【R18】101回目の転生~天然無自覚少女は溺愛に気付かない~

しろ

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「誰だ?」
咄嗟にロイお兄様が私を背に隠してくれる。

サーラが「確認して参ります」とガゼボの周辺を見回りし、数分後…
「誰も居ませんでした。猫でしょうか?」

「え?!猫!見てみたいわっ!」
この世界に転生してからまだ鳥しか見た事がない。この世界の鳥は色鮮やかでとっても美しい。もしかしたら猫も少し違うのかもしれない。

「ロイお兄様は猫を見た事がある?」
興奮してロイお兄様を見れば、お兄様は音がした茂みの方をじっと見つめ、何やら考え事をしているようで…
「ロイお兄様??」

「あ、あぁ、ごめんな。猫は見た事があるよ。屋敷の庭でも以前見かけた事があるから、ミュラもその内見られるかもね。」

「本当?!」

「うん。でも一人では危ないから庭に出る時は必ずサーラを連れて行くんだよ。わかったね?」

「わかったわ。うふふ、猫ちゃん楽しみだなぁ。」
前回の人生で初めて猫ちゃんを触る事ができたけれど少し撫でる程度だった。今回はモフモフしたり、抱っこしたりできるかしら?

「サーラ、俺は少し用事が出来た。ミュラを部屋に送ってくれる?」

「かしこまりました。」

「ミュラ、また今度お茶しようね。用事が終わって時間が取れたら夕方部屋に顔を出すよ。」

「はい、ロイお兄様。お忙しい中いつもありがとうございます。」
にっこり笑いかければ、ロイお兄様も笑顔で頭を撫でてくれる。

「じゃあね」と言っておでこにキスされ、ロイお兄様はガゼボを出て行った。

毎日屋敷の中でのんびり過ごしている私と違って、お兄様方はお勉強や剣術の訓練、社交等忙しそうにしている。
公爵家の令嬢として、こんなに毎日ぼーっとしていていいのかな?と不安になる事もしょっちゅうだけど、「あれやりたい、これやりたい」と我が儘を言ってパパとママを困らせたくないから、私からは何も言わないようにしている。こういう所は過去の転生で身に付いてしまった消極的思考かもしれない。でも「嫌われたくない」その思いが根底にあり、どうしても自分で主張することができない。ただひたすらに流れに身を任せてしまうのだ。その方が楽で…結局今の状況に甘えているだけなんだけど。

「ミュラお嬢様、お部屋に戻りましょう。」
サーラに声をかけられて、ハッと意識が戻される。

「どうかなさいましたか?」
サーラが心配そうな顔をして覗き込み「もしかしてお熱が?」と額に手を当てられる。

「うんん、大丈夫。何でもないわ、行きましょう。」


ガゼボでの様子を誰かに見られているなんて、この時は思いもしなかった。
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