Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

文字の大きさ
109 / 545
第二章 アリスは不思議の国にて待つ

第十話 神と精霊使い(13)

しおりを挟む
 だったらまずは動作試験だ、アルフレッドはその思いと共に叫んだ。

「ならばやるぞ!」

 叫びながらアルフレッドは二刀を振った。

(一つ!)

 二本の剣閃が十字を描く。
 だが、その十字は前に飛ばず、その場に停滞した。
 魔力を刃から垂れ流しただけ。
 アルフレッドはその置いた十文字から一歩下がりながら、再び二刀を振るった。

(二つ!)

 これも飛ばない。置いただけ。
 さらに一歩さがって、

(三つ!)

 ここが限界。最初の十字が霧散寸前。
 だからアルフレッドは二刀を大きく振りかぶり、前にある三つの十字をすべて吹き飛ばす勢いで、

(重ね十文字四連!)

 四つ目の十文字を放った。
 その四つ目の十文字には工夫があった。
 磁石が引き合うように、光魔法にも引き合う関係が存在する。
 見た目は光っているだけだが、魔法使いは性質が違うものを本能的に切り替えて使っている。
 優秀な感知能力者にはその違いがわかる。本能に頼らずとも、修練による技術で使い分けることが出来る。
 アルフレッドが放った第四の十文字にもその技が活かされていた。
 二本の線が交わる部分、そこは『引き込む力』が強い粒子だけで構成されていた。
 ゆえに、最後に放たれたその十字は、前の三つとぶつかり合いながら、中央に引き込み、吸い込んでいった。
 渦を描きながら収束し、一つの輝く玉となる。
 そこで粒子の群れは対極の力を持つ粒子と混ざりきり、引き込む力のほとんどを使い果たした。
 だが、反発する力はまだまだ残っていた。
 玉の内部では、光の粒子が反発し合っていた。
 ゆえに、その玉は直後に花開くように渦に戻った。
 しかしその形も一瞬。
 渦は瞬時に崩れ、細切れになった。
 まるで小さな三日月の群れのように。
 いや、その形も一瞬で崩れた。
 曲がり、うねる。まるで蛇のように。
 そしてそれは小さな蛇の群れとなった。
 その子蛇達は飢えていた。
 だから目の前の精霊達に食らいついた。
 噛み付き、えぐり、ちぎる。
 引き裂き、なぎ払う。
 嵐のごとき暴虐の限りを尽くしながら前へ前へ。
 その暴行は草木などの障害物にも等しくおよんだ。
 すべてをなぎ払いながらひたすらに前へ。
 蛇の群れが通ったあとには何も残らない。
 そうして蛇達は前方の邪魔者のあらかたをなぎ払ったあと力尽きた。
 嵐のあとにつかの間であろう静寂が訪れる。
 その静寂をアリスが破った。

(今よアルフレッド! 包囲に穴が開いたわ!)

 そこから逃げよう、という思いを含んだ叫び。
 であったが、

(……アルフレッド?)

 アルフレッドはその場から動かなかった。
 アルフレッドは仁王立ちのまま、口を開いた。

「まだダメだ、アリス」

 なぜか。アルフレッドは答えた。

「いま逃げたら、君を助けられない」

 アルフレッドはわかっていた。
 この戦力差ではアリスの本体は一ヶ月ももたないことを。
 さすがのアルフレッドでも、一ヶ月で戻ってくることなど出来ない。
 だからアルフレッドの選択肢は一つしか無かった。
 アルフレッドはそれを声に出した。

「だから今ここで、できるだけ敵の戦力を減らす」

 これにアリスは反論しようとした。
 しかしアルフレッドはそれを遮るように叫んだ。

「さあ、どこからでもかかって来い!」

 それが合図となった。
 敵の精霊達が再び集まり、独自の陣形を組み始める。
 その動きは高速演算を行っているアルフレッドにとってはあまりに遅すぎた。
 だから、

「雄雄ォッ!」

 アルフレッドは雄たけびとともに、精霊達に向かって切り込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

処理中です...