「お前のような奴を聖女と認めない」と婚約破棄されましたが、侯爵令息に拾われました。

23

学園祭から数ヶ月後、季節は冬になっていた。雪の積もる街を私とカイル殿下は歩く。（寒いなぁ……早く暖炉で温まりたいな）

そんなことを考えながら歩いていると、カイル殿下が話しかけてきた。


「フィーナちゃん、寒くないかい？」


「はい！ 大丈夫です！」


元気よく返事をすると彼は微笑んで言った。


「そうか、なら良かった」


（うぅ……心配させちゃったみたい）


そんなことを考えているうちに目的地に到着したようだ。そこは一軒の喫茶店だった。中に入ると暖かい空気が私を包み込んでくれる。ホッとしているとメイドさんが近づいてきた。


「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」


彼女に案内された席に座るとカイル殿下が口を開いた。


「フィーナちゃん、何が飲みたい？」


（うーん……）


悩んだ結果、温かい飲み物を頼むことにした。すると彼は手を挙げてメイドさんを呼んだ。そして注文をしてくれた。しばらくして飲み物が運ばれてくると私はゆっくりと飲み始めた。


（ふぅ……美味しい）


ホッとしているとカイル殿下は突然私に話しかけてきた。


「ねえ、フィーナちゃん」


「はい？」


首を傾げると彼は真剣な眼差しで見つめてきた。そして言った。


「フィーナちゃん、そろそろ答えを聞かせてくれないかな？」


（えっ？）


一瞬、何を言われているのか分からなかったがすぐに理解する。学園祭の時にカイル殿下から告白されたことを思い出す。あの時は即答できず保留にしてしまったのだが……


（うぅ……どうしよう）


悩んでいるとカイル殿下はさらに言葉を続ける。


「俺は君のことが好きだ」


ストレートな言葉に心臓が跳ね上がるような感覚に陥る。顔が熱くなるのを感じながらも私は口を開く。


「あの……その……」


言葉が上手く出てこない。するとカイル殿下がさらに話しかけてくる。


「フィーナちゃんは俺のこと嫌いかい？」


（うぅ……ずるい）


そんな聞き方をされたら断れるはずがないじゃない！ 私は覚悟を決めて言った。


「私もカイル殿下のことが好きです」


するとカイル殿下は嬉しそうに微笑むと言った。


「ありがとう、フィーナちゃん」


（うぅ……恥ずかしいけど嬉しいな）


恥ずかしくてたまらないけど、それ以上に幸せな気持ちになった。それから私たちはしばらく雑談をして過ごしたのだった……


「じゃあ、また明日学校で」


「はい！ さようなら」


カイル殿下に見送られながら私は彼と別れた。


（うぅ……幸せ過ぎる）


帰り道で一人頬を赤らめながら歩いていると突然声をかけられる。


「あれ？ フィーナじゃないか！」


（この声はまさか！？）


恐る恐る振り返るとそこにはルイスがいた。彼は笑顔で話しかけてくる。


「久しぶりだな！ 元気にしてたか？」


「うん、まぁ……」


歯切れの悪い返事をするとルイスは不思議そうな顔をする。そして彼は言った。


「おいおい、何かあったのか？」


（うぅ……やっぱり聞いてくるよなぁ）


私は覚悟を決めて話しかけた。


「実は……学園祭の日にカイル殿下に告白されたの」


するとルイスは驚いた表情を浮かべる。しかしすぐ笑顔になると言った。


「そうか！ もうそんなに進展していたんだな！」


（いや！ そんなんじゃないから！！）


心の中で叫ぶが当然伝わるわけもなくルイスは嬉しそうに言葉を続ける。


「それで、返事はどうしたんだ？ もしかしてOKしたのか？」


「保留にした」


私が答えるとルイスは目を丸くした。そして笑い出す。


「あははは！ そうか、保留にしたのか！」


恥ずかしくて俯いているとルイスが頭を撫でてきた。驚いて顔を上げると彼は優しい笑顔で言った。


「フィーナ、勇気を出して返事をしたのは偉いぞ」


褒められてさらに恥ずかしくなる。するとルイスは私の手を握ってきた。


「よし、今日は俺がフィーナに何でも好きなものをご馳走してやる！」


「えっ！ いいの！？」


嬉しくてついはしゃいでしまう。するとルイスは私の手を引っ張って歩き出した。


「さぁ、行くぞ！」


（うぅ……ルイスには申し訳ないけどカイル殿下から告白された時よりも嬉しいかも）


そんなことを考えているうちにお店の前に到着した。中に入ると美味しそうな料理の匂いが漂ってくる。


「うわぁ！ 美味しそう！！」


目を輝かせて料理を注文するのだった……


「ふぅ～お腹いっぱいだ～！」


テーブルで満足そうにつぶやくと、ルイスが苦笑しながら言った。


「フィーナは本当によく食べるよな」


「うぅ……しょうがないじゃん」


言い訳をしようとするが何も思いつかないので諦めることにした。それから私たちは店を出て歩くことにした。するとルイスが突然立ち止まると言った。


「なあ、フィーナ。話があるんだが聞いてくれないか？」


不思議に思いつつも私は頷いた。すると彼は真剣な表情で話し始めた。


「実は……俺はフィーナのことが好きだ」


頭が混乱して何も考えられなくなる。するとルイスは続けて言う。


「俺はフィーナと一緒に過ごしたいと思っているんだ」


「うぅ……そんな急に言われても困るよ」


私は戸惑いを隠せなかった。するとルイスは私の手を掴んで言った。


「フィーナ、返事を聞かせてくれないか？」


私が悩んでいるとルイスが優しく微笑んでくれた。


「いきなりこんなこと言われても困るよな。だけど俺は本気なんだ」


しばらく悩んだ後、私はルイスに答えた。


「ごめんなさい」


私が謝るとルイスは少し悲しげな表情を浮かべたがすぐに笑顔に戻って言った。


「そうか、分かったよ」


そう言うと彼は去っていった。


「……」


一人残された私は呆然と立ち尽くしていた。