迷子の僕の異世界生活

クローナ

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王都で就活?

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今日で王都に来て4日経った。

俺的に残念なお知らせです。今日はガイド付き王都散策ですが。キラキラなイケメンの隣を歩くのにかなりの忍耐が必要になりそうです。

今もクリームたっぷりのココアラテを飲んでる俺の横でブラック珈琲を飲んでいる姿に前を通る女性冒険者や学生さんが頬を赤らめて通り過ぎています。
ちなみに、クリームたっぷりを『おごるから飲んでみて!』と薦めたのに却下されました。

「それにしても繁盛してるなその屋台」

クラウスが俺の飲んでるのを見ながら「なぜそれが?」って顔をしている。
確かに並ぶほどでは無いけれどお客さんがひっきりなしだ。

「流行ってるのかな?クラウスも今飲んでおかないと後悔するかも。」

俺の申し出を断ったクラウスにふふんって笑ってやったら断りもせずに俺の手ごとラテのカップを掴んで飲みやがった。

「あま‥…。これで後悔せずにすむか?」

唇の端に付いたクリームをぺろりと舐めてしれっとしてる。

「断ったくせに勝手に飲まないでよ。」

仕草がいちいちかっこよくて俺の心臓に悪い。それにこれ……『間接キス』なんですけど。

しばらくカップとにらめっこしてたけどあんまり待たせる事もできなくて無心で飲み干した。

それで今日の『俺のしたい事』は宿を出て100メートル辺りで終了した。

「それじゃあ何処から案内しようか……トウヤは何か知っておきたいことはあるか?」

クラウスが地図を広げて聞いてくれた。

「う~ん。やっぱり孤児院の周りかな?大通りと孤児院ぐらいしか行ってないから……。」

「じゃあトウヤが生活する辺りを歩くか。」

「うん、お願いします!」



1人で歩いた時はわからなかったけど、看板の読めない俺になんの店か教えてくれるのですごく楽しい。
あちこち見ながら歩いていたらあっという間に教会前の広場に着いた。

「あ、俺クラウスに預けてある荷物が入るかばんと寝間着買わなくちゃ!」

お店を教えてもらううちに要り用な物があることに気がついた。王都散策よりも明日からの為に買い物をするべきなのか?

「俺のいらないもので良ければ結構揃うと思うぞ。どうしても新しいのがいいなら付き合うがどうする?」

考え込む俺にクラウスが助け舟を出してくれた。あの魔法のかばんの在庫整理って言ってたしお金に余裕があるわけじゃないからありがたい。だけど……。

「そりゃ買わなくていいならそっちの方が助かるけど寝間着は買わないとダメってクラウスが言ったんだよ?」

俺のお気に入りのあのパジャマにダメ出しをしたのはクラウスなんだからな!
でもそのクラウスから更にありがたい話が飛び出した。

「予定が狂ったせいで寝間着を買いに連れて行ってやれなさそうだったから合間を見て買っておいた。」

「え、そうなの?ありがとうクラウス。ちゃんとお金払うから言って。手持ちで足りないならギルド行くから。」

「金はいいよ。俺からの就職祝って事で。」

そんなのだめだ。王都までの移動費の事だってあるのにクラウスに負担をかけてばかりになっちゃう。

「それならクラウスだって……あれ?あの人。」

クラウスにだって復帰祝いをしてあげなくちゃ、と言おうとした時にこちらに向かってブンブン手を振る黒い騎士服の人がもう一人の騎士服の人を置き去りにして走ってきた。王都に来た時に身分確認をしていた紫頭の人だった。

「クラウスさ~ん!俺観ましたよ昨日!いやぁ凄かったっスね!騎士団の中でクラウスさんに勝てる奴なんていないっスよ。最後の3対1なんてあんなんないわ~って思ったっスけどそれでも勝っちゃうってナニモン?って思ったっス。」

寄って来るなりクラウスの手を握ってブンブン振りながら興奮気味にまくし立てた。テンション高い人だな?クラウスのファンみたいだ。手を振り回されてるクラウスなんてなんだか面白い。
それにしても3対1って昨日の怪我はそれのせい?勝てないからって酷いし!でも……それ程でも負けないクラウスってもしかしてすごく強いの?

「お前仕事中だろいい加減にしろ、クラウスさんもすいません。ほら、お連れの方にも迷惑だろ。」

追い掛けてきたもう1人の黒騎士の人に首根っこを掴んで後ろに引っ張られた。

「お連れの方?」

もう1人の黒い騎士服の人に言われてようやく俺の存在に気づいたようだった。目が合ったのでペコリと頭を下げてみた。

「え……?クラウスさん、この子とお知り合いなんスか?」

「だったらなんだ。」

あっという間に距離を詰められ両手を握られた。

「あの、俺黒騎士隊のジョセフっていいます!城門で一目惚れしました!ずっと会いたいって思ってました!好きです!付き合ってください!」

「……へ?」

早口でまくし立てられ言われた言葉を理解するのに時間がかかった。

「いい加減にしろって言ってるだろうこのあほが!スイマセン!スイマセン!」

俺が呆けているうちにもう1人の人が紫頭の人を殴りつけ首根っこを掴んで激しく謝りながら去っていった。

「…………おもしろい人だね、ジョセフさんって。」

「あんなのの名前なんて覚えなくていい。」

男1人をズルズル引っ張っていくもう1人の人もすごいな。

「でもクラウスにすごく懐いてたよ。」

「なんだよ『好きだ』と言われたから気になるのか?」

クラウスの声色がなんだか不機嫌そうだ。

「やだな、あんな冗談真に受けたりしないよ?」

「冗談じゃなかったらどうする?」

連れて行かれるジョセフを見ながら更に続けた。

「しつこいな、ありえないってば。」

「…………そうか。ありえないか。」

なぜか俺の方を見ようとしないクラウスに違和感を感じたけれど、今のやり取りが俺の中でよくわからないもやもやになってしまって違和感の理由を探すことはやめてしまった。

「今あいつらが歩いて行った方に騎士団の寮があるがどうする?見に行くか?」

俺は首を横に振った。さっきので気が削がれてしまったからだ。



だけどやっぱり見に行けば良かったと夜になってすごく後悔した。
だって、クラウスとは明日になったらもうお別れなんだと気付いてしまったから。




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