「お前など必要ない」と追放された鍛冶師は伝説の武器を作り、ざまぁする

6

アーガスにて荒れ果てた大地を緑豊かな大地へと変え、住民たちの生活も改善しつつある。だが、まだまだやるべきことはたくさんあるのだ。俺は領地をさらに発展させるためのプランを練ることに決めたのだった……。


「アーク様、この書類に目を通されましたか？」


執務室で仕事をしているとノエルが入ってきて一枚の紙を差し出した。そこには各領地から寄せられた要望や陳情などが事細かに書かれていた。どうやら彼女はそれらをチェックして俺の元に持ってきたらしい。


「ふむ……農地拡大の要望が多いな」


俺が言うと、ノエルは真剣な表情で頷いた。


「ええ、アーガスの農業はお世辞にも上手くいっているとは言えませんからね。早急に対処しなければなりません」


確かにその通りだと思ったので、俺は早速指示を出すことにした。農地拡大のために新たな農法を試すことにする。そこで選んだのが【土壌改良】の魔法だ。これは植物の成長速度を早める魔法である。この魔法を使って畑を耕し、新たな種を植えて成長させるのだ。さらに肥料として様々な物質も混ぜ込んだ。そうすることで土壌を改良すると共に、栄養満点の野菜を育てることができるというわけだ。


「この方法を他の領地でも試してもらおう」


俺は各領地に対して同じ方法で農法を試すように伝えることにした。


「あと、食糧事情の改善も急務ですね」


ノエルが思い出したように言う。確かにその通りだと思ったので、俺は新たに畑を増やすことにした。そのためには森を切り開かなければならないだろう。流石に森を全て切り開くというわけにはいかないので、なるべく資源を使わないように気を付けながら農地の拡大を進めていくことにしよう。


「ひとまずはこんなところかな？」


一通りのプランをまとめると、俺は大きく伸びをした。その時、窓から外を見ると美しい夕日が目に入った。


「もうこんな時間か」


俺は席を立つとノエルに声をかけた。


「今日はもう終わりにするか……付き合ってくれるか？」


俺が言うと、彼女は嬉しそうに頷いた。そして2人で執務室を後にすると、城の庭園に向かったのだった……。


「綺麗ですね……」


2人で庭園のベンチに座って夕日を眺めていると、ノエルが感慨深げに呟いた。彼女は何かを思い出したかのように俺に話しかけてくる。


「アーク様、一つお願いを聞いていただけませんか？」


俺は頷くと続きを促す。するとノエルは少し頬を赤らめながら言葉を続けた。


「あの……その……膝枕をしてもいいですか……？」


突然の申し出に驚きつつも、俺は快く了承した。ノエルは俺の膝の上に頭を乗せると静かに目を閉じた。サラサラとした銀色の髪を優しく撫でてやると、ノエルは気持ち良さそうに体をよじらせる。


「ん……」


（なんだこの可愛い生き物）


ノエルの無防備な姿を見ていると何だかいけないことをしている気分になってきたので慌てて視線を逸らす俺だった。それからしばらく時間が経って夕焼けが沈みかける頃になると、ノエルはゆっくりと体を起こした。


「ありがとうございました」


そう言って微笑むと、彼女は俺の頬に口づけをした。突然の出来事に俺が固まっていると、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべて立ち上がる。


「じゃあそろそろ戻りますね」


それだけ言い残して去っていく彼女の背中を見送りながら俺は呆然とするしかなかった……。その後暫くの間悶々とした気分が続き、寝付けなかったのは言うまでもないだろう……。