迷子の僕の異世界生活

クローナ

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迷子になりました

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クラウスの後に食堂に降りてきたのは優しそうな老夫婦だった。

「おはようございます。こちらへどうぞ。」

席に案内してカウンター越しに料理とパンを受け取りテーブルに並べていく。

「お飲み物はどうされますか?」

コップがいつまでも空だったので喫茶店でのバイトを思い出しながら聞いてみた。

「珈琲と紅茶と果実水とミルクがございますが何がよろしいでしょうか」

「じゃあ珈琲と果実水を」

コップを受け取りそれぞれ注いでテーブルに置くと

「朝早くからお手伝いえらいわね」

とにこにこ笑って労ってくれたので返事代わりに愛想笑いで答えておいた。


次に降りてきた二人連れは席へ案内すると座る前にコップを手に取り飲み物を自分で入れていたので料理を運ぶだけで済んだ。

老夫婦が食べ終わり席を立つ頃階段を降りてくる音で最後の4人組が来るのがわかった。
どんな人達かなと思っていたら食堂の奥にあるマート家の居室の扉が勢いよく開いてジェリーが飛び出してきた。 
その後ろをビートが追ってくる。

「ジェリーまだ出ちゃだめだろ!」

俺の足元にしがみついてきたジェリーは上は肌着で下は寝間着だ。

「どうしたビート。」 

カウンターからマートが覗いて声をかける。

「ごめんとーちゃんジェリーが着替えを嫌がって出て来ちゃった」

手にはジェリーが今日着る服を掴んでいる。当の本人は俺の後ろに隠れてしまった。

食堂の入り口では4人組のお客さんが立ち止まってしまってて、どうしようかと見やると栗色の髪を肩までのばした綺麗なお兄さんが

「勝手にやるからチビちゃんみてあげて」

と言ってくれた。すみませんと会釈してビートに向き直る。

「おはようビート」

「おはようトーヤ、仕事の邪魔してゴメンな。ほらジェリー戻ろう」

困り顔で挨拶を返しジェリーに手を伸ばすけれど俺を盾にして隠れてしまう。

「ジェリーおはよう」

俺はしゃがんでやんわりジェリーを捕まえた。

「どうしたの?お着替えしないの?」

するとビートの持ってる服を指差して

「あれ、や!」

と小さな口を尖らせて抗議する。ありゃりゃお嬢様は服がお気に召しませんでしたか。

俺はビートから服を受け取って膝の上に広げてみせた。ジェリーは服を見ないように俺の肩口に顔を押し付けてしまう。
オリーブ色のシンプルで子どもらしいエプロンドレスだ。

「可愛いねこの服。あ、こんな所にリボンが付いてる可愛いなぁ。肩のフリルもひらひらしてていいね~ジェリーが着てるの見てみたいなぁ似合うだろうなぁ」

ジェリーが俺と服をチラチラ見比べる。あとひと押しかな?

「僕この色好きだな~ジェリーは嫌いなの?じゃあ僕が貰っちゃおうかなぁ?」

そう言うとジェリーは慌てて俺の膝の上のドレスを掴むと

「め!なの!ジェリーのなの!」

と今度はビートのもとへ逃げ出した。チョロイな。「にーちゃはやく!」と居室へ続く扉に向かいビートの背中をぎゅうぎゅう押していく。

口パクで「ありがとう」と言うビートに手を振って「じゃあ可愛くしてもらったらまた見せてね」とジェリーを送り帰した。

「あしらうのが上手だな。」

焦茶色の髪を短く刈り上げだ筋肉ムキムキなおじさんが褒めてくれた。

4人組のうち3人はお客さんはすでに席に着いていてさっきのお兄さんがマートからお皿を受け取って並べてくれている。

「すいません僕やります。」

「いいっていいって。ところで君はだれ?」

人懐っこい笑顔でオレンジのベリーショートのお兄さんが聞いてくる。

「昨日からこちらでお世話になってます。冬夜といいます。」ペコリとお辞儀をする。

「トーヤかぁ可愛いね。俺はね~ロウだよ、よろしく~」

「俺はジルベルトだ、俺達ここを常宿にしてるからよろしくな。」

と筋肉ムキムキさん。

「俺はレオン。で、そっちの銀髪がシリルだよ。」

栗毛の綺麗なお兄さんが銀髪のツンツン頭のお兄さんをついでに紹介してくれた。

「よろしくお願いします」

と営業スマイルをすれば銀髪おにいさんも「うす」と返してくれた。

ずっと仕事の話をしてた二人連れの男性も席を立ったので片付けてるときちんと服を着たにこにこのジェリーがすでに疲れた顔のビートとやって来た。

「にーちゃみてみて~」

俺の前でくるんと回ってお披露目してくれた。

「ビートに可愛く着せてもらってよかったね」

うん。服は完璧だけどふわふわの髪質が仇になって爆発してる。

「俺はもう無理」

とビートがブラシとリボンを渡してきた。

「ちょっと待っててね」

ジェリーをカウンターに座らせてテーブルを片付けてからスタイリングに取りかかる。

「お嬢様今日はいかがいたしますか?」

絡まった髪をまずは手櫛で溶きほぐし次にブラシを通していく。

「えっとね~えっとね~かあいいの!」

にこぉととろける笑顔を向けらたらお兄ちゃん頑張っちゃうよ!
小学生のちっちゃい子の髪結で自分が遅刻しそうな事が何度かあったなぁと思い出に浸りながらサイドの髪を編込んでひわふわの髪を活かした子どもらしいツインテールを作った。

「お待たせしましたお嬢様。よくお似合いですよ」

「かあいい?」

「うん可愛いよ」

「お~ジェリーえらいめかしこんだな?よく似合ってるぞ」

マートの援護射撃でごきげんだ。

「朝からいろいろありがとな。ほら、3人で朝飯食ってくれ。」

焼きたてのベーコンとスクランブルエッグの載ったお皿をカウンターに並べてくれる。

「これも仕事のうちでしょう?」

昨日のお返しだ。

「ふはっ。そうだな、助かるよ」

ちょっと面食らった顔をしたあとビートによく似た笑顔で笑う。
優しい笑顔につられて俺も笑った。



3人で美味しく朝食を食べて食器を片付けたら食堂の床を掃き掃除して水モップをかける。

お客さんがチェックアウトするのを見送ってシーツを剥がしてシャワー室で洗濯。ついでにマート達と自分の服も洗濯をする。

流石にタライで洗濯の経験はないので結構重労働だけどこれを普段妊婦のヘレナがやってるのなら俺は弱音は吐けない。

洗濯を干しているうちに昼の営業時間になってしまった。

ちょっとシャツが濡れてしまったからもう1枚のシャツに着替えようかと考えたけれど何しろ貴重な着替えだ。それほど酷くはないし動いてれば乾くだろうからまあいいかと厨房に行ったらマートが慌ててエプロンを持ってきた。

そういえば昨日ビートもエプロンしてたね。お昼の営業の制服みたいなものか。

さほど混まなかったけれどマートやビートに指示をされるまま料理を運んだり食器を片付けたりと忙しく、終わったら少しの休憩の間ジェリーと遊びお昼寝させて、その間に客室の掃除をしてシーツをかけ終える頃には夕方を過ぎた。

今夜は夕飯の必要な宿泊客は誰もいなくて早目の夕飯を食べる頃にはジェリーと一緒に船を漕ぎだしシャワーを浴びたらまたしてもすぐ眠りについてしまった。


……いいのか、俺!




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