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第四話 地獄は突然やってくる (8)
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突き刺したわたしの剣を軸として、十字が歪みながら回転を始め、そして光の渦となった。
光の渦はわたしの剣に吸い込まれるように収縮する気配を見せたが、押し合う力は間も無く限界を迎え、弾けた。
そして渦は放たれ、光の濁流となって迫る花々を飲みこんだ。
濁流の勢いは止まらず、花々を飲み尽くしながらブルーンヒルデさんのところにまで到達するように見えたが、
「!」
直後、崖の上から一つの影が濁流の前に降り立った。
長身の影は着地すると同時に腕を振るい、光の線を走らせた。
直後に濁流が長身の影を飲みこんだ。
光魔法の炸裂音と、金属音が連続かつ高速で響き渡る。
長身の影が何本もの光の線を描いている。この音はその線と濁流がぶつかり合って生じたもの、それをわたしは感じ取れた。
そして線と濁流のぶつかり合いは終わり、長身の影は何事も無かったようにそこに立っていた。
影に月光が差し、目と目が合う。
その目にわたしは恐怖し、絶望した。
月光が広がり、影の全身が明らかになる。
その人はやはりヴィーさんだった。
だからわたしは絶望した。
ブルーンヒルデさんだけじゃなくヴィーさんまで敵になった。そしてヴィーさんはわたしの最大の攻撃を剣一本で難無く切り払った。その事実は絶望しか生まなかった。
気付けば、剣を握るわたしの両手は震えていた。
その震えにわたしの心が屈しそうになった瞬間、
「合格だ」
ヴィーさんはそう言った。
え? 合格?
一瞬、意味がわからなかった。
(えぇっと、つまり、これはテストだったっていうこと?)
わたしの心を読んでいたらしく、ヴィーさんはその問いに答えた。
「ああ、そうだ。これはお前のいまの実力を試すテストだ。だから全部演技なんだ。敵なんて来ちゃいない」
その言葉に、抑え込んでいた感情があふれてきた。
「ふえええええぇええん」
わたしは泣いた。
泣き出したわたしに、ブルーンヒルデさんは駆け寄り、抱き締めてくれた。
ブルーンヒルデさんはわたしの頭をなでながら慰めてくれた。
「顔、痛かったでしょう? ごめんなさいね。わたしの体はあいつに操作されていたから……安心して、ちゃんと跡が残らないように治してあげるから」
他人の体を操作? そんなこともできるの?
そんな疑問が浮かんだけど、いまのわたしはブルーンヒルデさんに甘えること以外なにもする気が起きなかった。
ブルーンヒルデさんの胸に顔をうずめて、しがみつく。
ああ……ふかふかで落ち着く。ぐすっ。
甘えるわたしを撫でながら、ブルーンヒルデさんは再び口を開いた。
「でもアイリス、よけられない攻撃がきたら防御魔法を張らないとダメよ。次からは忘れないで」
これに、わたしは答えた。
「防御魔法、まだできないです」
「え?」
わたしの答えは意外だったらしく、ブルーンヒルデさんはヴィーさんに向かって口を開いた。
「防御魔法、教えてないの?」
ヴィーさんは正直に答えた。
「ああ、悪い。忘れてた」
「「……」」
その口調は悪いと思っていないことが明らかな感じだった。
ゆえに、わたし達は言葉を失ったが、ブルーンヒルデさんはすぐに気を取り直して口を開いた。
「あなたという男は……! 今回は運が良かったけど、もしもアイリスの体に消えない傷ができてたらどうするつもりだったの!?」
ブルーンヒルデさんは口を大きく縦に開き、眉を吊り上げながら怒りの声を響かせた。
その表情はなんかネコっぽかった。怒るネコって感じだった。「キシャーー!」って感じ。
だからわたしも同じように、「キシャーー!」って感じで声を上げた。
「そうですよ! 謝って! 悔い改めて!」
が、ヴィーさんにわたし達の怒りは届いていないようであった。
ヴィーさんはやはり悪いと思ってない感じで口を開いた。
「だからもう謝っただろ? それに良かったじゃないか。精霊が使えるようになったんだから」
その言葉に、ブルーンヒルデさんは呆れた表情で口を開いた。
「……はあ。あなたに反省を求めた私が愚かだったわ」
そう言った後、ブルーンヒルデさんはわたしに向かって口を開いた。
「アイリスちゃん、こんな男は放っておいて帰りましょう」
わたしは頷きを返し、ブルーンヒルデさんと一緒に並んで歩き始めた。
直後、
「ところで、最後にお前が放った技、あれは軍隊で教えられているものだと記憶してるんだが、軍人の知り合いでもいるのか?」
と、ヴィーさんがわたしの背中に質問をぶつけてきたが、わたしはこれを無視した。
そんなこんなで、試験は無事に終わった。
第五話 わたし、島を出ます! に続く
光の渦はわたしの剣に吸い込まれるように収縮する気配を見せたが、押し合う力は間も無く限界を迎え、弾けた。
そして渦は放たれ、光の濁流となって迫る花々を飲みこんだ。
濁流の勢いは止まらず、花々を飲み尽くしながらブルーンヒルデさんのところにまで到達するように見えたが、
「!」
直後、崖の上から一つの影が濁流の前に降り立った。
長身の影は着地すると同時に腕を振るい、光の線を走らせた。
直後に濁流が長身の影を飲みこんだ。
光魔法の炸裂音と、金属音が連続かつ高速で響き渡る。
長身の影が何本もの光の線を描いている。この音はその線と濁流がぶつかり合って生じたもの、それをわたしは感じ取れた。
そして線と濁流のぶつかり合いは終わり、長身の影は何事も無かったようにそこに立っていた。
影に月光が差し、目と目が合う。
その目にわたしは恐怖し、絶望した。
月光が広がり、影の全身が明らかになる。
その人はやはりヴィーさんだった。
だからわたしは絶望した。
ブルーンヒルデさんだけじゃなくヴィーさんまで敵になった。そしてヴィーさんはわたしの最大の攻撃を剣一本で難無く切り払った。その事実は絶望しか生まなかった。
気付けば、剣を握るわたしの両手は震えていた。
その震えにわたしの心が屈しそうになった瞬間、
「合格だ」
ヴィーさんはそう言った。
え? 合格?
一瞬、意味がわからなかった。
(えぇっと、つまり、これはテストだったっていうこと?)
わたしの心を読んでいたらしく、ヴィーさんはその問いに答えた。
「ああ、そうだ。これはお前のいまの実力を試すテストだ。だから全部演技なんだ。敵なんて来ちゃいない」
その言葉に、抑え込んでいた感情があふれてきた。
「ふえええええぇええん」
わたしは泣いた。
泣き出したわたしに、ブルーンヒルデさんは駆け寄り、抱き締めてくれた。
ブルーンヒルデさんはわたしの頭をなでながら慰めてくれた。
「顔、痛かったでしょう? ごめんなさいね。わたしの体はあいつに操作されていたから……安心して、ちゃんと跡が残らないように治してあげるから」
他人の体を操作? そんなこともできるの?
そんな疑問が浮かんだけど、いまのわたしはブルーンヒルデさんに甘えること以外なにもする気が起きなかった。
ブルーンヒルデさんの胸に顔をうずめて、しがみつく。
ああ……ふかふかで落ち着く。ぐすっ。
甘えるわたしを撫でながら、ブルーンヒルデさんは再び口を開いた。
「でもアイリス、よけられない攻撃がきたら防御魔法を張らないとダメよ。次からは忘れないで」
これに、わたしは答えた。
「防御魔法、まだできないです」
「え?」
わたしの答えは意外だったらしく、ブルーンヒルデさんはヴィーさんに向かって口を開いた。
「防御魔法、教えてないの?」
ヴィーさんは正直に答えた。
「ああ、悪い。忘れてた」
「「……」」
その口調は悪いと思っていないことが明らかな感じだった。
ゆえに、わたし達は言葉を失ったが、ブルーンヒルデさんはすぐに気を取り直して口を開いた。
「あなたという男は……! 今回は運が良かったけど、もしもアイリスの体に消えない傷ができてたらどうするつもりだったの!?」
ブルーンヒルデさんは口を大きく縦に開き、眉を吊り上げながら怒りの声を響かせた。
その表情はなんかネコっぽかった。怒るネコって感じだった。「キシャーー!」って感じ。
だからわたしも同じように、「キシャーー!」って感じで声を上げた。
「そうですよ! 謝って! 悔い改めて!」
が、ヴィーさんにわたし達の怒りは届いていないようであった。
ヴィーさんはやはり悪いと思ってない感じで口を開いた。
「だからもう謝っただろ? それに良かったじゃないか。精霊が使えるようになったんだから」
その言葉に、ブルーンヒルデさんは呆れた表情で口を開いた。
「……はあ。あなたに反省を求めた私が愚かだったわ」
そう言った後、ブルーンヒルデさんはわたしに向かって口を開いた。
「アイリスちゃん、こんな男は放っておいて帰りましょう」
わたしは頷きを返し、ブルーンヒルデさんと一緒に並んで歩き始めた。
直後、
「ところで、最後にお前が放った技、あれは軍隊で教えられているものだと記憶してるんだが、軍人の知り合いでもいるのか?」
と、ヴィーさんがわたしの背中に質問をぶつけてきたが、わたしはこれを無視した。
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