【R18】101回目の転生~天然無自覚少女は溺愛に気付かない~

しろ

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57.~ハリーside~

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「ルイズ、ちょっといいかしら?」
張りつめた空気の中、執務室のドアを開け入って来られたのはレイラ様だった。

「レイラ。勿論さ。君の為ならいつでも時間を作るよ。」

レイラ様の手を取りソファーへとリードするルイズ様の顔には、先程までの冷たさは微塵も感じられない。
お二人の邪魔にならないようにティーセットをテーブルに用意し、静かに脇に控えると、レイラ様が「ハリーありがとう」と声をかけてくださった。


「で?どうかしたのかい?」
レイラ様の隣へ腰掛け、体を密着させながら話しかけるルイズ様の声はとても甘い。もう完全に俺は空気だ。

「そろそろミュラちゃんに家庭教師をつけようと思うの。」

「必要ないよ。勉強はカインやハリーが教えられるし、マナーはレイラをお手本にすればいい。」
レイラは美しい所作だからね、とルイズ様はレイラ様の髪にキスを落とす。

「だめよ、私は隣国の出身だからこの国のマナーは完璧ではないの。ミュラちゃんにはしっかりとした講師が必要だわ。それに、そろそろ社交も学ばせるべきよ。」

「隣国の王女の君が完璧でないなんて言ったら、この国にマナーを教えられる人は存在しないよ。レイラは僕の一番さ。」

「もぅ!そんな事言ってるんじゃないの!このままじゃミュラちゃんはずっと籠の鳥じゃない!」

この話は初めてではない。
レイラ様はロレイル公爵家で唯一の常識人だ。ミュラお嬢様に普通の令嬢としての生活をさせてあげたいと思っておられる。
いつもはのらりくらりとルイズ様にかわされてこの話は流れてしまうのだが、今日のレイラ様は決意が違った。

「ミュラちゃんに講師をつけて!他家との交流もちゃんとさせるわ!…それが出来ないなら…ミュラちゃんを連れて実家に帰るわ。」

「レ…レイラ…。実家って隣国へかい?それは絶対駄目だ!!」

「じゃあ、私の言う通りにして!」

キッと上目遣いで睨みながら言い放つレイラ様は本気のようだ。
ルイズ様はオロオロと慌て、俺に助けを求めるように視線を送ってきた。いやいやいや、空気のままで居させて欲しかった…。俺にどうしろと…。
『最善の方法で何とかしろっ!』と睨みをきかせてくるルイズ様…。


「こほん。レイラ様、横から口を挟むご無礼をお許しください。急に外部との交流を始めたらミュラお嬢様には刺激が強すぎるのではないでしょうか。まずは講師をお招きし、慣れてきてから他家への交流を…と。ゆっくりと段階を踏む必要があるのではないでしょうか。」


「…そうね、ではマナーとお勉強、計2名の講師をお呼びしましょう。いいわね、ルイズ。」

「はぁ…解ったよ。講師の選定には私も協力しよう。」


こうしてミュラお嬢様の5年にも渡る監禁生活は終わりを迎える事になったのだった。
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