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初夜 ⑦

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「僕は初夜にどういうことをするのか、読んだ一冊の本の中のことしかわかりません。アレク様が望まれていることができないかもしれませんが、僕のこと、知って……いただけませんか?」
 今からどんなことが待っているのか、胸は不安で押しつぶされそうだ。

 恥ずかしさから俯き耳の裏まで赤くなっていると思う。
 震える手で袖から腕をゆっくり抜くと、脱いだ服をストンと服を床に落とし胸と楔を手で隠した。

「……」
 俯いていて、アレク様がどんな顔をされているか検討もつかない。

 でも息を飲む気配は感じた。
 アレク様も不安なのだろうか?
 じゃあ僕が頑張らないと……。

 胸と楔を隠したまま僕は脱いだ服を跨ぎ、目を見張るアレク様に、一歩また一歩と近づく。
「僕はアレク様に……全てを……捧げます……」
 緩く束ねていた髪留めをするすると外すと、僕の身体にさらさらと輝くような金色の髪が流れ落ちてきて、ピンク色の乳首を隠す。
 そして小説の挿絵であった女性のように、アレク様の首に両腕を回す。

「ユベール……」
「僕を知ってください」
 一瞬たりともアレク様は僕から目を離さない。

 僕もアレク様のルビーのようにどこまでも美しい瞳から、目が離せない。
 どちらともなく吸い寄せられるように唇に近づき、唇と唇を合わせた。

 数秒唇を合わせ離す。
 離れたくない。
 僕は自ら唇を合わせる。
 口付けというより、唇と唇を微かに合わせるだけの行為。

 唇を合わせるたびにアレク様からする爽やかな香りと唇の柔らかさに、頭はぼ~っとしてくる。 

 なんだかとても……気持ちいい……。 

「アレク……様……」
 アレク様に近づこうと無意識のうちに僕は首に回した腕の力を強める。

「本当に、いいのか……?」
 アレク様が僕の肩を掴んだかと思うと、ドサっとベッドに押し倒され覆い被さられる。
 口調は優しいが、瞳の奥には今にも僕を食い尽くすしてしまいそうな鋭い光を宿している。

 どうなってしまうのだろう?
 おかしくなってしまうのだろうか?
 怖いものなのだろうか?痛いものなのだろうか?

「優しく……してくださいますか?」
「ああ、優しくする。怖い思いなどさせない。ユベールの初めてを、俺に預けて欲しい」

 僕の額にアレク様が優し口付けをする。
 その口付けが胸の中にあった不安が溶かしてくれる。

 僕はアレク様の問いかけにコクリと頷く。
「ユベール……」

 アレク様の唇と僕の唇がまた重なる。
 アレク様の舌が僕の上唇と下唇の間に入ってきて、口内を舌でくまなく舐められる。
 気持ちよくて、夢中でアレク様の舌と僕の舌を絡めようとするが、すぐさまアレク様の舌は僕の舌を絡めとる。

 くちゅりくちゅりっと唾液が混ざる音がし、口内をくまなく刺激された。

「ン……んン……」

 息がうまくできない。
 頭の中は真っ白になっていき、そのまま意識を手放しそうになった時、ようやくアレク様は僕から離れた。
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