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その10

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これは夢の世界に入って、きっと誰かが語りかけている…振り返ればそんな気がしたのだ。
「これから君のことを幸せにしよう」
……誰かがそう語りかけた。それからしばらくして、わたしは解放された。
「姫様。お疲れ様でした」
「ええ、ありがとう。……でも、まだ終わってないわよね? この後、ダンスもあるし、それに、挨拶回りもしないといけませんものね。……気が重いですわ」
「姫様。頑張ってください」
「わかっているわ」
「では、私はこれで失礼します」
「ええ、また後で会いましょう」
「はい」
「……」
……わたしは、一人になった。
「レイラ様」
「あら、あなたは確か、ロランさん」
「覚えていてくれたのですね」
「はい」
「先ほどは、お見苦しいところを見せてしまいました。申し訳ありません」
「気にしないでください。誰だって、苦手なものの一つや二つはあります」
「……」
「……それで、何か用ですか?」
「実は、私と踊っていただけないかと思いまして」
「……」……わたしは考えた。……この人と踊るメリットは、あるだろうか。
いや、おそらくないだろう。私はそう思った。
「すみません。せっかくのお誘いなのですが、お断りさせていただきます」
「理由を聞いてもよろしいですか?」
「はい。わたしには、婚約者がおりますので、他の男性とは、あまり親しくなりたくないのです」
「……」
「では、わたしは、もう行きます」
「待ってください」
「何でしょうか?」
「一つ聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「答えられることでしたら」
「では、質問します。……レイラ様にとって、愛とは何でしょうか?」
「……わたしが思うに、その人のことを一番大切に思えることではないかと思います」
「なるほど。参考になりました。ありがとうございます」
「いえ、どういたしまして」
「……」
「……」
「……最後に、もう一つ聞いても良いですか?」
「どうぞ」
「……レイラ様は、今の生活に満足していますか?」
「どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味ですよ」
「……」
「……」
「……正直に言うと、少し不満はあります」
「そうですか。ちなみに、どのようなところが?」
「そうですね。まず、毎日、図書館に行って、本を読むくらいしかやることがないのは退屈ですし、それに、たまに街に出かけた時も、一人で買い物をするだけですからね。あとは、やはり、結婚相手がいないというのも寂しく感じますね」
「そうですか。わかりました。貴重な意見をありがとうございます」
「いえ、どういたしまして」
「……」
「……」
「……そろそろ時間ですので、私はこれで失礼します」
「はい。さようなら」
「……」
「……」……こうして、舞踏会は終了した。
「姫様。お疲れ様でした」「ええ、本当に疲れたわ」
「姫様。この後、予定が詰まっておりますが、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」
「では、参りましょう」
「ええ」

「姫様。着きました」
「ここね」
「はい」
「……」
「……」
「姫様。頑張ってください」
「ええ、わかっているわ」
「それでは、行ってきなさい」
「はい」
「……」
「……」
「……姫様。頑張って下さい」
「ええ、頑張るわ」
「あら、そうなんですか?」「ええ、そうです」
「……」
「……」
「……それなら、仕方ないですね」
「ええ、そうなんですよ」
「……」
沈黙が始まろうとしていた。
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