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水津と話したせいで一気に酔いが覚めたようだ。
「凛子さん。この後、飲み直しますか?」
同僚達は解散を始めていて、私に挨拶をして帰って行く。
柏木が飲み直そうと誘ってきた。それもいいなと思ったが、水津との件を思い出して止めた。柏木との関係を壊すのは嫌だから。
私は柏木に感謝していた。水津への思いを少しでも忘れることができたのも、また人を信じてみようと思えたのも彼のおかげだから。
何も柏木は知らないのに、私の事を友達として支えてくれた。
誰も信じられなくて前に進めなくても、ずっと待ってくれたのは彼だった。
私の都合で辞めると話した時だって、彼は自分の負担が増えるのがわかっていても止めなかった。
一緒にお昼を食べてくれたのもきっと、私に食欲がないことに気がついていたからだと思う。
彼が私の事を大切な友達だと思っているのと同じように、私も彼のことを思っている。
「今まで本当にありがとう」
私は柏木に心からお礼を言った。
「ごめんなさい、思っていたよりも酔いが回っちゃって、今日はこのまま帰るね」
「え?」
せっかく誘ってくれたのに飲み直す気分にはならなくて、その申し出を断ると残念そうに柏木は私を見た。
「さすがに立つ鳥跡を濁したらマズイでしょ?」
私が悪戯っぽく笑うと彼は困ったように笑った。
今日じゃなくて別の日にまた会えばいい。時間はたくさんあるのだから。
「また逢いましょう?連絡するから。次は二人で飲もう!」
私が次の約束を取り付けると彼は驚いたような顔をする。まるで、もう誘われないと思っていたように。
「はい」
彼が嬉しそうに返事したのを見て「またね」と挨拶をしてそのまま別れた。
「さあ、帰ろう」
私はアパートに帰ろうと電車に向かっていた。人気のない地下通路は建物の中なのにいつも風が吹き抜ける。
それが、冬の海風のように強く感じる。
「なんだか、海に来たみたいね。音もすごいわ」
そんな事を呟きがながら歩いていると着信音がした。
その音は通路の中をこだまするように不気味に響く。
恐る恐るディスプレイを確認するとそこには『進藤』と表示されている。
「……どうしよう」
少し逡巡するが、すぐに答えは見つかった。今なら彼女と向き合える気がした。
スマホを手に取るとふうと大きく息を吐き。通話のボタンを押した。
「もしもし」
『あ……』
その高い声は彩那の事を少しだけ思い出す。
「進藤さん?」
『はい』
私が彼女の名前を呼ぶと電話越しでもビクリとしたのが伝わってきた。
それには、怯えた雰囲気がどこかあり、覚悟をして電話をしたようだ。
『あの……』
「今まで大丈夫だった?」
言葉に詰まっている様子の進藤に私から声をかけた。
『その、ごめんなさい。勝手に辞めてしまって、他にも色々ご迷惑をかけてしまって』
電話の様子から察していたが、彼女は私に謝るつもりだったようだ。
あの件に直接触れなかったのは、怖くてとても口に出せなかったからだろう。
「私こそ、ごめんね。追い詰めちゃって」
進藤が会社に来れなくなったのは間違いなく私が追い討ちをかけたからだ。
彼女の事を許さなくても、仕事を奪う権利は私にはなかった。とても後悔していた。
『そんな、私が勝手に勘違いして凛子さんに嫌がらせしたんです。どうしても謝りたくて』
進藤は私が謝った事すら申し訳なく感じたのか懺悔を始めた。
『水津さんに優しくされたから勝手に勘違いしてたんです。指摘されて落ち着いてようやくその事に気がついたら、凛子さんにしたことが怖くなって』
「うん」
『勘違いで凛子さんにあんなに酷い事をして、本当にごめんなさい』
進藤は冷静になって自分のしたことの大きさに気がついたようだ。
彼女の本質はとても素直でまっすぐなのだろう。声は似ていてもやはり彩那とは違った。
私も進藤が会社に来なくなって、自分のした事の大きさに恐怖した。
「いいのよ。こっちこそ、ごめんなさい」
『凛子さんの事好きでした。今も、それなのにそんな事も忘れて本当にバカみたい。大切な仕事も人間関係までダメにしちゃって』
「今は何をしてるの?」
『新しいところで働いています。そこもいいところで……」
「そう、今、楽しい?」
『楽しいです。とても』
進藤の声は憑き物がとれたように明るくて、私の気分も同じように明るくなっていった。
しばらく私達はお互いの事を話して『またどこかで会えたら、そのときは』と電話を切った。
「良かった」
私は安堵して胸を撫で下ろした。彼女がそれなりに楽しくやっている事を知ることができたから。
進藤を追い詰めてしまった責任をずっと感じていた。それに目を向ける事ができなかったけれど。
また、出会えたらきっと彼女と話ができるような気がした。
進藤は前を向いて幸せにしている。それを聞くだけで関係のない私ですらも前を向ける気がした。
スマホをしまおうとしてディスプレイをふと見ると、無数の非通知着信音の表示の上に進藤の名前が表示されていた。
それに、お互いに回り道をしすぎてしまったなと苦笑いを浮かべる。
私はスマホを鞄の中にしまって、前を向いて歩こうとした瞬間だった。
人が一人隠れられるような柱から、人が飛び出てきて、そのまま、私に突進してきた。
周囲には誰もいなかったのに、電話をしていて気がつかなかった。
「あっ……」
あまりに突然の事だった。
私はそれを避けることが出来なかった。
ドンッと音を立ててぶつかり、その人はすぐに私から離れた。
その衝撃で私はよろめきながら、自分の身体に違和感を持った。
「うっ……!」
何故か左の下腹部に燃え上がるような激痛が走り出した。痛みの根元からは生暖かい液体が溢れ出て服を濡らし始めている。
何が起きているの?
「あっ……!」
その痛みに喘ぐような呻き声をあげて、私は恐る恐る目を向けた。
お腹には深々とナイフが刺さっている。そこからはじわじわと血が滲み出ていた。
「え、あぁ」
痛みで私の膝に力が入らず私はその場に膝をついた。
「うふふふふ、無様ね、芋虫みたいに跪いてよ」
私にぶつかってきた女は甲高い声で笑いだした。
「あ、あや……な?」
それは、長年私を苦しめ続けた忘れられない人物の声だった。
「アンタが姉だなんて吐き気がするわ」
彩那の甘やかな声は神経毒のように、私の心を蝕み正常な思考を奪う。
涙で視界が滲む。彩那が出てきた柱から居ないはずの人影が動くのが見えた気がした。
『ねえ、隼人さん早く来て』
「水津くん……?」
水津は私を嘲笑うように笑みを浮かべていた。
二人は美しい蝶が求愛するように、腕を絡めて抱き締めあい。そして、私に見せ付けるように口づけを交わした。
視界は滲むのに、なぜか、二人だけは鮮明によく見える。
ねっとりと舌を絡ませ合う姿は、私など見えずにその世界に酔いしれているようだった。
「あは、はははは」
私の口から乾いた笑い声が出てきた。もう、訳がわからない。気が狂いそうだ。
「はははは……あは」
自分の笑い声のせいで、刺された腹部が痛んだ。そんなのどうでもよかった。
この状況をみてようやく私は水津の意図を理解した。
今まで彼は何もしなかったのは、この瞬間を狙っていたのだ。
芋虫のように這いつくばって無様に死ぬ私を見下ろして嘲笑う為に。
私の笑い声を聞いた二人は、美しい顔を愉しそうに歪めてこちらを見ていた。
~~~~
お読みくださりありがとうございます
改稿に時間がかかっていて、結末はほぼ変わらないんですけど
台詞回しなどを変えたくて、更新が未定です
コンテスト期間内には完結させたいです
頑張ります
よきよさん
何度も誤字指摘ありがとうございます
「凛子さん。この後、飲み直しますか?」
同僚達は解散を始めていて、私に挨拶をして帰って行く。
柏木が飲み直そうと誘ってきた。それもいいなと思ったが、水津との件を思い出して止めた。柏木との関係を壊すのは嫌だから。
私は柏木に感謝していた。水津への思いを少しでも忘れることができたのも、また人を信じてみようと思えたのも彼のおかげだから。
何も柏木は知らないのに、私の事を友達として支えてくれた。
誰も信じられなくて前に進めなくても、ずっと待ってくれたのは彼だった。
私の都合で辞めると話した時だって、彼は自分の負担が増えるのがわかっていても止めなかった。
一緒にお昼を食べてくれたのもきっと、私に食欲がないことに気がついていたからだと思う。
彼が私の事を大切な友達だと思っているのと同じように、私も彼のことを思っている。
「今まで本当にありがとう」
私は柏木に心からお礼を言った。
「ごめんなさい、思っていたよりも酔いが回っちゃって、今日はこのまま帰るね」
「え?」
せっかく誘ってくれたのに飲み直す気分にはならなくて、その申し出を断ると残念そうに柏木は私を見た。
「さすがに立つ鳥跡を濁したらマズイでしょ?」
私が悪戯っぽく笑うと彼は困ったように笑った。
今日じゃなくて別の日にまた会えばいい。時間はたくさんあるのだから。
「また逢いましょう?連絡するから。次は二人で飲もう!」
私が次の約束を取り付けると彼は驚いたような顔をする。まるで、もう誘われないと思っていたように。
「はい」
彼が嬉しそうに返事したのを見て「またね」と挨拶をしてそのまま別れた。
「さあ、帰ろう」
私はアパートに帰ろうと電車に向かっていた。人気のない地下通路は建物の中なのにいつも風が吹き抜ける。
それが、冬の海風のように強く感じる。
「なんだか、海に来たみたいね。音もすごいわ」
そんな事を呟きがながら歩いていると着信音がした。
その音は通路の中をこだまするように不気味に響く。
恐る恐るディスプレイを確認するとそこには『進藤』と表示されている。
「……どうしよう」
少し逡巡するが、すぐに答えは見つかった。今なら彼女と向き合える気がした。
スマホを手に取るとふうと大きく息を吐き。通話のボタンを押した。
「もしもし」
『あ……』
その高い声は彩那の事を少しだけ思い出す。
「進藤さん?」
『はい』
私が彼女の名前を呼ぶと電話越しでもビクリとしたのが伝わってきた。
それには、怯えた雰囲気がどこかあり、覚悟をして電話をしたようだ。
『あの……』
「今まで大丈夫だった?」
言葉に詰まっている様子の進藤に私から声をかけた。
『その、ごめんなさい。勝手に辞めてしまって、他にも色々ご迷惑をかけてしまって』
電話の様子から察していたが、彼女は私に謝るつもりだったようだ。
あの件に直接触れなかったのは、怖くてとても口に出せなかったからだろう。
「私こそ、ごめんね。追い詰めちゃって」
進藤が会社に来れなくなったのは間違いなく私が追い討ちをかけたからだ。
彼女の事を許さなくても、仕事を奪う権利は私にはなかった。とても後悔していた。
『そんな、私が勝手に勘違いして凛子さんに嫌がらせしたんです。どうしても謝りたくて』
進藤は私が謝った事すら申し訳なく感じたのか懺悔を始めた。
『水津さんに優しくされたから勝手に勘違いしてたんです。指摘されて落ち着いてようやくその事に気がついたら、凛子さんにしたことが怖くなって』
「うん」
『勘違いで凛子さんにあんなに酷い事をして、本当にごめんなさい』
進藤は冷静になって自分のしたことの大きさに気がついたようだ。
彼女の本質はとても素直でまっすぐなのだろう。声は似ていてもやはり彩那とは違った。
私も進藤が会社に来なくなって、自分のした事の大きさに恐怖した。
「いいのよ。こっちこそ、ごめんなさい」
『凛子さんの事好きでした。今も、それなのにそんな事も忘れて本当にバカみたい。大切な仕事も人間関係までダメにしちゃって』
「今は何をしてるの?」
『新しいところで働いています。そこもいいところで……」
「そう、今、楽しい?」
『楽しいです。とても』
進藤の声は憑き物がとれたように明るくて、私の気分も同じように明るくなっていった。
しばらく私達はお互いの事を話して『またどこかで会えたら、そのときは』と電話を切った。
「良かった」
私は安堵して胸を撫で下ろした。彼女がそれなりに楽しくやっている事を知ることができたから。
進藤を追い詰めてしまった責任をずっと感じていた。それに目を向ける事ができなかったけれど。
また、出会えたらきっと彼女と話ができるような気がした。
進藤は前を向いて幸せにしている。それを聞くだけで関係のない私ですらも前を向ける気がした。
スマホをしまおうとしてディスプレイをふと見ると、無数の非通知着信音の表示の上に進藤の名前が表示されていた。
それに、お互いに回り道をしすぎてしまったなと苦笑いを浮かべる。
私はスマホを鞄の中にしまって、前を向いて歩こうとした瞬間だった。
人が一人隠れられるような柱から、人が飛び出てきて、そのまま、私に突進してきた。
周囲には誰もいなかったのに、電話をしていて気がつかなかった。
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「うっ……!」
何故か左の下腹部に燃え上がるような激痛が走り出した。痛みの根元からは生暖かい液体が溢れ出て服を濡らし始めている。
何が起きているの?
「あっ……!」
その痛みに喘ぐような呻き声をあげて、私は恐る恐る目を向けた。
お腹には深々とナイフが刺さっている。そこからはじわじわと血が滲み出ていた。
「え、あぁ」
痛みで私の膝に力が入らず私はその場に膝をついた。
「うふふふふ、無様ね、芋虫みたいに跪いてよ」
私にぶつかってきた女は甲高い声で笑いだした。
「あ、あや……な?」
それは、長年私を苦しめ続けた忘れられない人物の声だった。
「アンタが姉だなんて吐き気がするわ」
彩那の甘やかな声は神経毒のように、私の心を蝕み正常な思考を奪う。
涙で視界が滲む。彩那が出てきた柱から居ないはずの人影が動くのが見えた気がした。
『ねえ、隼人さん早く来て』
「水津くん……?」
水津は私を嘲笑うように笑みを浮かべていた。
二人は美しい蝶が求愛するように、腕を絡めて抱き締めあい。そして、私に見せ付けるように口づけを交わした。
視界は滲むのに、なぜか、二人だけは鮮明によく見える。
ねっとりと舌を絡ませ合う姿は、私など見えずにその世界に酔いしれているようだった。
「あは、はははは」
私の口から乾いた笑い声が出てきた。もう、訳がわからない。気が狂いそうだ。
「はははは……あは」
自分の笑い声のせいで、刺された腹部が痛んだ。そんなのどうでもよかった。
この状況をみてようやく私は水津の意図を理解した。
今まで彼は何もしなかったのは、この瞬間を狙っていたのだ。
芋虫のように這いつくばって無様に死ぬ私を見下ろして嘲笑う為に。
私の笑い声を聞いた二人は、美しい顔を愉しそうに歪めてこちらを見ていた。
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お読みくださりありがとうございます
改稿に時間がかかっていて、結末はほぼ変わらないんですけど
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