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目が覚めると見慣れた天井が見えた。
いつの間に部屋に戻ってきたんだろうか…意識がはっきりしてくると左手に温もりを感じ目線を向ければ、ロイお兄様が手を握りしめたままベッドに持たれかかるように寝ていた。
そういえば意識が途切れる瞬間に見たのはロイお兄様だっけ…。思わず手に力を込めてしまい、ロイお兄様が「んん…」と身動ぎし、アメシスト切れ長な瞳がゆっくり開く。
「ミュラ、気分はどう?サーラに何か飲み物を持ってきてもらうから少し待ってて。」
優しい手つきで頭を撫でられ、ロイお兄様はサイドテーブルのベルをチリンと鳴らした。
このベル、一見普通の呼び鈴のように見えるんだけど実は魔道具なんだよね。頭の中で念じながら、ベルを鳴らすと相手に内容が伝わるの。しかも誰に伝えるか指定できちゃう優れもの。
何それ、すごくない?
いつもサーラが側に居てくれるから、私はまだ使った事はないんだけどね。
「ミュラ…。ごめんな。」
ロイお兄様の真剣な眼差しに目をそらせなくなる。‘’ごめん‘’というのはどういう意味なの?カイ兄様が話していた事と関係があるんだろうか…。これから私はどうなるんだろう。良くない考えが次々浮かぶ。このまま部屋から出られなくなるのかな…それだけならまだいい。だけどもし家を出て行く事になったら…それは辛いな。
101回目の転生をしてもうすぐ1年。私は今の恵まれた人生に少しずつ慣れてしまっていた。もうあの苦しくて辛い日々には戻れない。
光を知ってしまえば、暗闇に戻るのはとても怖いのだ。
「俺がミュラを守るから…だからもう悲しい顔をしないで。なぁ、泣くなよ。お前には笑ってて欲しいんだ。」
そう言われて、初めて泣いてる事に気付く。
‘’守る‘’って生まれた時にも言ってくれたね。
「こんな事言ってもミュラには解らないかもしれないけど、これからミュラの周りはどんどん変化していくと思う。戸惑う事も多いかもしれない。だけど、これだけは忘れないで。俺も家族もミュラを一番大切に想っているから。」
チュッと目尻にキスをされ、びっくりして「ひゃぁっ」と声が漏れると、ロイお兄様は優しく微笑んだ。
ドキドキしている所にサーラが果実水を持って来てくれて、私はロイお兄様と二人きりではなくなった事に少しほっとした。
いつの間に部屋に戻ってきたんだろうか…意識がはっきりしてくると左手に温もりを感じ目線を向ければ、ロイお兄様が手を握りしめたままベッドに持たれかかるように寝ていた。
そういえば意識が途切れる瞬間に見たのはロイお兄様だっけ…。思わず手に力を込めてしまい、ロイお兄様が「んん…」と身動ぎし、アメシスト切れ長な瞳がゆっくり開く。
「ミュラ、気分はどう?サーラに何か飲み物を持ってきてもらうから少し待ってて。」
優しい手つきで頭を撫でられ、ロイお兄様はサイドテーブルのベルをチリンと鳴らした。
このベル、一見普通の呼び鈴のように見えるんだけど実は魔道具なんだよね。頭の中で念じながら、ベルを鳴らすと相手に内容が伝わるの。しかも誰に伝えるか指定できちゃう優れもの。
何それ、すごくない?
いつもサーラが側に居てくれるから、私はまだ使った事はないんだけどね。
「ミュラ…。ごめんな。」
ロイお兄様の真剣な眼差しに目をそらせなくなる。‘’ごめん‘’というのはどういう意味なの?カイ兄様が話していた事と関係があるんだろうか…。これから私はどうなるんだろう。良くない考えが次々浮かぶ。このまま部屋から出られなくなるのかな…それだけならまだいい。だけどもし家を出て行く事になったら…それは辛いな。
101回目の転生をしてもうすぐ1年。私は今の恵まれた人生に少しずつ慣れてしまっていた。もうあの苦しくて辛い日々には戻れない。
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そう言われて、初めて泣いてる事に気付く。
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「こんな事言ってもミュラには解らないかもしれないけど、これからミュラの周りはどんどん変化していくと思う。戸惑う事も多いかもしれない。だけど、これだけは忘れないで。俺も家族もミュラを一番大切に想っているから。」
チュッと目尻にキスをされ、びっくりして「ひゃぁっ」と声が漏れると、ロイお兄様は優しく微笑んだ。
ドキドキしている所にサーラが果実水を持って来てくれて、私はロイお兄様と二人きりではなくなった事に少しほっとした。
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