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ある日のこと、俺たちは村へ帰るために森の中を歩いていると、不意にノワールが立ち止まった。


「ご主人様……少しよろしいですか?」


「どうしたんだ?」


すると彼女は真剣な表情でこう言ってきた。


「魔族の気配があります」


「なに? どこだ!?」


俺は周囲を見回すが、それらしき姿は見えない。するとノワールは地図を広げた。そこには俺たちが今いる場所と目的地である王都の位置が示されていた。


「恐らくこのあたりかと……」


ノワールに言われて見てみると、確かにこの辺りから禍々しい気配を感じられる……。


「まさか、ここで四天王が待ち構えているのか?」


俺は緊張感に包まれる。するとフィーナも真剣な顔になった。


「大丈夫! 私たちなら絶対に勝てるよ!」


そう言うと彼女は俺の手を握り、笑いかけてくる。俺もその手を握り返すと、強くうなずいた。


「そうだな。俺たちなら大丈夫だ!」


俺たちはそのまま森を突き進んだ……すると突然ノワールが立ち止った。


「ご主人様! 止まってください!」


彼女に言われるがままにその場に止まると、遠くから声が聞こえてきた。


「グォオオ……」


巨大な翼と鋭い牙を持つ怪鳥がこちらに向かってくる……。間違いない、あれが四天王の一人、マルファスだ!


「クロウ君!」


「クロウさん!」


フィーナとリザも戦闘態勢に入った。俺は彼女たちに目配せすると、剣を構えたまま一歩前へ踏み出した。するとマルファスが突っ込んで来る!


「うおおおお!!」


俺は渾身の一撃を放った! しかし奴には傷一つつかない……それどころか逆にこちらの攻撃が弾かれてしまった。


「ぐはっ!!」


俺の攻撃で隙ができたところに、マルファスが鋭い爪を振り下ろした! 俺はなんとか避けるが、バランスを崩してしまう。そこへ奴の翼が迫ってくる……。これは避けられない……そう思った瞬間だった。


「ご主人様!」


ノワールが俺を突き飛ばしてくれたおかげで俺は助かった。しかし彼女はそのまま地面へと落下していく!


「ノワール!」


俺は慌てて彼女を追いかけると、空中で彼女を受け止めた。そしてそのまま地面に降り立つと、彼女を地面に横たわらせた。


「大丈夫か!?」


「はい……なんとか……」


ノワールは苦痛の表情を浮かべながらも何とか立ち上がった。俺はそんな彼女を庇うようにして前に立つと、マルファスに剣を向けた。しかし奴は翼を広げたまま動かない……。どうやらこちらの出方をうかがっているようだ……。


(どうする……?)


俺がそう考えていると、フィーナたちが駆けつけてきた。彼女は俺の隣に立つと剣を構える。リザは後ろから俺を支えてくれるようだ。そしてそのまま俺たちはマルファスに向けて攻撃を繰り出した!


「ハァッ!!」


俺と同時にフィーナとリザも攻撃を放った。だがそれでも奴には届かない……。


(やはり俺たちだけじゃ勝てないのか?)


絶望が頭をよぎる……。しかしその時だった!


「ご主人様! 私に考えがあります!」


ノワールが声を上げた。彼女の提案を聞いて、俺は思わず驚きの声を上げてしまった……。


「本当にいいのか……?」


俺の言葉に彼女は力強くうなずく。そして真剣な眼差しで見つめてきた。


(ノワールは本気だ……なら俺もそれに応えないとな……)


覚悟を決めると、俺は剣を構えたまま一歩前に出た。するとマルファスが翼を広げて襲い掛かってくる!


「グォオオオオオ!!」


鋭い爪が俺に向かって振り下ろされる!だが間一髪のところで、俺はそれを回避した。そのまま後ろに回り込むと、奴の背中に向けて剣を突き立てた!


「うおおおお!!!」


ズブッという音とともに俺の剣が深々と突き刺さる……! マルファスは悲鳴を上げると、地面へと落下していった……。


「やったか?」


俺がそう呟くと、ノワールが口を開いた。


「いえ、まだです……四天王はそう簡単に倒れません!」


確かにその通りだと思った俺は身構える。するとマルファスは翼を広げて空へ飛び上がった!そして空中で旋回すると、再びこちらに向かってきた!

(もう一度来るつもりか……!)


俺は剣を構えると、奴に向かって走り出した……! だがその時だった……!


「ご主人様! 危ないです!!」


ノワールが後ろから俺を突飛ばした!その直後、彼女の体に鋭い爪が突き立てられる!


「ぐあっ……!」


ノワールはうめき声を上げながらその場に倒れ込んでしまった……。そんな彼女を見下ろしながら、マルファスはニヤリと笑った。そしてそのまま彼女に向かって翼を振り下ろすと、その体を真っ二つに切り裂いた……! 俺は思わず言葉を失った……。目の前で愛する女性が殺されてしまったのだから……。だがそれと同時にある感情が湧き上がってきたのだ……そう『怒り』である。そして俺の体の中に魔力が満ちてくる……。すると俺の体から黒いオーラのようなものが溢れ出してきた……。


(これは一体……?)


俺は不思議に思いながらも剣を構えると、マルファスに向かって突っ込んで行った! そして渾身の一撃を放つと、奴の体を真っ二つに切り裂いた……!


「グォオオ!?」


断末魔の悲鳴を上げながら、マルファスは消滅した……。それと同時に俺の体から黒いオーラが消える……。


(今のは一体……?)


不思議に思っていると、ノワールが体を起こしながら声をかけてきた。


「ご主人様……大丈夫ですか?」


俺は彼女の元へと駆け寄ると、怪我の様子を調べた。幸い命に関わるような傷は見当たらないようだ……。


「ああ、大丈夫だ……それよりもありがとうな」


俺が礼を言うと、彼女はニコッと笑ってこう言った。


「いえ、当然のことです」


俺はノワールの体を優しく抱き起こすと、そのまま口づけをした……。
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