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「失礼ですが……」
ピーター将軍は常にへりくだっていた。こういう態度を見せていると、怪しまれることもないのだ。そして、彼は変装も上手だった。友好国の王子が不意の来訪でやってきた……というストーリーにでもすれば完ぺきだったのだ。
「ザイツ殿ですね、お久しぶりです!!!」
こうして、ピーター将軍はザイツ様のいる部屋まで侵入することに成功したのだった。
「あなたは……どちら様でしたっけ」
ザイツ様のリアクションは、結果として正しいことだった。でも、この時は本当にわからなかったようだ。
「ひょっとして、私のことを忘れてしまったのですか。あなた様がまもなく皇帝陛下に即位なさると聞いて……友好国の代表として参上いたしましたよ」
「友好国、そうか、あなたはスミス王子ですね???」
「その通りです。ようやくお気づきになられましたか……」
スミス王子というのは、当然のことながら実在する王子のことだ。確かに、ピーター将軍の変装があまりにも完璧であったため、誰も見分けがつかなかったわけだ。
「それはそれは、わざわざお越しいただきましてありがとうございます」
ザイツ様はピーター将軍に対してお礼を言った。
「このたびはおめでとうございます」
ピーター将軍はできるだけの誠意を見せた。
「いやいや……ありがとうございます」
ザイツ様は謙遜してしまった。
「ところで……スミス王子はこの情報をどこでお聞きになったのでしょうか」
ザイツ様の横に控えているシュード子爵が、ピーター将軍に質問をした。それもそのはず、この件については正式に連絡されていることではなかったから。ピーター将軍は内心困ったかもしれない。でも慌てることはなかった。
「それは、風の便りに乗って来たんですよ……」
「風の便り……ですか……」
当然のことながら、シュード子爵は納得できていないようだった。
「まあまあ、そんな事はいちいち気にしなくてもいいんじゃないかな」
ザイツ様はそう言い放った。ピーター将軍にとっては、非常に好都合だった。
「そうですね。ああ、それではこれからお祝いしましょうか。簡単ではありますが。ささやかなお祝い品を……ここで披露させていただきましょう……」
ピーター将軍はそう言って、カバンから茶葉を取り出した。
「我が国の特産品なのです。さあさあ、ぜひご賞味あれ!!!!!」
ピーター将軍はそう言って、お茶を入れ始めた。この様子を不審がっていたのはシュード子爵のみだった……。
ピーター将軍は常にへりくだっていた。こういう態度を見せていると、怪しまれることもないのだ。そして、彼は変装も上手だった。友好国の王子が不意の来訪でやってきた……というストーリーにでもすれば完ぺきだったのだ。
「ザイツ殿ですね、お久しぶりです!!!」
こうして、ピーター将軍はザイツ様のいる部屋まで侵入することに成功したのだった。
「あなたは……どちら様でしたっけ」
ザイツ様のリアクションは、結果として正しいことだった。でも、この時は本当にわからなかったようだ。
「ひょっとして、私のことを忘れてしまったのですか。あなた様がまもなく皇帝陛下に即位なさると聞いて……友好国の代表として参上いたしましたよ」
「友好国、そうか、あなたはスミス王子ですね???」
「その通りです。ようやくお気づきになられましたか……」
スミス王子というのは、当然のことながら実在する王子のことだ。確かに、ピーター将軍の変装があまりにも完璧であったため、誰も見分けがつかなかったわけだ。
「それはそれは、わざわざお越しいただきましてありがとうございます」
ザイツ様はピーター将軍に対してお礼を言った。
「このたびはおめでとうございます」
ピーター将軍はできるだけの誠意を見せた。
「いやいや……ありがとうございます」
ザイツ様は謙遜してしまった。
「ところで……スミス王子はこの情報をどこでお聞きになったのでしょうか」
ザイツ様の横に控えているシュード子爵が、ピーター将軍に質問をした。それもそのはず、この件については正式に連絡されていることではなかったから。ピーター将軍は内心困ったかもしれない。でも慌てることはなかった。
「それは、風の便りに乗って来たんですよ……」
「風の便り……ですか……」
当然のことながら、シュード子爵は納得できていないようだった。
「まあまあ、そんな事はいちいち気にしなくてもいいんじゃないかな」
ザイツ様はそう言い放った。ピーター将軍にとっては、非常に好都合だった。
「そうですね。ああ、それではこれからお祝いしましょうか。簡単ではありますが。ささやかなお祝い品を……ここで披露させていただきましょう……」
ピーター将軍はそう言って、カバンから茶葉を取り出した。
「我が国の特産品なのです。さあさあ、ぜひご賞味あれ!!!!!」
ピーター将軍はそう言って、お茶を入れ始めた。この様子を不審がっていたのはシュード子爵のみだった……。
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