はどちらにしても騎士として女王の手となり足となり支えるのみです。より一層の精進に励みます」
ティアシーアは恭しく頭を下げる。

「ティアシーアやリオーネもそういう、婚約者の話はないのかな?」
気になってアレックスは聞いてみる。

「わ、私は剣に命を捧げてますので」
顔を赤くし、目が泳いでいる。

きっと好きな人がいるのだろう。

「ティアシーア、どのような方なのかしら?」
エレオノーラの言葉にますます慌てふためいている。

「ですから、剣の道を極めるため。そのような相手はおりませんので……」

「ティアシーア姉様、それでは誰かに取られてしまうわ」
リオーネの言葉に、途端に泣きそうな表情になる。

「それは嫌。でも、彼きっと私みたいな大女好きじゃないもの」
標準的な身長のエレオノーラより、ティアシーアの背は高く、また体も鍛えているのでそこらの男より体格もいい。

「ですから、どちらの方なの? これを機に言ってしまえばお父様も応援してくれますわ」
ちらりとリオーネはアレックスを見る。

「うむ」
ここまで聞いて手助けしないとは言えない。

何よりティアシーアが泣くほど好きな相手だ、むろん応援してあげたい。

王妃ははらはらと聞いている。

「どこの誰なの?ティアシーアは美人よ。わたくしの自慢の娘なのよ。大女だなんていう男は止めなさい」
心配でついアデレードはそう言ってしまう。

「違うのです、母上。彼はそんなこと言ったりしません。ただ、世間から見た私はそう呼ばれているようで」

「その者たちを教えなさい。消してきます」
エレオノーラは無表情でそう言い放つ。

「それは父である俺の役目だ。俺の教えてくれティアシーア。大丈夫、ばれないようにするから」
こめかみを引くつかせながらアレックスも言った。

「今はティアシーア姉様の恋バナの話ですから、お二人とも落ち着いてください。ちなみに私にもそのくそ野郎の名を、後でいいですから教えてくださいね」
リオーネも参戦する。

いつの間にかレナードの話から、ティアシーアの想い人に話が移っていた。








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