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「その黒髪に黒目……おぬしもしや【月影一族】か?」
「ッ!!」
俺は思わず身構えた。まさか、自分の正体を見破られるとは思いもしなかったからだ。だがアトラという少女はこう続けた。
「勘違いするでない! 別におぬしを取って食おうとは思っておらんわい」
「あぁ……いやすまない」
俺はすぐに構えを解いた。どうやら彼女は俺の正体に感づいているようだが、何か敵意があるわけではないらしい。警戒を解いて話の続きを聞くことにした。
「わしはこの村を守護する御神木様の精霊、こちらでいうところの【ドライアド】じゃ」
「ドライアド……木の精霊か?」
「左様。この村の御神木様は、かつて月影一族に守られた村なのじゃ」
アトラが言うには、この【御神木様】はかつて月影一族と呼ばれる一族が守護していたそうだ。その一族の祖が俺と同じ黒髪黒目だったらしく、俺と見間違えたらしい。
「この村には結界を張っておったのじゃが、月影一族の者には特別に結界をすり抜けられるようにしておいた」
「結界……?」
「そうじゃ、最初はこの地に人はほとんどいなかった。じゃが他所から訳ありの女たちが次々とこの地にやってくるようになった。じゃから結界を張り、安全に暮らせるようにしたのじゃ」
「どうして月影一族が入れるようにしたんだ?」
「100年ほど前に偶然迷い込んだ月影一族がこの村を救ってくれたからじゃ、それ以来、月影一族で選ばれた者がこの村の守人となるのじゃ」
「だが俺は別に村の守人になるつもりは……」
「ふぉっふぉっふぉ、そう遠慮するでない」
アトラが笑う。
「おぬしももう気づいているはずじゃよ、この村で暮らすことがおぬしの運命じゃと」
アトラが言う。たしかに……そうだ。俺は追放されてからずっと孤独だった。だが今はフィーナという幼馴染がいて、村の人たちは俺を温かく迎えてくれる。そして何より……。
「この村を守る代わりに、女たちがおぬしの世話をしてくれるぞ」
「……」
答えを出そうとした、そのときだった。
「……侵入者じゃ!」
アトラが叫ぶ。すると村の入り口の方から、数人の魔族の姿が見えた。
「美味そうな女どもだぜ」
魔族が女たちを目の前にして、舌なめずりする。
「ッ!!」
フィーナが魔族たちの前に立ちはだかる。
「なんだこのガキ……どけや!」
魔族の男がフィーナを殴り飛ばそうと腕を振り上げる。
「お、俺の腕が……?」
次の瞬間、魔族の腕は地面に落ちる。それは俺の影刃によって切り落とされたからだった。
「ク、クロウ君っ!」
「怪我はないか?」
「う、うんっ! ありがとう!」
フィーナを安全な場所へ逃がし、魔族たちと対峙する。
「き、貴様ぁ……何者だ!?」
「答える義理は、ない」
「人間ごときが図に乗るなよ!」
魔族たちが襲いかかってくる。俺は影刃で迎え撃つ。
「影の型、一式【影枝】」
自分の影を伸ばし、枝分かれした無数の刃に換え、魔族の体をバラバラに切り裂いたのだ。
「なかなかやるようだな、だが俺はそうはいかんぞ!」
魔族のリーダーらしき男が自らの体を変形させていく。それは数メートルはありそうな巨大な蜘蛛であった。
「この姿を見て生きたものは一人もいない。覚悟しろ!」
巨大蜘蛛は口から糸を吐き出し、俺に襲いかかってくる。
「影の型、二式【影舞】」
俺は蜘蛛の糸を避けつつ、影刃を無数に飛ばしながら巨大蜘蛛に接近する。そして……。
「喰らえ!!」
大口を開けた蜘蛛に自らの腕を突っ込み、脳天から貫くように斬撃を放った。
「ぐはっ……」
巨大蜘蛛は脳天を貫かれたまま絶命する。俺が腕を引っこ抜くと、巨大蜘蛛は地面へと崩れ落ちた。
「ス、スパイダー様が……」
魔族たちが愕然としている。俺は魔族たちのもとへ近づくと言った。
「さて……次は誰が相手をしてくれるんだ?」
俺が魔族たちを睨み付けると、魔族たちは震えながら撤退していったのだった……。
「ッ!!」
俺は思わず身構えた。まさか、自分の正体を見破られるとは思いもしなかったからだ。だがアトラという少女はこう続けた。
「勘違いするでない! 別におぬしを取って食おうとは思っておらんわい」
「あぁ……いやすまない」
俺はすぐに構えを解いた。どうやら彼女は俺の正体に感づいているようだが、何か敵意があるわけではないらしい。警戒を解いて話の続きを聞くことにした。
「わしはこの村を守護する御神木様の精霊、こちらでいうところの【ドライアド】じゃ」
「ドライアド……木の精霊か?」
「左様。この村の御神木様は、かつて月影一族に守られた村なのじゃ」
アトラが言うには、この【御神木様】はかつて月影一族と呼ばれる一族が守護していたそうだ。その一族の祖が俺と同じ黒髪黒目だったらしく、俺と見間違えたらしい。
「この村には結界を張っておったのじゃが、月影一族の者には特別に結界をすり抜けられるようにしておいた」
「結界……?」
「そうじゃ、最初はこの地に人はほとんどいなかった。じゃが他所から訳ありの女たちが次々とこの地にやってくるようになった。じゃから結界を張り、安全に暮らせるようにしたのじゃ」
「どうして月影一族が入れるようにしたんだ?」
「100年ほど前に偶然迷い込んだ月影一族がこの村を救ってくれたからじゃ、それ以来、月影一族で選ばれた者がこの村の守人となるのじゃ」
「だが俺は別に村の守人になるつもりは……」
「ふぉっふぉっふぉ、そう遠慮するでない」
アトラが笑う。
「おぬしももう気づいているはずじゃよ、この村で暮らすことがおぬしの運命じゃと」
アトラが言う。たしかに……そうだ。俺は追放されてからずっと孤独だった。だが今はフィーナという幼馴染がいて、村の人たちは俺を温かく迎えてくれる。そして何より……。
「この村を守る代わりに、女たちがおぬしの世話をしてくれるぞ」
「……」
答えを出そうとした、そのときだった。
「……侵入者じゃ!」
アトラが叫ぶ。すると村の入り口の方から、数人の魔族の姿が見えた。
「美味そうな女どもだぜ」
魔族が女たちを目の前にして、舌なめずりする。
「ッ!!」
フィーナが魔族たちの前に立ちはだかる。
「なんだこのガキ……どけや!」
魔族の男がフィーナを殴り飛ばそうと腕を振り上げる。
「お、俺の腕が……?」
次の瞬間、魔族の腕は地面に落ちる。それは俺の影刃によって切り落とされたからだった。
「ク、クロウ君っ!」
「怪我はないか?」
「う、うんっ! ありがとう!」
フィーナを安全な場所へ逃がし、魔族たちと対峙する。
「き、貴様ぁ……何者だ!?」
「答える義理は、ない」
「人間ごときが図に乗るなよ!」
魔族たちが襲いかかってくる。俺は影刃で迎え撃つ。
「影の型、一式【影枝】」
自分の影を伸ばし、枝分かれした無数の刃に換え、魔族の体をバラバラに切り裂いたのだ。
「なかなかやるようだな、だが俺はそうはいかんぞ!」
魔族のリーダーらしき男が自らの体を変形させていく。それは数メートルはありそうな巨大な蜘蛛であった。
「この姿を見て生きたものは一人もいない。覚悟しろ!」
巨大蜘蛛は口から糸を吐き出し、俺に襲いかかってくる。
「影の型、二式【影舞】」
俺は蜘蛛の糸を避けつつ、影刃を無数に飛ばしながら巨大蜘蛛に接近する。そして……。
「喰らえ!!」
大口を開けた蜘蛛に自らの腕を突っ込み、脳天から貫くように斬撃を放った。
「ぐはっ……」
巨大蜘蛛は脳天を貫かれたまま絶命する。俺が腕を引っこ抜くと、巨大蜘蛛は地面へと崩れ落ちた。
「ス、スパイダー様が……」
魔族たちが愕然としている。俺は魔族たちのもとへ近づくと言った。
「さて……次は誰が相手をしてくれるんだ?」
俺が魔族たちを睨み付けると、魔族たちは震えながら撤退していったのだった……。
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