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69.~ロイside~
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「ミュラ、入るよ?」
薄暗い部屋に入れば、天蓋付きの大きなベッドに眠る小さな身体が見えた。
窓から差し込む月の光に照らされたミュラの肌は更に白く輝いて見え、このまま消えてしまいそうだと不意に不安がよぎる。
ベッドに腰掛けミュラの左手をそっと取る。
湿布をめくれば、痛々しい痣がまだ残っていた。治癒魔法を使えば簡単に治す事ができるが、魔力を持つものは自らの治癒力を高める訓練の為にも、多少の怪我では魔法を使わない。
ミュラの為にも今は治療魔法に頼らない方が良いのだ。そう頭では解っているのだが…今すぐにでも治してあげたい。
「ミュラ…ごめんな。」
左手首にそっとキスをすれば、ピクリと身動ぎして、ミュラの美しいブルートパーズの瞳が開かれる。
「ん…。ロイお兄様…?」
「ミュラ、起こしてごめんね。腕…痛くない?本当にごめん。」
「うんん、大丈夫。ロイお兄様のせいじゃないわ。ねぇ、泣かないで…ロイお兄様。」
「えっ……。」
自分の頬をつたう涙に気付かなかった。いつから涙が…?
呆然とする俺に向かってミュラは両手を伸ばし首に手を巻き付けた為、ばふっという音とともにミュラに覆い被さる様な形でベッドに倒れこんだ。
「ミュ…ミュラ?」
ミュラはそのままぎゅうぎゅう俺を抱き締める。
「ロイお兄様、泣かないで。悪いのは約束を守れなかった私よ。腕は全然痛くない。大丈夫だから…。ロイお兄様…、私のこと…嫌いにならないで…。お願い、お兄様…。」
俺の首元にミュラの涙が落ちたのが解った。フルフル震えながらも、俺を離すまいとぎゅっとしがみつくミュラの姿に胸が苦しくなる。
「馬鹿だな…。俺がミュラを嫌いになる訳ないだろ。泣くな、ミュラ。俺はお前が笑ってくれるなら何だってする。」
「じゃあ、ロイお兄様も笑って?ロイお兄様が笑ってくれなきゃ…私も笑えないわ。ね?」
あぁ、こんなに可愛い事を言われたら…。
「ミュラ、愛してる。」
「ふふ、私もよ。ロイお兄様。」
ミュラの言う愛情と、俺の愛情では比べ物にならない程大きさが違うってこと、お前はまだ知らないんだろうな。
しがみついていたミュラの腕がそっと解かれ、間近で顔を合わせる。鼻と鼻がくっつく距離に、思わずゴクリと喉が鳴った。
「ミュラ…。」
このまま唇を奪ってしまいたい。
角度を変え、その距離をつめようとした所…
バン!!という音とともに後頭部に激痛が走る。
「ったぁ…」
「サ、サーラ?!何故ロイお兄様を殴ったの?お兄様大丈夫??」
「ロイ様、申し訳ございません。これもミュラお嬢様をお守りする為ですので。」
ペコリと頭を下げるサーラの手には変形したシルバーのトレイが握られていた。
「大丈夫だ…。俺が悪かった…。ありがとう、サーラ。」
「とんでもございません。正気を取り戻された様で安心いたしました。」
「え?え?」
オロオロするミュラをよそに、俺はサーラに礼を言う。
やばい…、危なかった。
鍛練が足りないな。うん。
はぁ…。
薄暗い部屋に入れば、天蓋付きの大きなベッドに眠る小さな身体が見えた。
窓から差し込む月の光に照らされたミュラの肌は更に白く輝いて見え、このまま消えてしまいそうだと不意に不安がよぎる。
ベッドに腰掛けミュラの左手をそっと取る。
湿布をめくれば、痛々しい痣がまだ残っていた。治癒魔法を使えば簡単に治す事ができるが、魔力を持つものは自らの治癒力を高める訓練の為にも、多少の怪我では魔法を使わない。
ミュラの為にも今は治療魔法に頼らない方が良いのだ。そう頭では解っているのだが…今すぐにでも治してあげたい。
「ミュラ…ごめんな。」
左手首にそっとキスをすれば、ピクリと身動ぎして、ミュラの美しいブルートパーズの瞳が開かれる。
「ん…。ロイお兄様…?」
「ミュラ、起こしてごめんね。腕…痛くない?本当にごめん。」
「うんん、大丈夫。ロイお兄様のせいじゃないわ。ねぇ、泣かないで…ロイお兄様。」
「えっ……。」
自分の頬をつたう涙に気付かなかった。いつから涙が…?
呆然とする俺に向かってミュラは両手を伸ばし首に手を巻き付けた為、ばふっという音とともにミュラに覆い被さる様な形でベッドに倒れこんだ。
「ミュ…ミュラ?」
ミュラはそのままぎゅうぎゅう俺を抱き締める。
「ロイお兄様、泣かないで。悪いのは約束を守れなかった私よ。腕は全然痛くない。大丈夫だから…。ロイお兄様…、私のこと…嫌いにならないで…。お願い、お兄様…。」
俺の首元にミュラの涙が落ちたのが解った。フルフル震えながらも、俺を離すまいとぎゅっとしがみつくミュラの姿に胸が苦しくなる。
「馬鹿だな…。俺がミュラを嫌いになる訳ないだろ。泣くな、ミュラ。俺はお前が笑ってくれるなら何だってする。」
「じゃあ、ロイお兄様も笑って?ロイお兄様が笑ってくれなきゃ…私も笑えないわ。ね?」
あぁ、こんなに可愛い事を言われたら…。
「ミュラ、愛してる。」
「ふふ、私もよ。ロイお兄様。」
ミュラの言う愛情と、俺の愛情では比べ物にならない程大きさが違うってこと、お前はまだ知らないんだろうな。
しがみついていたミュラの腕がそっと解かれ、間近で顔を合わせる。鼻と鼻がくっつく距離に、思わずゴクリと喉が鳴った。
「ミュラ…。」
このまま唇を奪ってしまいたい。
角度を変え、その距離をつめようとした所…
バン!!という音とともに後頭部に激痛が走る。
「ったぁ…」
「サ、サーラ?!何故ロイお兄様を殴ったの?お兄様大丈夫??」
「ロイ様、申し訳ございません。これもミュラお嬢様をお守りする為ですので。」
ペコリと頭を下げるサーラの手には変形したシルバーのトレイが握られていた。
「大丈夫だ…。俺が悪かった…。ありがとう、サーラ。」
「とんでもございません。正気を取り戻された様で安心いたしました。」
「え?え?」
オロオロするミュラをよそに、俺はサーラに礼を言う。
やばい…、危なかった。
鍛練が足りないな。うん。
はぁ…。
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