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翌日、俺たちはアーガス領の他の村を視察するため、馬車に乗って移動していた。
「きゃああああああああああああっ!!!」
突然、女の子の悲鳴が聞こえてきて俺は馬車から飛び出した。見ると、1人の少女がゴブリンの群れに囲まれている。
「危ないっ!!」
俺は咄嗟に飛び出すと少女を庇うように前に出た。その瞬間、ゴブリンたちが一斉に飛びかかってくる。
「【漆黒斬】!」
俺が叫ぶと同時に襲いかかってきたゴブリンたちは次々とバラバラの肉片に変わっていった。
「怪我はないかい?」
俺が尋ねると、少女は震えながらもしっかりと頷いた。どうやら無事なようだ。
「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」
少女は満面の笑みでお礼を言うと、頭を下げる。
「君はこの辺の子かい?」
「うん! この近くに私の住んでる村があるの」
「ちょうどいいや、村の人にこの辺の事情を聞きたかったからさ。村まで案内してくれないか?」
俺が頼むと、少女は笑顔で了承してくれた。
「もちろん! ついてきて!」
少女が走り出すと、俺はその後を追いかけていくのだった……。
◇
「ここが、君の住んでる村か……?」
村はひどい有様だった。どの家もボロボロだ。畑も荒れ果てていて、作物は生えていない。
「お帰り、アリス」
振り返ると、一人の人狼が立っていた。
「ま、魔物……!?」
ノエルは剣を抜くと、臨戦態勢に入った。
「お姉ちゃんやめて! お爺ちゃんをいじめないで!」
アリスちゃんがかばうように人狼の前に立ち、両手を広げる。
「ノエル、この人は悪い魔物じゃないようだぞ」
俺が声をかけると、ノエルは怪訝そうな表情で振り返った。
「どういうことですか?」
「この村が荒れ果ててることと何か関係がありそうだな」
とりあえず話を聞くため、俺たちは小屋の中へと入った。
「私はこのパルの村の村長、オーリンと申します」
アリスちゃんの父親はオーリンと名乗ると、深々と頭を下げた。
「俺は冒険者のアークだ。こっちはノエル」
俺も自己紹介をすると、オーリンさんは真剣な表情で話し始めた。
「私たちは元は人間でした。しかしある【呪い】のせいでこのような姿になってしまったのです」
「呪いだと?」
俺が聞き返すと、オーリンさんは頷いて続けた。
「そうです。神狼山脈の麓にある村人たちはみな、この【人狼の呪い】にかかっておるのです」
「原因に心当たりは?」
「はい……あの神狼山脈に住まう、【神狼様】のお怒りです」
「神狼様?」
俺が聞き返すと、オーリンさんは説明を始めた。
「大昔、神の国からやって来た神狼様が山脈に住まい、麓の村を見守っていたのですが、ある日神狼様の毛皮が高く売れることに気づいた一部の村人たちが神狼様の子供を殺してしまったのです。そして悲しみに囚われた神狼様は荒ぶる呪いの神へと変貌してしまったのです」
なるほど、そういうわけだったのか。だが、神狼が怒り狂っているせいで村がこんな状態になっているとは……。
「アーク様、どうしますか?」
「もちろん助けるさ。この村の人たちも……それに、その神狼様とやらもな」
「流石アーク様!」
俺の言葉にノエルは嬉しそうに微笑んだ。
「まずは村長さん、あんたから治すよ」
「お気持ちは嬉しいのですが、大丈夫ですか? 村の金をかき集めて、闇市で手に入れた最高級の聖水でも、呪いは解けませんでした」
「大丈夫だ。俺の【万物修復】なら治せるはずだ」
俺は自信満々に言い切ると、オーリンさんの呪いを解除した。すると彼の身体は光に包まれていく……。やがて光が収まると、そこには白髪の老人が立っていた。
「こ、これは……」
自分の両手を見つめて呆然としているオーリンさん。
「お、お爺ちゃん! 元に戻ってるよ!」
ノーアちゃんが村長に抱きついて、うれしそうに言う。
「信じられない……! 最高級の聖水でも直らなかったこの呪いを、こうも簡単に治して見せるなんて……」
オーリンさんは感激の涙を流していた。そして彼は俺の手を取ると、深々と頭を下げる。
「アーク殿、この村を救って頂きありがとうございます」
「お礼なんていいさ……それより、神狼様に会わせてくれ」
俺が言うと、オーリンさんは頷いた。俺たちは神狼が住むという神狼山脈に向かうのだった……。
「きゃああああああああああああっ!!!」
突然、女の子の悲鳴が聞こえてきて俺は馬車から飛び出した。見ると、1人の少女がゴブリンの群れに囲まれている。
「危ないっ!!」
俺は咄嗟に飛び出すと少女を庇うように前に出た。その瞬間、ゴブリンたちが一斉に飛びかかってくる。
「【漆黒斬】!」
俺が叫ぶと同時に襲いかかってきたゴブリンたちは次々とバラバラの肉片に変わっていった。
「怪我はないかい?」
俺が尋ねると、少女は震えながらもしっかりと頷いた。どうやら無事なようだ。
「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」
少女は満面の笑みでお礼を言うと、頭を下げる。
「君はこの辺の子かい?」
「うん! この近くに私の住んでる村があるの」
「ちょうどいいや、村の人にこの辺の事情を聞きたかったからさ。村まで案内してくれないか?」
俺が頼むと、少女は笑顔で了承してくれた。
「もちろん! ついてきて!」
少女が走り出すと、俺はその後を追いかけていくのだった……。
◇
「ここが、君の住んでる村か……?」
村はひどい有様だった。どの家もボロボロだ。畑も荒れ果てていて、作物は生えていない。
「お帰り、アリス」
振り返ると、一人の人狼が立っていた。
「ま、魔物……!?」
ノエルは剣を抜くと、臨戦態勢に入った。
「お姉ちゃんやめて! お爺ちゃんをいじめないで!」
アリスちゃんがかばうように人狼の前に立ち、両手を広げる。
「ノエル、この人は悪い魔物じゃないようだぞ」
俺が声をかけると、ノエルは怪訝そうな表情で振り返った。
「どういうことですか?」
「この村が荒れ果ててることと何か関係がありそうだな」
とりあえず話を聞くため、俺たちは小屋の中へと入った。
「私はこのパルの村の村長、オーリンと申します」
アリスちゃんの父親はオーリンと名乗ると、深々と頭を下げた。
「俺は冒険者のアークだ。こっちはノエル」
俺も自己紹介をすると、オーリンさんは真剣な表情で話し始めた。
「私たちは元は人間でした。しかしある【呪い】のせいでこのような姿になってしまったのです」
「呪いだと?」
俺が聞き返すと、オーリンさんは頷いて続けた。
「そうです。神狼山脈の麓にある村人たちはみな、この【人狼の呪い】にかかっておるのです」
「原因に心当たりは?」
「はい……あの神狼山脈に住まう、【神狼様】のお怒りです」
「神狼様?」
俺が聞き返すと、オーリンさんは説明を始めた。
「大昔、神の国からやって来た神狼様が山脈に住まい、麓の村を見守っていたのですが、ある日神狼様の毛皮が高く売れることに気づいた一部の村人たちが神狼様の子供を殺してしまったのです。そして悲しみに囚われた神狼様は荒ぶる呪いの神へと変貌してしまったのです」
なるほど、そういうわけだったのか。だが、神狼が怒り狂っているせいで村がこんな状態になっているとは……。
「アーク様、どうしますか?」
「もちろん助けるさ。この村の人たちも……それに、その神狼様とやらもな」
「流石アーク様!」
俺の言葉にノエルは嬉しそうに微笑んだ。
「まずは村長さん、あんたから治すよ」
「お気持ちは嬉しいのですが、大丈夫ですか? 村の金をかき集めて、闇市で手に入れた最高級の聖水でも、呪いは解けませんでした」
「大丈夫だ。俺の【万物修復】なら治せるはずだ」
俺は自信満々に言い切ると、オーリンさんの呪いを解除した。すると彼の身体は光に包まれていく……。やがて光が収まると、そこには白髪の老人が立っていた。
「こ、これは……」
自分の両手を見つめて呆然としているオーリンさん。
「お、お爺ちゃん! 元に戻ってるよ!」
ノーアちゃんが村長に抱きついて、うれしそうに言う。
「信じられない……! 最高級の聖水でも直らなかったこの呪いを、こうも簡単に治して見せるなんて……」
オーリンさんは感激の涙を流していた。そして彼は俺の手を取ると、深々と頭を下げる。
「アーク殿、この村を救って頂きありがとうございます」
「お礼なんていいさ……それより、神狼様に会わせてくれ」
俺が言うと、オーリンさんは頷いた。俺たちは神狼が住むという神狼山脈に向かうのだった……。
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