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「痛い……腰が痛い……。指紋がなくなる……」
ヴァレンティ商会の第2工場(元・納屋)。
薄暗い作業場の隅で、この国の王太子アレクセイが、地味な作業に従事していた。
彼の目の前には、山積みになった『王太子の気まぐれ・スパイシージャム』の小瓶。
彼の仕事は、その一つ一つに『検品済』のシールを、1ミリのズレもなく貼り付けることだ。
「おい、新人! 手が止まってるぞ!」
「ひっ!?」
背後から怒号が飛ぶ。
現場監督を務めるのは、古株のパートのおばちゃん……ではなく、腕まくりをしたミーナだ。
「このロット、午前中に出荷なんだからね! あと100個! 終わらなかったら昼食抜きよ!」
「そ、そんな殺生な! 私は王太子だぞ! 国の未来を背負う私が、なぜこんな単純作業を……」
「単純作業もできない人間に、国の運営ができるわけないでしょ! ほら、シールが歪んでる! やり直し!」
「ぐぬぬ……!」
アレクセイは涙目でシールを剥がす。
かつては夜会でエスコートしてくれた可愛い婚約者(ミーナ)が、今や鬼軍曹に見える。
そして、自分が捨てた元婚約者(ルアーノ)は、雲の上の経営者だ。
「……どうしてこうなった」
彼が絶望の溜息をついた、その時だった。
ウゥゥゥゥゥ―――ッ!!
屋敷全体に、不穏なサイレンのような音が響き渡った。
魔力を使った『緊急警報』だ。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
アレクセイが慌てて立ち上がる。
工場長室からルアーノが、そして護衛として常駐しているギルバートが飛び出してきた。
「ギルバート様、今の反応は?」
「王都の方角からだ。……高密度の通信魔法。これは、国家非常事態宣言レベルの緊急連絡だぞ」
「非常事態……?」
ルアーノの表情が引き締まる。
ただごとではない。
通信魔法は、空中に巨大な光のスクリーンを投影し始めた。
バチバチッというノイズの後、映し出されたのは――。
『――緊急事態! 緊急事態! 各領主へ告ぐ!』
宰相の青ざめた顔だった。
背景では、官僚たちが右往左往し、書類が舞っている。
まるで地獄絵図だ。
『現在、王都にて大規模な経済麻痺(パニック)が発生! 王立中央銀行において取り付け騒ぎが起き、通貨の信用が暴落している! さらに、主要な商会が一斉にストライキを開始! 物流が完全に停止した!』
「なっ……!?」
アレクセイが口をあんぐりと開ける。
経済麻痺?
取り付け騒ぎ?
『原因は……ええい、隠しても仕方がない! アレクセイ王太子殿下の失踪による行政機能の停止、およびルアーノ・ヴァレンティ嬢の離脱による、各種契約の不履行だ!』
「私のせいかよ!」
アレクセイが思わず突っ込んだが、スクリーンの中の宰相には聞こえていない。
『物流の要であったヴァレンティ商会との連携が切れたことで、食料品や生活必需品の供給がストップ。市民の不満が爆発し、王城前で暴動が起きている! 陛下も心労でお倒れになった!』
「お、お父様が!?」
『至急、アレクセイ殿下の捜索と、ルアーノ嬢への協力要請を……ぶっ!』
ドゴォン!
映像の端で何かが爆発し、宰相が悲鳴を上げて通信は途絶えた。
プツン。
静寂が戻る。
工場の中は、シンと静まり返っていた。
「……終わりましたね」
ルアーノが、冷徹な声で呟いた。
その手にはいつもの電卓があるが、今は叩く気にもなれないようだ。
「こ、これはどういうことだルアーノ! 私の国が……暴動だと!?」
アレクセイが詰め寄る。
ルアーノは冷ややかな目で彼を見下ろした。
「当然の帰結(結果)です。殿下、貴方が婚約破棄をしたあの日、私が言ったことを覚えていますか? 『損切り』だと」
「そ、それがどうした!」
「私は王太子妃教育の一環として、王都の物流システム、関税計算、そして主要商会との根回しを一手に引き受けていました。いわば、国の経済という巨大な歯車を回す『潤滑油』であり『オペレーター』だったのです」
ルアーノは淡々と続ける。
「その私が抜け、業務を引き継いだのは誰ですか? 貴方と、その取り巻きの無能な官僚たちでしょう。メンテナンスされていない機械がどうなるか……工場で働く今の貴方なら、分かるはずですが?」
「あ……」
アレクセイは自分の手元のシール貼り機を見た。
ついさっき、自分が適当に扱ったせいで詰まり、故障したばかりの機械を。
国という巨大な機械もまた、同じように壊れたのだ。
「そんな……私のせいで、国が……?」
アレクセイの顔から血の気が引いていく。
ただのワガママだった。
気に入らない婚約者を追い出して、可愛い子と楽しく暮らしたかっただけなのに。
その結果が、国家の破綻。
「ど、どうすればいい! ルアーノ、お前なら分かるだろう! なんとかしてくれ!」
アレクセイがルアーノの足元に縋り付く。
プライドも何もない。
ただのパニックになった子供だ。
ルアーノはため息をつき、ギルバートを見た。
「ギルバート様。王都までの距離、転移魔法でどれくらい消耗しますか?」
「俺一人なら余裕だが……大人数を連れて行くとなると、骨が折れるな。特別料金をもらわないと割に合わん」
「承知しました。経費は全て『国家』に請求します」
ルアーノはアレクセイの襟首を掴んで引き立たせた。
「立ちなさい、パートタイマー(王太子)。貴方の不始末です。貴方自身が片付けに行きますよ」
「へ? わ、私も行くのか? 暴動が起きているのに!?」
「当たり前です。暴動を鎮めるには、責任者の謝罪と、具体的な再建案の提示が不可欠です。生贄……いえ、象徴として貴方の顔が必要なのです」
「い、嫌だ! 殺される!」
「大丈夫です。死んだら保険が下りますから」
「そっちの心配かよ!」
ルアーノはミーナにも声をかけた。
「ミーナ様、貴女も来ますか? それともここでドーナツを揚げていますか?」
ミーナは少し考え、エプロンを外して放り投げた。
「行くわ! 私がいないと、このバカ王子、また何かやらかすでしょ? それに……王都の人たちにも、私のドーナツを食べさせてあげなきゃ、元気が出ないと思うの!」
「素晴らしい『顧客視点』です。採用」
ルアーノはパチンと指を鳴らした。
「では、出張です。目的は『国家財政の再建(コンサルティング)』および『王家への超・高額請求』。……準備はいいですね?」
「ああ。いつでもいいぞ」
ギルバートが杖を掲げる。
床に巨大な魔法陣が展開され、青白い光が溢れ出す。
「ひぃぃぃ! 嫌だぁぁぁ! 帰りたくないぃぃぃ!」
アレクセイの情けない悲鳴と共に、一行は光の中に消えた。
***
一瞬の浮遊感の後。
ルアーノたちが降り立ったのは、王城の謁見の間――のど真ん中だった。
「な、何者だ!?」
「曲者か!?」
玉座の周りにいた近衛騎士たちが剣を抜く。
しかし、現れたのが行方不明だった王太子と、最強の魔術師だと気づき、どよめきが広がった。
「で、殿下!? ギルバート卿!?」
「それに、あれは……ヴァレンティ公爵令嬢!?」
玉座には、やつれ果てた国王が座っていた。
彼は息子たちの姿を見るなり、涙を流して玉座から転がり落ちてきた。
「おお……! アレクセイ! よくぞ戻った! それにルアーノ嬢も!」
「ち、父上……」
アレクセイが縮こまる。
国王は息子の肩を掴み、ガクガクと揺さぶった。
「バカ者ぉぉぉっ!! 貴様が消えたせいで、国は滅亡寸前だぞ! 書類一つ決裁できんとはどういうことだ! 余の教育が間違っていたのかぁぁ!」
「ご、ごめんなさいぃぃ!」
親子喧嘩が始まった。
だが、ルアーノにはそんな感傷に浸っている時間はない。
「――陛下。お取り込み中、失礼いたします」
ルアーノの凛とした声が響く。
国王がハッと顔を上げた。
「ルアーノ嬢……! すまない、余からも詫びる。どうか、どうかこの国を救ってくれぬか! 財務大臣も商務大臣も、皆お手上げ状態なのだ!」
国王が頭を下げる。
一国の王が、公爵令嬢に頭を下げるなど前代未聞だ。
だが、それほど状況は切迫している。
ルアーノは静かに微笑み、懐から分厚いファイルを取り出した。
「お任せください、陛下。すでに移動中に『国家再建計画書』を作成いたしました」
「お、おお! さすがだ!」
「ただし」
ルアーノは電卓を片手に、ニッコリと、しかし絶対に断れない威圧感を放って告げた。
「タダではありません。これより私は、国家最高顧問としての『業務委託契約』を結ばせていただきます。報酬は国家予算の2%。および、ヴァレンティ商会の関税永久免除。……この条件が飲めますか?」
会場がざわめく。
国家予算の2%。
それは、一貴族が持つにはあまりに強大な財力だ。
だが、背に腹は変えられない。
国王は震える手で、ルアーノが差し出した契約書を受け取った。
「……飲もう。国が滅ぶよりは安い」
「賢明なご判断です。商談成立(ディール)ですね」
ルアーノは満足げに頷き、そしてギルバートとミーナ、そして泣きべそをかくアレクセイに向かって号令をかけた。
「さあ、仕事(ビジネス)の時間です! アレクセイ殿下は暴徒の説得へ! ミーナ様は炊き出しを! ギルバート様は物流網の再構築を! 私は財務省で帳簿をひっくり返してきます!」
「「「了解!!」」」
王都に帰還した『悪役令嬢』の指揮のもと、国を挙げた大改革が始まろうとしていた。
ヴァレンティ商会の第2工場(元・納屋)。
薄暗い作業場の隅で、この国の王太子アレクセイが、地味な作業に従事していた。
彼の目の前には、山積みになった『王太子の気まぐれ・スパイシージャム』の小瓶。
彼の仕事は、その一つ一つに『検品済』のシールを、1ミリのズレもなく貼り付けることだ。
「おい、新人! 手が止まってるぞ!」
「ひっ!?」
背後から怒号が飛ぶ。
現場監督を務めるのは、古株のパートのおばちゃん……ではなく、腕まくりをしたミーナだ。
「このロット、午前中に出荷なんだからね! あと100個! 終わらなかったら昼食抜きよ!」
「そ、そんな殺生な! 私は王太子だぞ! 国の未来を背負う私が、なぜこんな単純作業を……」
「単純作業もできない人間に、国の運営ができるわけないでしょ! ほら、シールが歪んでる! やり直し!」
「ぐぬぬ……!」
アレクセイは涙目でシールを剥がす。
かつては夜会でエスコートしてくれた可愛い婚約者(ミーナ)が、今や鬼軍曹に見える。
そして、自分が捨てた元婚約者(ルアーノ)は、雲の上の経営者だ。
「……どうしてこうなった」
彼が絶望の溜息をついた、その時だった。
ウゥゥゥゥゥ―――ッ!!
屋敷全体に、不穏なサイレンのような音が響き渡った。
魔力を使った『緊急警報』だ。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
アレクセイが慌てて立ち上がる。
工場長室からルアーノが、そして護衛として常駐しているギルバートが飛び出してきた。
「ギルバート様、今の反応は?」
「王都の方角からだ。……高密度の通信魔法。これは、国家非常事態宣言レベルの緊急連絡だぞ」
「非常事態……?」
ルアーノの表情が引き締まる。
ただごとではない。
通信魔法は、空中に巨大な光のスクリーンを投影し始めた。
バチバチッというノイズの後、映し出されたのは――。
『――緊急事態! 緊急事態! 各領主へ告ぐ!』
宰相の青ざめた顔だった。
背景では、官僚たちが右往左往し、書類が舞っている。
まるで地獄絵図だ。
『現在、王都にて大規模な経済麻痺(パニック)が発生! 王立中央銀行において取り付け騒ぎが起き、通貨の信用が暴落している! さらに、主要な商会が一斉にストライキを開始! 物流が完全に停止した!』
「なっ……!?」
アレクセイが口をあんぐりと開ける。
経済麻痺?
取り付け騒ぎ?
『原因は……ええい、隠しても仕方がない! アレクセイ王太子殿下の失踪による行政機能の停止、およびルアーノ・ヴァレンティ嬢の離脱による、各種契約の不履行だ!』
「私のせいかよ!」
アレクセイが思わず突っ込んだが、スクリーンの中の宰相には聞こえていない。
『物流の要であったヴァレンティ商会との連携が切れたことで、食料品や生活必需品の供給がストップ。市民の不満が爆発し、王城前で暴動が起きている! 陛下も心労でお倒れになった!』
「お、お父様が!?」
『至急、アレクセイ殿下の捜索と、ルアーノ嬢への協力要請を……ぶっ!』
ドゴォン!
映像の端で何かが爆発し、宰相が悲鳴を上げて通信は途絶えた。
プツン。
静寂が戻る。
工場の中は、シンと静まり返っていた。
「……終わりましたね」
ルアーノが、冷徹な声で呟いた。
その手にはいつもの電卓があるが、今は叩く気にもなれないようだ。
「こ、これはどういうことだルアーノ! 私の国が……暴動だと!?」
アレクセイが詰め寄る。
ルアーノは冷ややかな目で彼を見下ろした。
「当然の帰結(結果)です。殿下、貴方が婚約破棄をしたあの日、私が言ったことを覚えていますか? 『損切り』だと」
「そ、それがどうした!」
「私は王太子妃教育の一環として、王都の物流システム、関税計算、そして主要商会との根回しを一手に引き受けていました。いわば、国の経済という巨大な歯車を回す『潤滑油』であり『オペレーター』だったのです」
ルアーノは淡々と続ける。
「その私が抜け、業務を引き継いだのは誰ですか? 貴方と、その取り巻きの無能な官僚たちでしょう。メンテナンスされていない機械がどうなるか……工場で働く今の貴方なら、分かるはずですが?」
「あ……」
アレクセイは自分の手元のシール貼り機を見た。
ついさっき、自分が適当に扱ったせいで詰まり、故障したばかりの機械を。
国という巨大な機械もまた、同じように壊れたのだ。
「そんな……私のせいで、国が……?」
アレクセイの顔から血の気が引いていく。
ただのワガママだった。
気に入らない婚約者を追い出して、可愛い子と楽しく暮らしたかっただけなのに。
その結果が、国家の破綻。
「ど、どうすればいい! ルアーノ、お前なら分かるだろう! なんとかしてくれ!」
アレクセイがルアーノの足元に縋り付く。
プライドも何もない。
ただのパニックになった子供だ。
ルアーノはため息をつき、ギルバートを見た。
「ギルバート様。王都までの距離、転移魔法でどれくらい消耗しますか?」
「俺一人なら余裕だが……大人数を連れて行くとなると、骨が折れるな。特別料金をもらわないと割に合わん」
「承知しました。経費は全て『国家』に請求します」
ルアーノはアレクセイの襟首を掴んで引き立たせた。
「立ちなさい、パートタイマー(王太子)。貴方の不始末です。貴方自身が片付けに行きますよ」
「へ? わ、私も行くのか? 暴動が起きているのに!?」
「当たり前です。暴動を鎮めるには、責任者の謝罪と、具体的な再建案の提示が不可欠です。生贄……いえ、象徴として貴方の顔が必要なのです」
「い、嫌だ! 殺される!」
「大丈夫です。死んだら保険が下りますから」
「そっちの心配かよ!」
ルアーノはミーナにも声をかけた。
「ミーナ様、貴女も来ますか? それともここでドーナツを揚げていますか?」
ミーナは少し考え、エプロンを外して放り投げた。
「行くわ! 私がいないと、このバカ王子、また何かやらかすでしょ? それに……王都の人たちにも、私のドーナツを食べさせてあげなきゃ、元気が出ないと思うの!」
「素晴らしい『顧客視点』です。採用」
ルアーノはパチンと指を鳴らした。
「では、出張です。目的は『国家財政の再建(コンサルティング)』および『王家への超・高額請求』。……準備はいいですね?」
「ああ。いつでもいいぞ」
ギルバートが杖を掲げる。
床に巨大な魔法陣が展開され、青白い光が溢れ出す。
「ひぃぃぃ! 嫌だぁぁぁ! 帰りたくないぃぃぃ!」
アレクセイの情けない悲鳴と共に、一行は光の中に消えた。
***
一瞬の浮遊感の後。
ルアーノたちが降り立ったのは、王城の謁見の間――のど真ん中だった。
「な、何者だ!?」
「曲者か!?」
玉座の周りにいた近衛騎士たちが剣を抜く。
しかし、現れたのが行方不明だった王太子と、最強の魔術師だと気づき、どよめきが広がった。
「で、殿下!? ギルバート卿!?」
「それに、あれは……ヴァレンティ公爵令嬢!?」
玉座には、やつれ果てた国王が座っていた。
彼は息子たちの姿を見るなり、涙を流して玉座から転がり落ちてきた。
「おお……! アレクセイ! よくぞ戻った! それにルアーノ嬢も!」
「ち、父上……」
アレクセイが縮こまる。
国王は息子の肩を掴み、ガクガクと揺さぶった。
「バカ者ぉぉぉっ!! 貴様が消えたせいで、国は滅亡寸前だぞ! 書類一つ決裁できんとはどういうことだ! 余の教育が間違っていたのかぁぁ!」
「ご、ごめんなさいぃぃ!」
親子喧嘩が始まった。
だが、ルアーノにはそんな感傷に浸っている時間はない。
「――陛下。お取り込み中、失礼いたします」
ルアーノの凛とした声が響く。
国王がハッと顔を上げた。
「ルアーノ嬢……! すまない、余からも詫びる。どうか、どうかこの国を救ってくれぬか! 財務大臣も商務大臣も、皆お手上げ状態なのだ!」
国王が頭を下げる。
一国の王が、公爵令嬢に頭を下げるなど前代未聞だ。
だが、それほど状況は切迫している。
ルアーノは静かに微笑み、懐から分厚いファイルを取り出した。
「お任せください、陛下。すでに移動中に『国家再建計画書』を作成いたしました」
「お、おお! さすがだ!」
「ただし」
ルアーノは電卓を片手に、ニッコリと、しかし絶対に断れない威圧感を放って告げた。
「タダではありません。これより私は、国家最高顧問としての『業務委託契約』を結ばせていただきます。報酬は国家予算の2%。および、ヴァレンティ商会の関税永久免除。……この条件が飲めますか?」
会場がざわめく。
国家予算の2%。
それは、一貴族が持つにはあまりに強大な財力だ。
だが、背に腹は変えられない。
国王は震える手で、ルアーノが差し出した契約書を受け取った。
「……飲もう。国が滅ぶよりは安い」
「賢明なご判断です。商談成立(ディール)ですね」
ルアーノは満足げに頷き、そしてギルバートとミーナ、そして泣きべそをかくアレクセイに向かって号令をかけた。
「さあ、仕事(ビジネス)の時間です! アレクセイ殿下は暴徒の説得へ! ミーナ様は炊き出しを! ギルバート様は物流網の再構築を! 私は財務省で帳簿をひっくり返してきます!」
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