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56.~ハリーside~
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コンコン。
「失礼致します。ハリーです。」
「入れ。」
部屋に入れば、仕事を放ったらかして二階の執務室の窓に張り付き庭を見下ろす我が主の姿。
「ミュラお嬢様でございますか?」
「ああ、薔薇と天使だな。」
こちらを見向きもせず、愛娘観察をするルイズ様はいつもの事なので気にしない。
執務室の机の上には手紙の束を置き、脇には箱を積み上げる。
「ん?あれは誰だ?」
ルイズ様の声色に怒りが混じった為、隣へと移動し窓から庭園を見下ろせば、薔薇の花を見ているミュラお嬢様に話しかける男の姿が見えた。
「あぁ、あれは新しく雇った庭師見習いですね。ミュラお嬢様がお会いするのは初めてではないでしょうか。」
ふむ、とルイズ様は二人の姿から目を離さない。ミュラお嬢様と庭師見習いの男は何やら言葉を交わし笑い合っている。
「殺すか…。」
ボソッと呟くルイズ様の目は冷たく、冗談には聞こえないのが厄介だ。ミュラお嬢様と奥様のレイラ様には甘く優しい姿しか見せないが、ルイズ様の本来の姿はコチラで、冷徹で厳しく、一切の妥協を許さない。
「ご心配なさらずとも、いつも通り道を外れる者は排除いたしますよ。サーラに言付けておりますので……と、丁度参りましたね。」
駆け付けたサーラはさりげなくミュラお嬢様と庭師見習いの男の間に立ち、ミュラお嬢様をガゼボへと誘導して行く。
サーラがチラリとこちらに目を向け『対処完了』と目線で伝えれば、ルイズ様は無言で頷く。
残された庭師見習いの男はミュラお嬢様の背中をぽーっと見つめ立ちつくしていた。
アレは駄目かもしれないな。暫く注意深く見る必要がありそうだ、と俺は頭に入れておく。
ミュラお嬢様の姿が見えなくなった所で、漸くルイズ様の視線が机の上の手紙と積み上げられた箱に向けられる。
「懲りもせず熱心な事だ。どうせ捨てられると解っているのに。」
この手紙とプレゼントの箱は、ミュラお嬢様の1歳の誕生パーティーに出席されていた王家と公爵家、魔術団、騎士団のそれぞれ子息子女からミュラお嬢様への贈り物で、あの日から5年間毎日のように届けられている。
「それほどミュラお嬢様が魅力的なのでございますよ。」
ギロリとルイズ様に睨まれ、俺は両手を上げて降参のポーズを取る。
「捨てておけ。ミュラには気付かれるなよ。」
「お手紙は確認されなくて宜しいのですか?」
「結構だ。読むと気分が悪くなる。それに、どうせお前がチェックしてるんだろ。」
「承知いたしました。処分致します。」
ミュラお嬢様自身は気付いていらっしゃらないが、意図的に外部との接触を絶たれている。
1歳の誕生パーティーでお披露目された後、出席者は勿論、噂を聞き付けた者からもお茶会やパーティーへの誘いが絶えないが、全てお断りしている。
ミュラお嬢様にはその存在すら隠している為『公爵令嬢はこれが当たり前』と、屋敷に閉じ込められている事を不審に思ってさえいない。
ニコニコと過ごしているミュラお嬢様を見ていると、後ろめたさと罪悪感で最初は思う所があったが、送られてくる手紙の内容を確認している内に『このまま屋敷に閉じ込められている方が安全かもしれない』と思い改めた。
「失礼致します。ハリーです。」
「入れ。」
部屋に入れば、仕事を放ったらかして二階の執務室の窓に張り付き庭を見下ろす我が主の姿。
「ミュラお嬢様でございますか?」
「ああ、薔薇と天使だな。」
こちらを見向きもせず、愛娘観察をするルイズ様はいつもの事なので気にしない。
執務室の机の上には手紙の束を置き、脇には箱を積み上げる。
「ん?あれは誰だ?」
ルイズ様の声色に怒りが混じった為、隣へと移動し窓から庭園を見下ろせば、薔薇の花を見ているミュラお嬢様に話しかける男の姿が見えた。
「あぁ、あれは新しく雇った庭師見習いですね。ミュラお嬢様がお会いするのは初めてではないでしょうか。」
ふむ、とルイズ様は二人の姿から目を離さない。ミュラお嬢様と庭師見習いの男は何やら言葉を交わし笑い合っている。
「殺すか…。」
ボソッと呟くルイズ様の目は冷たく、冗談には聞こえないのが厄介だ。ミュラお嬢様と奥様のレイラ様には甘く優しい姿しか見せないが、ルイズ様の本来の姿はコチラで、冷徹で厳しく、一切の妥協を許さない。
「ご心配なさらずとも、いつも通り道を外れる者は排除いたしますよ。サーラに言付けておりますので……と、丁度参りましたね。」
駆け付けたサーラはさりげなくミュラお嬢様と庭師見習いの男の間に立ち、ミュラお嬢様をガゼボへと誘導して行く。
サーラがチラリとこちらに目を向け『対処完了』と目線で伝えれば、ルイズ様は無言で頷く。
残された庭師見習いの男はミュラお嬢様の背中をぽーっと見つめ立ちつくしていた。
アレは駄目かもしれないな。暫く注意深く見る必要がありそうだ、と俺は頭に入れておく。
ミュラお嬢様の姿が見えなくなった所で、漸くルイズ様の視線が机の上の手紙と積み上げられた箱に向けられる。
「懲りもせず熱心な事だ。どうせ捨てられると解っているのに。」
この手紙とプレゼントの箱は、ミュラお嬢様の1歳の誕生パーティーに出席されていた王家と公爵家、魔術団、騎士団のそれぞれ子息子女からミュラお嬢様への贈り物で、あの日から5年間毎日のように届けられている。
「それほどミュラお嬢様が魅力的なのでございますよ。」
ギロリとルイズ様に睨まれ、俺は両手を上げて降参のポーズを取る。
「捨てておけ。ミュラには気付かれるなよ。」
「お手紙は確認されなくて宜しいのですか?」
「結構だ。読むと気分が悪くなる。それに、どうせお前がチェックしてるんだろ。」
「承知いたしました。処分致します。」
ミュラお嬢様自身は気付いていらっしゃらないが、意図的に外部との接触を絶たれている。
1歳の誕生パーティーでお披露目された後、出席者は勿論、噂を聞き付けた者からもお茶会やパーティーへの誘いが絶えないが、全てお断りしている。
ミュラお嬢様にはその存在すら隠している為『公爵令嬢はこれが当たり前』と、屋敷に閉じ込められている事を不審に思ってさえいない。
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