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08.不思議な荷物
「シャナと言ったか。その耳は、もしかして、トゥミックからの避難民か?」
「あ、はい。トゥミックから逃げて来た獣人達で、ちっちゃいコロニーみたいになってるので、そこに人間のユーリを入れるわけにもいかなくて……」
「トゥミックのレーベ将軍が、故国の地に帰って再興を図るつもりだと言っていた。君たちがそれに与力するなら、伝信を飛ばすが?」
「本当ですか!? す、すぐにリーダーに確認をとりますんで、ちょっと待っててくださいっ! あっ、ユーリの荷物もいつもの場所に隠してあるんだよね? ついでに取って来るから!」
猫獣人らしく素早い身のこなしで路地の奥に消えていくシャナを見送ったユーリは、隣のフィルを見上げた。
「あの、ごめんなさい、私、竜人とか番とか疎かったみたいで」
「気にすることではない。……あぁ、でも、少しは好意的に見て貰えると嬉しいのだが」
「……善処します?」
これまでの、どちらかというと恐縮しているような対応とは違い、少しだけ冗談めかした声のトーンでおどけた様子を見せたユーリに、フィルは満足の笑みを浮かべた。
(俺自身が距離を詰めようとしても上手くいかなくて、全く別の第三者から説明されてようやく、というのは残念だが)
それも仕方ないのかもしれない。よくよく思い返してみれば、初対面から攫うように連れ去ったも同然なのだ。終生巡り会えないと思っていた番を見つけた喜びで気が逸っていたとはいえ、強引な手段をとってしまったということは反省せざるを得ない。
「これこれ! お待たせ! あと、さっきの話、リーダーにもう一度してもらってもいいですか?」
慌ただしく戻って来たシャナが抱えていたのは、見慣れない素材の大きな袋だった。つるりと光沢のある薄い袋は揺れる度にガサガサと耳障りな音を立てている、しかも、うっすらとだが中に入っているものが見えるので、袋としての用を為しているのだろうか、とフィルは不思議に思った。
だが、目の前にやってきた獣人の青年を前に、とりあえず宴で将軍と話したこと、戦場でも同じようなことを語っていたことなどを説明する。それでも、耳はユーリの声を拾っていた。
「……うん、大丈夫みたい。ありがとう、シャナ」
「どういたしましてだよ! まぁ、ちょっと汚れてたらごめんね。何か、弟が一回引っ張り出しちゃっててさ」
「仕方ないよ。こんな音するから気になってたみたいだし」
「それでも他人の物に手を出すのはダメでしょ」
ぽんぽんと親しい者同士のやり取りが続くのを、フィルは嫉妬混じりに耳を傾けていた。途中で口を差し挟んで会話を中断させたい、同性とはいえ自分以外の者と親しく喋らないで欲しい、という独占欲をひたすらに我慢する。
「レーベ将軍の足手まといになるのは本意ではありません。復興に我らのような者が力になれるのか、事前に確認できたらと思うのですが」
「ならば、これを使うといい」
リーダーだという青年に、フィルは斜めがけにしていたバッグから紙を数枚と青い石を2つ取り出した。
「魔力がなくとも、これで互いに手紙のやり取りができる。この紙はこちらの石を目印に飛んでいくから、最初だけ俺が石を届ける。後は直接レーベ将軍と話してくれ」
フィルは青い石を魔力で作った鳥に渡し、空へ放った。鳥はレーベ将軍の下へ行き、フィルの声で事情説明という名の伝言をしてくれるはずだ。
「ありがとうございます! まさかレーベ将軍に直接お伺いを立てられるなんて思いもしませんでした! 本当にありがとうございます!」
深々と頭を下げる青年の肩に手を置き、大変なのはこれからだろうと励ましていると、シャナがこちらに気がついた。
「あ、ごめんね。あっちの話も終わったみたい」
「ありがとう、シャナ。シャナに助言してもらわなかったら、私、本当に大変なことになってたと思う」
「困った時はお互い様だよ。気にしないで」
シャナとユーリは、別れを惜しみながら、それでも「元気で」とお互いに気遣いの言葉で会話を終える。もう少し話をさせてあげたい気もするが、書き置き一つで城を飛び出して来た手前、今日中にこの国を出たいのもまた確かだった。
シャナに向かって手を振るユーリを抱き上げたフィルは、再び空へ飛び上がり、一路、東へ向けて翼を広げた。ユーリの抱えた袋が風を受けてガサガサとうるさかったので、魔術で空気の膜をしっかり張って、風を遮断して。
「あ、はい。トゥミックから逃げて来た獣人達で、ちっちゃいコロニーみたいになってるので、そこに人間のユーリを入れるわけにもいかなくて……」
「トゥミックのレーベ将軍が、故国の地に帰って再興を図るつもりだと言っていた。君たちがそれに与力するなら、伝信を飛ばすが?」
「本当ですか!? す、すぐにリーダーに確認をとりますんで、ちょっと待っててくださいっ! あっ、ユーリの荷物もいつもの場所に隠してあるんだよね? ついでに取って来るから!」
猫獣人らしく素早い身のこなしで路地の奥に消えていくシャナを見送ったユーリは、隣のフィルを見上げた。
「あの、ごめんなさい、私、竜人とか番とか疎かったみたいで」
「気にすることではない。……あぁ、でも、少しは好意的に見て貰えると嬉しいのだが」
「……善処します?」
これまでの、どちらかというと恐縮しているような対応とは違い、少しだけ冗談めかした声のトーンでおどけた様子を見せたユーリに、フィルは満足の笑みを浮かべた。
(俺自身が距離を詰めようとしても上手くいかなくて、全く別の第三者から説明されてようやく、というのは残念だが)
それも仕方ないのかもしれない。よくよく思い返してみれば、初対面から攫うように連れ去ったも同然なのだ。終生巡り会えないと思っていた番を見つけた喜びで気が逸っていたとはいえ、強引な手段をとってしまったということは反省せざるを得ない。
「これこれ! お待たせ! あと、さっきの話、リーダーにもう一度してもらってもいいですか?」
慌ただしく戻って来たシャナが抱えていたのは、見慣れない素材の大きな袋だった。つるりと光沢のある薄い袋は揺れる度にガサガサと耳障りな音を立てている、しかも、うっすらとだが中に入っているものが見えるので、袋としての用を為しているのだろうか、とフィルは不思議に思った。
だが、目の前にやってきた獣人の青年を前に、とりあえず宴で将軍と話したこと、戦場でも同じようなことを語っていたことなどを説明する。それでも、耳はユーリの声を拾っていた。
「……うん、大丈夫みたい。ありがとう、シャナ」
「どういたしましてだよ! まぁ、ちょっと汚れてたらごめんね。何か、弟が一回引っ張り出しちゃっててさ」
「仕方ないよ。こんな音するから気になってたみたいだし」
「それでも他人の物に手を出すのはダメでしょ」
ぽんぽんと親しい者同士のやり取りが続くのを、フィルは嫉妬混じりに耳を傾けていた。途中で口を差し挟んで会話を中断させたい、同性とはいえ自分以外の者と親しく喋らないで欲しい、という独占欲をひたすらに我慢する。
「レーベ将軍の足手まといになるのは本意ではありません。復興に我らのような者が力になれるのか、事前に確認できたらと思うのですが」
「ならば、これを使うといい」
リーダーだという青年に、フィルは斜めがけにしていたバッグから紙を数枚と青い石を2つ取り出した。
「魔力がなくとも、これで互いに手紙のやり取りができる。この紙はこちらの石を目印に飛んでいくから、最初だけ俺が石を届ける。後は直接レーベ将軍と話してくれ」
フィルは青い石を魔力で作った鳥に渡し、空へ放った。鳥はレーベ将軍の下へ行き、フィルの声で事情説明という名の伝言をしてくれるはずだ。
「ありがとうございます! まさかレーベ将軍に直接お伺いを立てられるなんて思いもしませんでした! 本当にありがとうございます!」
深々と頭を下げる青年の肩に手を置き、大変なのはこれからだろうと励ましていると、シャナがこちらに気がついた。
「あ、ごめんね。あっちの話も終わったみたい」
「ありがとう、シャナ。シャナに助言してもらわなかったら、私、本当に大変なことになってたと思う」
「困った時はお互い様だよ。気にしないで」
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