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その6
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頭の中で色々と考えを巡らせて、それなりの号令を考え付いた。
「聖なる魂を求める民の元へ向かう度を始めたいと思います。場所は北のアガンツ。カーティス伯爵の元へ向かい、出発!」
別にこだわらなくても、私が出発とさえ言えば、それで大丈夫なようだった。
馬車を操るのは、近衛師団の軍人二人である。皇帝陛下の盾と呼ばれるほど、強靭な肉体と判断力を兼ね備えているらしい。まあ、いくら強くても私には敵わない……いや、何でもない。
私は道中、何もすることがない。護衛の必要は本来ないのだ。ただでさえ人を寄せ付けない聖女のオーラに加え、聖女の分身とされる王家の小刀を持ち合わせているので、世界に存在する全ての生物が味方になる。でも、彼らの好意を裏切るわけにはいかないから、そのことは特に言わないでおく。
王都を出ると、すぐに険しい山道が始まる。北の地は天に最も近い場所として有名である。地図によると、アガンツ地方は、限りなく最北端に近い。私の想像では、美しい氷の世界が果てしなく広がっている。悪くない。早く見てみたい。好奇心も旅の味方だ。
「これほどの山道は、少し不気味だなあ……」
皇帝陛下は歩きながら、軍人たちに声をかけた。
「いつどこから、私たちを狙う者が現れるかもしれないから、用心するように!」
そう呼びかけた。
「お任せください。命に代えてでも、聖女様と皇帝陛下をお守りいたします!」
力強い軍人の決意は、中の私にもよく聞こえた。本当に頼もしかった。
「おおう、その勢いで頼むぞ!」
皇帝陛下も、喜んでいた。
だが、私は彼らよりも早くに、人の気配を感じた。険しい山道を、反対の方向から勢いよく駆け下りてくる。ひょっとして、子供だろうか?私は皇帝陛下と軍人たちに指示を出した。
「間もなく向こうから誰かがやってきます。あなたたち二人は、一応攻撃の準備をしてください。皇帝陛下は、馬車の後ろで待機してください。私が指示を出すまで、3人とも動かないように」
「聖女様。敵でしょうか?」
皇帝陛下は少し怖気づいていた。無理もない。万が一、大軍が押し寄せてきたら、普通に考えれば、ここで死ぬことになるからだ。まあ、私がいる限りそれはありえないんだけど。
落ち葉をかき分ける足音が、少しずつ大きくなり、3人の耳元にも届くようになった。軍人たちは、敵が来る方向にそれぞれピストルを構えた。皇帝陛下も、自ら剣を抜いた。
「間もなくやってきます。みんな、用心して!」
私も懐にしまった小刀を取り出して、来客の準備をした。
「聖なる魂を求める民の元へ向かう度を始めたいと思います。場所は北のアガンツ。カーティス伯爵の元へ向かい、出発!」
別にこだわらなくても、私が出発とさえ言えば、それで大丈夫なようだった。
馬車を操るのは、近衛師団の軍人二人である。皇帝陛下の盾と呼ばれるほど、強靭な肉体と判断力を兼ね備えているらしい。まあ、いくら強くても私には敵わない……いや、何でもない。
私は道中、何もすることがない。護衛の必要は本来ないのだ。ただでさえ人を寄せ付けない聖女のオーラに加え、聖女の分身とされる王家の小刀を持ち合わせているので、世界に存在する全ての生物が味方になる。でも、彼らの好意を裏切るわけにはいかないから、そのことは特に言わないでおく。
王都を出ると、すぐに険しい山道が始まる。北の地は天に最も近い場所として有名である。地図によると、アガンツ地方は、限りなく最北端に近い。私の想像では、美しい氷の世界が果てしなく広がっている。悪くない。早く見てみたい。好奇心も旅の味方だ。
「これほどの山道は、少し不気味だなあ……」
皇帝陛下は歩きながら、軍人たちに声をかけた。
「いつどこから、私たちを狙う者が現れるかもしれないから、用心するように!」
そう呼びかけた。
「お任せください。命に代えてでも、聖女様と皇帝陛下をお守りいたします!」
力強い軍人の決意は、中の私にもよく聞こえた。本当に頼もしかった。
「おおう、その勢いで頼むぞ!」
皇帝陛下も、喜んでいた。
だが、私は彼らよりも早くに、人の気配を感じた。険しい山道を、反対の方向から勢いよく駆け下りてくる。ひょっとして、子供だろうか?私は皇帝陛下と軍人たちに指示を出した。
「間もなく向こうから誰かがやってきます。あなたたち二人は、一応攻撃の準備をしてください。皇帝陛下は、馬車の後ろで待機してください。私が指示を出すまで、3人とも動かないように」
「聖女様。敵でしょうか?」
皇帝陛下は少し怖気づいていた。無理もない。万が一、大軍が押し寄せてきたら、普通に考えれば、ここで死ぬことになるからだ。まあ、私がいる限りそれはありえないんだけど。
落ち葉をかき分ける足音が、少しずつ大きくなり、3人の耳元にも届くようになった。軍人たちは、敵が来る方向にそれぞれピストルを構えた。皇帝陛下も、自ら剣を抜いた。
「間もなくやってきます。みんな、用心して!」
私も懐にしまった小刀を取り出して、来客の準備をした。
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