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その10

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「聖女様!」

私が攻撃されたのを黙っているわけにはいかないようだった。皇帝陛下は剣を抜き、軍人2人はピストルを構えた。

「この者は聖女様に対する反撃者です。従いまして、この場で処刑したいと存じます!」

皇帝陛下がこう言うと、カーティス伯爵の侍従と名乗る男は、ぷっ、と噴き出した。

「俺を裁くだって?おかしなことを言わないでくれ!俺を裁けるのは、そうだな、こちらにいらっしゃるお嬢さんと、伯爵くらいだろうよ!」

どうやら、この男は、目の前にいるのが皇帝陛下であることを知らないようだった。

「聖女様って言うのか?はあ、どうりで手が出せないわけだ。俺は夢でも見ているのかなあ……。そうに違いない。これは全部朽ちた夢なんだ。そうでなければ、こんなことにはならないよな……。はあ、早く夢から覚めないかな……」

「これは夢ではありません。現実に向き合わないといけません。さあ、私に話してください。何かお手伝いできることがあるかもしれませんからね。ああ、ちなみに、ここにいる男も力を貸してくれますよ。ねえ、皇帝陛下」

私が、皇帝陛下と呼んだので、男は急に眼の色を変えた。

「それじゃ……あなた様は?」

「ええ、間違いなく皇帝陛下よ」

「すると、あなた様は?」

「この世界の神である聖女様だ」

皇帝陛下がこう言って、男は畏まった。

「失礼いたしました!どうか、お許し下さいませ!」

「ダメだ!貴様を赦すわけにはいかない。聖女様に対する叛逆は、最も重い罪である。だから、貴様を生かしておくわけにはいかない!」


「皇帝陛下、お待ちなさい」

いきり立つ皇帝陛下を、今度は私が制止した。

「この者は何も知らないのです。それなのに、どうして罪とすることができましょうか?私たちはカーティス伯爵を救済するために旅をしてきたのですよ?きっと、何か関係があるのでしょう?どうして、あなたはそうやってすぐいさかいを起こそうとするのですか?」

「承知いたしました。お詫び申し上げます」

「よろしい。さあ、この町に何が起きているのか、全て説明してくださるかしら?」

男はこくりと頷いて、話し始めた。

「全ては、聖女と名乗る女がやって来たことから始まったのです。カーティス伯爵様がこの女と交わりを持ったことから、この町が崩壊を始めたのです」



聖女と名乗る女……私はイヤな予感がした。すぐさま皇帝陛下に頼んで、王都に連絡を入れた。



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