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エピローグ・賢者は大人気ない
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しおりを挟む「ッッあ、…っはァ、んッ……、」
会話など無い、室内にはBGMと吐息混じりの喘ぎ声だけが響き、男は眼下の女の反応など気にもかけず腰を打ち付ける。
男の名は嘉島健一、家電量販店・ムラタの某店舗で黒物フロア長兼チーフフロア長を務める41歳。
彼は交際して2年になる恋人との久々のデートで、それなりに激しいセックスに励んでいた。
「あ、んッ…は…あー、イく、イくッ……あ、あー…」
後背位で女の腰を引き寄せ、どくどくとスキン越しに情欲を吐き出したらスッと引き抜く。
ティッシュに濡れたスキンと、渇いた喉に溜まった痰を包んでゴミ箱に投げ捨て、横たわる女の頭をガシガシと撫でた。
「健一…疲れてる?忙しいんでしょ」
「大丈夫だよ…気にすんな…」
まだまだ煙草に寛容な年代、嘉島はベッドサイドの灰皿を近くへ寄せて事後の一服を嗜む。
「そっか…ならいいの…」
「ふゥー」
先程まで繋がっていた恋人を邪険に扱ってしまうのは賢者タイムのせいだけではない。
最近の嘉島は日頃からピリついてギラギラしているのだ。
働き盛りの男盛り、中途採用だったので周りの同職よりは遅めだがチーフフロア長への昇進は自分を昂めるいい材料になった。
この先は副店長、そして店長、もっと大きい店舗へ、格上の大都市の店舗へ、野望が広がる。
「健一、年末さ…クリスマスとか…会えそう?」
「んー…分かんねェ…セール準備とかあるし…また連絡するわ」
私生活もなんとなく順調、県を跨いだ遠距離だがたまにこうしてデートする恋人はいるし、ゆくゆくは彼女と結婚でもするのだろう。
嘉島はぼんやりと甘い未来予想図を描いていた。
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