【R18】101回目の転生~天然無自覚少女は溺愛に気付かない~

しろ

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アレス王子様とキュアネ王女様が嵐の様に去り、パーティー会場は和やかな雰囲気へと戻る。

長時間立ち続ける事が困難な私は、生花で彩られた可愛らしい椅子に座り、ご挨拶に来てくださった方に笑顔でフリフリと手を振る。(ママに教わってからサーラと毎日練習してたんだよね)

ニコニコ、ニコニコ…フリフリ、フリフリ…

…み…見てる。
さっきからずっと見てる。
近づくでも、話しかけるでもなく、じっと見つめられてる。だけど目を合わせると反らされる。私が目を反らすとまたじっと見つめてくる。むむむ、こうなってくると私も意地になってくる。

見つめてくる鮮やかな瞳の持ち主達に、順番に手を振り続ける。その数10人。
私と彼らの静かなるゲーム。なんて…どうやったら勝ちか解らないのだけれど。
とりあえず私はひたすら笑顔で手を振り続けた。

ニコニコ、ニコニコ、フリフリ、フリフリ


「ミュー、アレは気にしなくていい。」
「そうだよミュリィ、虫に手を振る必要はないよ。」
「カイン兄様もラナンも言い過ぎだぞ…。」

カイ兄様に頭を撫でられ、ラナンお兄様には「疲れたでしょう」と手をなでなでされる。
ロイお兄様は「喧嘩は止めてくれよな…」と呆れ顔だ。

お兄様達によって私のニコフリ攻撃が中断されると、バタバタと足音が近づき…さっきまでゲーム?の相手だった子供達がやって来る。あ、10人全員来た。って事は私の勝ちなのかな?等と呑気に考える。


「おいっ!邪魔すんなっ!」
「そうよ!せっかくミュラちゃんが手を振ってくれてたのにぃ!」
緑色の髪の男の子と女の子がビシィッとラナンお兄様に指を向ける。

「はぁ…うるさい虫だな。ミュリィ、目が汚れるから見ちゃダメだよ。」
私はラナンお兄様に手でそっと目隠しされる。うぅ…見えない。

「はぁ?!相変わらず嫌味な奴だな!」
「ホント!ラナンが女の子から人気だなんて信じらんないっ!天使みたいな顔して中身は真っ黒なんだもの!」

「馬鹿双子にどう思われても気にしないし。僕にはミュリィが居ればそれでいいんだ。」

「「ムカつくぅ!!」」

ラナンお兄様の手をグイグイし、指の隙間から覗き見る。なるほど、双子の兄妹だったのかぁ。確かに良く似てるし、息もぴったり!
ちゃんと顔を見たくてラナンお兄様の手をどける。

「ミュラ、俺はディオス・ド・ナヴァル。ナヴァル公爵家の長男だ。よろしくな。」
「私はメリー!ディオスとは双子なのよ。ミュラちゃん、仲良くしましょうね。」

ディオス様とメリー様は私に優しく笑いかけてくれる。私はまだ挨拶ができないので、お約束のニコフリだ。

「仲良くしないよ。はぁ、もう帰ったら?」
ラナンお兄様はディオス様とメリー様へ冷めた視線を向ける。こんな風に砕けて話すラナンお兄様は初めて見たかも。仲良しなのかな。

そんな風に思っていると、フワッと柔らかな風に包まれて身体が宙に浮き上がった。

えっ!!わ、わ、わっ!!

びっくりして何かに掴まろうと慌てて手を伸ばせば、藤色の髪の男の子にお姫様抱っこされる。

「捕まえた。」
ニヤリと笑う目元は鋭く、目が反らせない。

「うふふ。綺麗な魔力ね。素晴らしいわ。」
同じく藤色の髪の女の子がぐいっと顔を寄せる。

「クロノス!ミュラを離せ!エレクトラも顔が近いっ!」
ロイお兄様がクロノスと呼んだ男の子から私を奪い返すように抱き締める。

「邪魔が多くて近くで見られなかったんだから仕方ないだろ?それに何度も会いたいと頼んでいたのに、ミュラに会わせなかったロイが悪い。」
「そうよ!ずっと頼んでいたのにケチなんだから!」

「うるさい!魔法オタクのお前らには会わせたくなかったんだ。とにかく!魔法で浮かせるなんて危険な事は二度とするなよ!ミュラに怪我させたら許さないからな!」
ロイお兄様がギロリとクロノス様を睨み付ける。

「お~恐っ、俺が魔法を失敗する訳ないだろう。ミュラ、俺はクロノス・フォン・シラー。シラー侯爵家の長男だ。俺の父は魔術団の団長をしている。俺もいずれ偉大な魔術師になるからな。そしたらミュラを守ってやる。」

「ミュラは俺が守るからクロノスは必要ない!」

クロノス様とロイお兄様が言い合いをしているのをポカンと見つめていると、エレクトラ様がスッと近付いてきた。ち…近い。

「私はエレクトラ・フォン・シラーよ。クロノスの妹なの。ねぇ、ミュラの魔力ってなんだかか甘い香りがするのね。美味しそう。」チュッ

「にゃっ!?」
突然エレクトラ様がおでこにキスしてきたのに驚いて、変な声が出てしまった。

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