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14話 襲撃
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~ リューベック視点 ~
意識が浮上したとき、一番に感じたのが焦げ臭いにおいだった。
「やっとお目覚め?」
頭上から女の声がした。
顔をあげると、ミリアリアがエリーゼに膝枕をしている。
その光景だけなら仲睦まじい姉妹の絵に見えるはずなのに、俺にはエリーゼにまとわりつく死神のように見えた。
「旦那様!お嬢様!ここを開けて下さい!」
侍女長の叫び声と扉を叩く音がする。
「どうしてお前がここにいる」
腕は後ろ手にしばられ、足も固定され、床に転がされていたが、俺はミリアリアを睨んだ。
「あら怖い顔。いい男が台無しね」
「ミリアリア!」
「うるさいわよ」
ミリアリアが持っていたナイフをエリーゼの首元に近づけた。
「ぐっ…」
扉向こうで「ミリアリアお嬢様?!」と驚く侍女長の声が聞こえた。
その後、廊下を走り去る足音が聞こえる。
「キャハハハハ!その顔最高!」
バカ笑いするミリアリアが腹立たしい。
いったいどこから現れたんだ?
この焦げた臭いは何だ?
「良いもの見せてくれたから、特別に教えてあげる。まずこの臭い。それは~、台所が火事になっているからで~す!」
楽しげに話すミリアリア。
狂ってる。
生まれ育った家に火を着けて喜ぶなんて、正気の沙汰じゃない。
「次は~、どこから入ったでしょう~。正解は~、暖炉の隠し通路からでした!」
ニタニタと笑う顔は醜悪な心のように腐ってる。なまじエリーゼに似てるから、余計に不愉快だ。
俺は脱出の機会を伺うために、体勢を変える。
「キャハハハハ!なにその格好!芋虫見たい。薄汚い男にピッタリだわ」
バカ笑いしていろ!
俺は体の反動を使い、体育座りになって腕をミリアリアに見えないようにした。
「サーシスを襲ったのはお前か」
「そうよ。私の愛を失くしては生きられないだろうから、先に『ラウトゥーリオの丘』に送ってあげたの」
「?!何故ラウトゥーリオの丘を知っている。お前とエリーゼは仲が悪かったと、使用人から聞いているぞ」
そう、これは謎だった。
どこで知ったのか。また、何故その単語を頻繁に引用するのか。
「誰だったかしら。ハル、ハロ…。そう、ハロルドから教えてもらったの。エリーゼが大切にしている童話なんでしょ。だから、汚してあげてるのよ」
「汚す?」
「男達を騙すとき『ラウトゥーリオの丘で貴方に会いたい』って言うのよ。この子が大切にしている言葉を、呪いの言葉にしてるのよ。フフフ素敵でしょ」
ミリアリアはエリーゼの金髪を愛しそうに撫でた。
ミリアリアが俺から目線をそらしたことで、俺は腕輪のカラクリナイフを出し、腕を縛る縄を怪しまれないように切っていく。
拉致・誘拐など、幾度となく掻い潜って来た身だ。対処法などはそれなりに用意・熟知している。
しかし、今回エリーゼの危険を思うと、焦って手を切りそうだ。
「私も聞きたいんだけど、エリーゼは何で寝てるのかしら?普通、こんな状況なら目を覚ますはずでしょ?」
くっ、痛いところをついてくる。
だが、正直に言っても意味はない。
どうする…。
「つまらないわね~。あんたを痛め付けて、この子の泣く顔が見たかったのに」
エリーゼの髪を一房取ると、ナイフで切った。
「やめろ!」
声を出したとき、しまったと思った。
こんな態度をとったらーーー。
ミリアリアの口が不気味に半月を描いた。
「それなら、貴方で遊びましょう」
まずい展開だ。
「姉妹だろ。何故そんなにエリーゼを目の敵にするんだ」
早く、早くしなければ!
気づかれない程度に手を動かし、少しずつ縄に切れ目を入れていく。
「何故って」
髪を一房とった。
「嫌いだからよ」
くそ、また切られた!
冷静に、焦りを見せれば相手の思うツボだ。これは交渉だ。
「嫌いなら無視すればいい。関わらなければ煩わしい事などないはずだ」
エリーゼに向いている注意を俺に向けるんだ。
もうすぐ縄が切れる。
「エリーゼが羨ましいのか」
ミリアリアの顔色が変わった。
「羨ましい?そんなわけないでしょ。貴族として生まれたのに、平民とヘラヘラ笑ってるこいつが許せなかっただけよ!」
ミリアリアが勢いよく立ち上がった為、エリーゼは膝から転がり床に落ちた。
「エリーゼ!」
「エリーゼ、エリーゼってうるさいのよ!ドレスも宝石も、両親の愛も、何も持ってない!何も持ってないくせに、ヘラヘラ笑ってんじゃないわよ!」
ゆらゆらとミリアリアが近づいてくる。
「私は持ってる。綺麗なドレスも、宝石も、両親の愛も!私は幸せなの、幸せなのよ!」
目の前に来た。
その顔は今にも泣き出しそうな、苦痛に満ちた表情だった。
なんて哀れな女なんだ。
たくさんの物に囲まれても満たされない。両親の愛も、あんなやつらじゃ録なもんじゃない。
こいつの中は空っぽなんだ。
「だから嫌いなの。だから壊してやるのよ」
ナイフを振り上げた!
振り下ろす瞬間、縄を切った俺はミリアリアの腕を掴んだ。
一瞬驚いたが、体重をかけて押し込もうとしてくる。
体育座りでは体勢が悪く、俺の背中が床についた。
「エリーゼも後から来るから、先にラウトゥーリオの丘で待ってなさいよ」
「嫌だね…。ラウトゥーリオの丘には『懸命に生きないと』行けないんだ。俺はまだ、懸命に生きたいんだよ。エリーゼと共に!」
ナイフを少しずつ押し返しているときーーー。
「旦那様…?」
意識が浮上したとき、一番に感じたのが焦げ臭いにおいだった。
「やっとお目覚め?」
頭上から女の声がした。
顔をあげると、ミリアリアがエリーゼに膝枕をしている。
その光景だけなら仲睦まじい姉妹の絵に見えるはずなのに、俺にはエリーゼにまとわりつく死神のように見えた。
「旦那様!お嬢様!ここを開けて下さい!」
侍女長の叫び声と扉を叩く音がする。
「どうしてお前がここにいる」
腕は後ろ手にしばられ、足も固定され、床に転がされていたが、俺はミリアリアを睨んだ。
「あら怖い顔。いい男が台無しね」
「ミリアリア!」
「うるさいわよ」
ミリアリアが持っていたナイフをエリーゼの首元に近づけた。
「ぐっ…」
扉向こうで「ミリアリアお嬢様?!」と驚く侍女長の声が聞こえた。
その後、廊下を走り去る足音が聞こえる。
「キャハハハハ!その顔最高!」
バカ笑いするミリアリアが腹立たしい。
いったいどこから現れたんだ?
この焦げた臭いは何だ?
「良いもの見せてくれたから、特別に教えてあげる。まずこの臭い。それは~、台所が火事になっているからで~す!」
楽しげに話すミリアリア。
狂ってる。
生まれ育った家に火を着けて喜ぶなんて、正気の沙汰じゃない。
「次は~、どこから入ったでしょう~。正解は~、暖炉の隠し通路からでした!」
ニタニタと笑う顔は醜悪な心のように腐ってる。なまじエリーゼに似てるから、余計に不愉快だ。
俺は脱出の機会を伺うために、体勢を変える。
「キャハハハハ!なにその格好!芋虫見たい。薄汚い男にピッタリだわ」
バカ笑いしていろ!
俺は体の反動を使い、体育座りになって腕をミリアリアに見えないようにした。
「サーシスを襲ったのはお前か」
「そうよ。私の愛を失くしては生きられないだろうから、先に『ラウトゥーリオの丘』に送ってあげたの」
「?!何故ラウトゥーリオの丘を知っている。お前とエリーゼは仲が悪かったと、使用人から聞いているぞ」
そう、これは謎だった。
どこで知ったのか。また、何故その単語を頻繁に引用するのか。
「誰だったかしら。ハル、ハロ…。そう、ハロルドから教えてもらったの。エリーゼが大切にしている童話なんでしょ。だから、汚してあげてるのよ」
「汚す?」
「男達を騙すとき『ラウトゥーリオの丘で貴方に会いたい』って言うのよ。この子が大切にしている言葉を、呪いの言葉にしてるのよ。フフフ素敵でしょ」
ミリアリアはエリーゼの金髪を愛しそうに撫でた。
ミリアリアが俺から目線をそらしたことで、俺は腕輪のカラクリナイフを出し、腕を縛る縄を怪しまれないように切っていく。
拉致・誘拐など、幾度となく掻い潜って来た身だ。対処法などはそれなりに用意・熟知している。
しかし、今回エリーゼの危険を思うと、焦って手を切りそうだ。
「私も聞きたいんだけど、エリーゼは何で寝てるのかしら?普通、こんな状況なら目を覚ますはずでしょ?」
くっ、痛いところをついてくる。
だが、正直に言っても意味はない。
どうする…。
「つまらないわね~。あんたを痛め付けて、この子の泣く顔が見たかったのに」
エリーゼの髪を一房取ると、ナイフで切った。
「やめろ!」
声を出したとき、しまったと思った。
こんな態度をとったらーーー。
ミリアリアの口が不気味に半月を描いた。
「それなら、貴方で遊びましょう」
まずい展開だ。
「姉妹だろ。何故そんなにエリーゼを目の敵にするんだ」
早く、早くしなければ!
気づかれない程度に手を動かし、少しずつ縄に切れ目を入れていく。
「何故って」
髪を一房とった。
「嫌いだからよ」
くそ、また切られた!
冷静に、焦りを見せれば相手の思うツボだ。これは交渉だ。
「嫌いなら無視すればいい。関わらなければ煩わしい事などないはずだ」
エリーゼに向いている注意を俺に向けるんだ。
もうすぐ縄が切れる。
「エリーゼが羨ましいのか」
ミリアリアの顔色が変わった。
「羨ましい?そんなわけないでしょ。貴族として生まれたのに、平民とヘラヘラ笑ってるこいつが許せなかっただけよ!」
ミリアリアが勢いよく立ち上がった為、エリーゼは膝から転がり床に落ちた。
「エリーゼ!」
「エリーゼ、エリーゼってうるさいのよ!ドレスも宝石も、両親の愛も、何も持ってない!何も持ってないくせに、ヘラヘラ笑ってんじゃないわよ!」
ゆらゆらとミリアリアが近づいてくる。
「私は持ってる。綺麗なドレスも、宝石も、両親の愛も!私は幸せなの、幸せなのよ!」
目の前に来た。
その顔は今にも泣き出しそうな、苦痛に満ちた表情だった。
なんて哀れな女なんだ。
たくさんの物に囲まれても満たされない。両親の愛も、あんなやつらじゃ録なもんじゃない。
こいつの中は空っぽなんだ。
「だから嫌いなの。だから壊してやるのよ」
ナイフを振り上げた!
振り下ろす瞬間、縄を切った俺はミリアリアの腕を掴んだ。
一瞬驚いたが、体重をかけて押し込もうとしてくる。
体育座りでは体勢が悪く、俺の背中が床についた。
「エリーゼも後から来るから、先にラウトゥーリオの丘で待ってなさいよ」
「嫌だね…。ラウトゥーリオの丘には『懸命に生きないと』行けないんだ。俺はまだ、懸命に生きたいんだよ。エリーゼと共に!」
ナイフを少しずつ押し返しているときーーー。
「旦那様…?」
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