愛しい人へ~愛しているから私を捨てて下さい~

ともどーも

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10話 残酷な真実に立ち向かえ(後編)

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~ ノーランド視点 ~

 俺はリックベルト殿下に、伯爵夫人の日記や手紙、精子調査報告書を見せた。
「ククク、面白いな」
 こいつはこう言うやつだ。
 何が面白い…。
 こっちは絶望してるんだぞ。
「そう、睨むな。解決してやるから」
「…出来るものか。俺達は…兄妹だったんだぞ。いくら王太子だろうと血縁関係を変えることは出来ない!」
 軽々しく『解決してやる』と言われ、思わず声を荒げてしまう。
 これは八つ当たりだ。
 情けない…。
「まぁ、落ち着け」
「…すまない」

「まず、ノーランドはどうしたいんだ?兄妹かもしれないと知って、シャティアナ嬢を諦められるのか?」
「…諦められないから…苦しい…」
 拳を握り込む。

「なら、やるべき事は2つだ。兄妹で結婚出来るように教会の教えを変える。二人が兄妹ではないと証明する事だ」
「何をバカな…。『近い血族同士は結婚してはいけない』と神の言葉を変える事は出来ない!そむけば死んだときに神の罰が下る。また、兄妹ではない事を証明する?証言と証拠は兄妹だと決定付けているだろう!」
 ソファー前のテーブルを力任せに叩くと、簡単に真っ二つになってしまった。
 リックベルト殿下は何故か爆笑している。

「神の教えか。そんなもの、教会の捏造だ。よく考えて見ろ。自殺は重罪で、罪を犯した者は教会で埋葬されない。では何故戦争で人を殺し回った俺やお前は罪人ではないんだ?命を奪うのに、自分の物と他人の物で何が違う?大方、戦争で自責の念に駆られた兵士を自殺させない口上だろう」

 驚いた。
 たぶん俺は間抜けな顔をしているだろう。
 リックベルト殿下の言葉は目から鱗だった。

「兄妹で結婚できないのは何故か?教会では『不浄な行為だから』と言われているが、本質は?」

 リックベルト殿下を俺はいつも『変人』『トラブルメーカー』としか思っていなかった。
 しかし、こいつの頭は何事も柔軟に受け止め『常識』を『常識ではない』と別の角度から物事を見定める事が出来るようだ。

「あと、シャティアナ嬢と兄妹だと嘆いているが、お前の持ってる証拠には穴がある」
「どういうことだ?」
「精子が少ないのは伯爵だけなのか?ノーランドの両親だって、なかなか子供を授からなかっただろう?」

 盲点だった!
 父上の方にも問題があれば、俺達が兄妹である確率はグンと下がる。

 これで!と意気込みそうになったが、結局二人が兄妹かあやふやではないか。
 伯爵夫人もそうだが、ベンズブロー伯爵家は信仰深い家系だ。
 少しでも兄妹の可能性があれば、彼女は結婚を承諾しない。

「そんな暗い顔をするな。『近い血族同士は結婚してはいけない』?何故?死後の世界で断罪される?誰か断罪されたか知ってるか?それにある王国で、王族は王族の血を汚さない為に、家族間で結婚していたと文献が残っている」
「そんな事が許されるのか?!」
「まぁ、何代が続けていたら、王族に子供が産まれなくなり、家族間での性交はで禁止されたがな」
「その国の教会?」
 俺の問にリックベルト殿下が盛大に笑い出した。その目を見て思った。
 その国とはーーー。
「これ以上は口に出すなよ。俺にが出るからな」
「…わかった」

 俺は座り直した。
「まずは侯爵に協力してもらえ。教会に行って『文献』をもぎ取ってこい。あと、教会関係者でな奴を紹介してやる。脅してでも『神の教え』を改善させろ。教会が認めればシャティアナ嬢も拒まないだろ?そいつを排除がてら教会の腐った奴等を粛正する」
 リックベルト殿下の表情が変わった。またレティーナ様が襲われた時に見せた、恐ろしい笑顔になっている。
 どうやら、レティーナ様が襲われた背景に教会側が関与していたようだな。

「本当にちょうど良いタイミングだった。炙り出し用の女に獲物が引っ掛かったばかりだ」
 殿下の話によると、カルヴァン王国第二王女のシルフィード王女は『回復魔法』が使うことが出来、自分は『聖女』だと教会に申し出ていたそうだ。
 そして、レティーナ様が傷物になれば、自分が殿下の花嫁になると予言したらしい。教会は頭がめでたい女を王妃にすれば、政局に関与できると踏んで協力していたようだ。
 ただ、回復魔法も浅い切り傷を直す程度で、他国にいる大聖女には遠く及ばないらしい。

「腐った奴等と話をするのに取って置きの部屋を貸してやる。うまく使えよ」
 
 殿下の黒い笑顔が怖い。
 国教を無くすことはないだろうが、かなりの粛正を考えているのがわかる。
 面倒事に巻き込まれる前に、シャティーを口説き落とさなければと強く思った。
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