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さて、正式な婚約発表とかそういう物はなくて……内内に婚約協議がなされた。

「閣下……あの……」

「ああっ……」

「これからどうしますか?」

「ああっ……」

「あの……それでは分かりませんが……」

「ああっ……」

閣下は何も言わない。何をしたいのか言わない。表情を変えない。私は思わずベルを鳴らしてしまう。すると、ローズが飛んでくる。

「お呼びですか、ハレー様」

「ええ、これで何回目かしらね……」

「えっと……83回目ですかね」

「じゃあ、お願いするわね」

「かしこまりました」

ローズが閣下を一瞬見つめる。すると、答えを教えてくれるのだ。

「閣下はお手洗いに行きたいと……」

ローズがこう言うと、閣下は立ち上がりトイレに向かった。ローズが83回証言をすると、次の瞬間、答え通りの行動をする。

「ねえ、どうして分かるの?」

「いいえ、タマタマですよ」

「たまたまで83回も合致することはないと思うけどね……」

「ハレー様?そんなことよりも、もっとお話をした方がいいですよ。お妃様もおっしゃっていたでしょう。早くお子様を作らないと……追い出されてしまいますわよ、あるいは……新しい婚約者を作ってしまうとか……」

「ローズ?あなた、本気で言っているの?あんなお方に婚約者ができるだなんて……」

「ハレー様?あなたの旦那様はこの国の第一王子ですよ」

「…………」

「ええ、そう言うことです。ですから……なぎ倒してでも、子供を作らないと。因みに、私の予想では閣下はやる気マンマンみたいですよ?」

そんなことまで正確にいい当てる……一体、ローズはどんな能力を持っているのだろう。

ひょっとして、私が今後歩む未来を全て見通しているのだろうか。私は物語の週末を知りたがるタイプだ。途中過程は正直どうでもいいと言うか。まあ、そんなところなんだ。

「ハレー様。自分の人生は自分で切り開くものですよ」

また先生みたいに……彼女は私の心まで読めるのだろうか。

「まあ、まずは子供を作らないと。今夜誘ってみてはいかがですか」

婚約が内定して……私がこの王宮にやって来て3日前のこと。いきなり大チャンス、らしい。

因みにこの王宮での生活は結構充実仕手いる。というのも、ローズがあまりにも優秀過ぎて私が今何をしたいのか……食事とか、散歩とか、読書とか、後は閣下の考えを聞くとか、全て先回りして行動してくれるものだから。いや、これほど優秀なメイドはいないでしょう。

「ベッドメイキングは完璧ですからね。さあ、後はハレー様が踏み出すだけですよ。あと……魅力的な衣装もご用意させていただきましたから。因みに、閣下はトイレで動向を確認されているようですから……」

「ああ、あなたは何でもお見通しなのね……」

私は動揺していた。でも迷う暇はなかった。ローズが準備した、大部過激な衣装に身を包み、閣下との夜を待つことにした。
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