最愛の旦那様に先立たれて～もう誰も愛せない～

ニックという友人

「もう少し気楽に生活すればいいんだよ……」

　ニックは姉のルーチアと共に農作業に明け暮れていました。帰る宛てのなくなった私はしばらく厄介になることになりました。

「何か手伝うことはないかしら？」

「そんなこと言ったって……あなたみたいな上流のお嬢様は土いじりなんてしたことないでしょう？」

「まあ、それはそうだけど……」

「だから、何もしなくていいよ。見ていれば……」

　確かに農作業はできませんで、精々話し相手になるのが関の山でした。

「気楽に生活……なるほど、こんな生活も悪くないわね……」

　私は言いました。

「深く考えることはない。怒りを感じたら、そのまま殴る、自然の摂理に任せたらそれで解決するだろうさ」

「ニック……あなたってなかなか情熱的なのね……」

　ニックと話を続けるうち、私は段々と感情を表出することができるようになりました。実家にいた頃は絶対に出来ませんでした。だって、お父様やお母様は許しませんでしたから。

「そんなこと言われたら……ひょっとして君の新しい旦那に立候補してもよかったり？」

「ニック？あんまり調子に乗らないの……」ルーチアがニックを注意しました。

「なるほど……それも悪くないかも……」私はある程度本気でした。

「おいおい、本気かよ……」ニックは言いました。

「レイチェル……本気にしないでね。確かに、ニックは絶賛婚約者を募集中だけど、あなたのようなお嬢様と釣り合う男じゃないから……」ルーチアは言いました。

「あら、私に釣り合うか釣り合わないかは、私が決めることじゃない？確かに、彼は魅力的じゃない？」

「いいね、お姉様。これで公爵家の仲間入りだ！！！」

　話はとんとん拍子で進む……少なくとも、彼よりはましだと思いました。そんな彼がまさか、私を追いかけてやって来ているなんて知りませんでしたけどね……。