Fragment-memory of secret garden-

黒乃

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テキーラサンセットを貴方に(上)スグリ×ヤク前提ヴァダース→ヤク

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乳首責め/耳責め/若干のNTR/シリアス
Fragment一部作目 第九十一節閲覧後推奨





















 燃え盛る大地と、鼻に付く肉と人の脂が焦げる匂い。何人もの人間を殺し、彼らの住処を焼き払った。全ては世界保護施設に苦しめられている子供達を救うため。誰一人の犠牲も出してたまるものか。奴らに苦しめられる人生を、未来ある子供達に送って欲しくない。

 だが、たった、一人だけ。救えたはずなのに救えなかった子供がいた。自分が後手に回ったせいで、手が届かず間に合わなかった。
 敵と見定めた人間を何人殺しても、その感覚は忘れることができた。しかし救えなかったあの子供に頼まれて、彼の肉を切り裂いた感覚だけは、今でも手にまとわりついている。

 彼の、自分を殺して欲しいという最後の希望を理解できてしまえたから。無駄にその命を永らえさせるのが、その子供にとっての絶望だということが痛いほど分かるから。
だから、殺した。殺さざるを得なかった。

 ごめんなさい、ごめんなさい。本当は助けたかった、助けられたはずだった。それが驕りだということは、分かっているけれど。切望せずにはいられなかった。どうにかして、助けられる方法があったのではないかと。
 許してください、こんな弱い自分を、助けられなかった罰を、どうか許して──。

「……ありがとう、お兄ちゃん」
「──ッ、キルシュ!!」

 顔を上げれば、笑っているであろうあの子──助けられなかったキルシュという子供──がいた気がして。思わず手を伸ばした。

******

「っ……ぁ……」

 開けた視界に飛び込んできた、見慣れた天井。そこが数日前から休息のために使わせてもらっているヴァダース・ダクターの仮眠室だということを、輪郭を取り戻しつつある思考で理解する。
 今まで、気をやっていたのか。気怠い頭で考えてから、息を吐く。ふと見えた右手には包帯が巻かれており、怪我の治療が施されている。

 徐々に思い出す。キルシュを救えなかったことで絶望した自分を責めて、拳を岩に叩きつけていたところをヴァダースに止められた。彼に諭され、その後ヴァダースから次のターゲットである村の情報を聞き出そうとして──その後の記憶が、ない。

 あれから自分はどうなったのだろうか。どうにか上半身を起こして思考をまとめようとしたとき、部屋のドアが開く音が耳に届く。
 ゆらりと視線を音の聞こえた方へ向ければ、この部屋の主であるヴァダースがそこにいた。彼はヤクが目覚めていたことに気付くと、小さく笑う。

「ああ、起きていましたか」
「……私は、いつ……」
「ハイマート村を出て、子供たちを寝かしつけた後のことは覚えていますか?」
「ああ……」
「その後すぐ、でしたよ。私から次の襲撃地を聞こうとして、糸が切れたかのように」

 つまり情報を聞き出す前に気をやってしまっていた、ということになる。聞けばそれから半日は経っている、とのこと。随分と時間を無駄にしてしまった。本当なら今すぐにでも次の襲撃地を聞き出したいが──。

「次の襲撃は2日後にしなさい。魔力も碌に回復していなくて、まともに動けないでしょうに」
「っ……」

 この男には、状態が万全でないことは見抜かれてしまっている。あくまで彼とは協力関係にあるが、その実作戦の指揮はヴァダースが取っていた。
 以前、己がヴァダースの命令を背いた際は彼に組み敷かれたことがあった。そして恥辱に晒されながら、今後は彼の命令に従うと半強制的に盟約を交わしてしまったのだ。
 それ以降、多少の無理をしたくてもその許可が下りない。こんなところで手をこまねいているわけにはいかないのに、気持ちばかりが逸る。

「貴方の気持ちも分からなくはありませんが、倒れられては元も子もありません。我慢なさい」
「……命令には従う。だが2日後は私がどんな状態であろうとも、仕掛けさせてもらう」
「殊勝なことですね」

 いつの間にかベッドに座っていたヴァダースに、頬を撫でられる。ちらりと彼に視線をやれば、随分と楽しそうな月がそこにあった。

「正直彼らと再会したことで、多少なりとも動揺するのかと思いましたが……。ふふ、まさか殺そうとするなんてね。感心しました」
「……何が言いたい」
「別に裏の意味なんてありませんよ。言葉のままです」
「……今の私にとって一番の目的は、世界保護施設から子供たちを救うこと。その邪魔になるのなら、たとえ誰であろうとも排除する。それだけだ」
「それがたとえ、恋人だとしても?」

 ヴァダースの言葉で脳裏に浮かんだのは、再会した時に見たスグリだった。最後に見た彼は、怒りとも悲しみとも悔しさとも伺える、痛々しい表情をしていた。
 あんな表情のスグリは、初めて見た。動揺してない、と言えば嘘になるかもしれない。しかし、今の自分にとって彼らは敵に他ならないのだ。そう言い聞かせてから、ぐ、と拳を握りしめて呟く。

「……だとしても、だ」
「……そうですか。なら少しでも早く魔力が戻るよう、私が手助けしてあげますよ」
「何を──んっ……!?」

 気付けば、ヤクはヴァダースに唇を重ねられていた。突然のことで混乱する。そんなヤクの混乱をよそに、ヴァダースの舌はするりとヤクの口腔内に入り込むと、頬肉の裏を舐め上げた。ぞわりとした寒気にも似た感覚が背中を走る。

「ンぁ……ふ、ぅ……!」

 粘膜を擦り付けられるように舌が絡まれ、根元から吸われると途端に甘く痺れ、悦楽の熱に変化していく。それが波のようにゆっくりと全身へ溶け込み、浮遊感に苛まれる。やがて唇が離れるも、二人の間を名残惜しそうに粘性の銀の糸が垂れた。
 しばし恍惚に支配されたものの、我に返ってから慌てて口元を拭う。

「ッ……き、さま……!」
「貴方もご存知でしょう?肉体接触による魔力譲渡ですよ。私の魔力を少し、貴方に分け与えようと思いましてね。魔力の回復速度も幾分か早まりますよ」
「結構だ、そんなもの……!」
「貴方はそれでもいいのでしょうが、貴方の身体はそうは言ってないみたいですよ?」

 ぐい、とヤクの股間の辺りをヴァダースの膝が押し上げる。先程の口づけで、身体の方は火照りはじめてしまっていた。暴力的に嬲られ、そこを中心に淫靡な衝撃が指先にまで伝わった。びくりと身体が震えて、喉を逸らしてそれに耐える。

「ンぅ!」
「ほら……もう反応しはじめているじゃないですか」
「やっ……だま、れッ……!」
「もちろん私はこのままでも一向に構いませんが、一人で致しても私の魔力は渡せませんよ?それにそんなことをしても、無駄に体力を使うだけです」
「ひぅッ……!」

 布越しで甘勃ちしつつある屹立を揉まれると、下腹部がじんじんと疼く。

「さぁ……どうします?」
「んんッ!」

 まるで悪魔の囁き。ヴァダースの低い声が彼の吐息と共に、耳から体内へ入り込む。鼓膜で震えた声に身体の力さえ奪われ、抗えなくなる。とん、と軽く肩を押されただけなのに、芯を失ったかのように上半身がくたりとベッドに沈んだ。

「このまま止めるか、それとも私の施しを受けるか……選ばせてあげますよ」
「この、卑怯者ッ……!」
「なんとでも。ですがよく考えることです。魔力の回復が早まれば、貴方の望みもそれだけ叶えやすくなる」
「それは……」
「それに今はできるなら、救えなかった子供のことも愛する恋人のことも、何も考えたくない……。違いますか?」
「っ……!」

 言葉に詰まる。ヴァダースの言葉は、ヤクの心情を確実に捉えていた。己の不甲斐なさや無力さは理解している。しかし直視することができないでいるのだ。
 するり、と頬に手を添えた男の満月の瞳から、目が離せない。

「今この場には、私と貴方の二人だけ。もう少し素直になってみたらどうですか?」
「別に私は、取り繕っていない……!」
「その言葉がもう既に、自分は取り繕っていると言っているようなものです。まったく強情ですね。身体はこんなに素直なのに」
「はぅうッ!」

 ヴァダースの指が硬度を持ちはじめた乳首を掠めるだけで、身体中が快楽の波に翻弄されてしまう。想像よりも強い刺激から逃れようと、ヤクの身体はくねりを見せていた。じっくりと、だが確実にヴァダースに追い詰められていく。
 いくら抵抗しようとしても、相手の方が一枚も二枚も上手だということは、ここ数日で嫌という程体感している。気付いた時には逃げ場は何処にもなく、相手の意のままに動かざるを得なくなる。今だってそうだ。ヤクは屈辱に奥歯を噛み締め、しかしヴァダースの提案を飲むことにした。

「早く、済ませろ……!」

 顔を逸らしながら乱暴に言葉を発する。ヤクの言葉に対しヴァダースは小さく笑ってから、残酷に宣言した。

「申し訳ありませんが、それは出来かねます。私は彼のような、貴方にお優しい騎士ではありませんから。ですから私なりのやり方で、施しを与えて差し上げます」
「ん……ッ!」

 顎を掴まれ、再び唇を塞がれる。先程とは違った、噛みつくようなキス。歯列を舌でなぞられ、舌を根元から引き千切らんばかりにきつく吸われ、しゃぶられる。
 その間にシャツのボタンは外され、素肌が外気に晒されていく。ベルトのバックルが丁寧に外されていく音と、くちゃくちゃと粘着質な音がヤクの耳を犯した。

「ぁふ……ン、む……」

 呼吸すら狩り尽くされそうな程の獰猛な口づけは、ヤクの身体の奥に悦楽の火を灯す。腹の中心が疼き始めていく感覚が、ヤクの思考を削ぎ落としていく。

「私とのキスはそんなに良かったですか?」
「ひぅ……っ」

 一度離れ、情欲の光を孕んだ月が目を細めてから耳元で囁く。彼の声が鼓膜で震えるたびに、快楽神経が逆撫でされる感覚に陥る。耳から入った言葉が毒のように全身を駆け巡り、熱を昂らせる悦楽となってヤクを襲った。
 ヴァダースはそんなヤクに何か察する部分があったのか。彼はヤクの衣服を剥ぎ取り己も素肌を晒した後、ヤクを背後から抱きしめる形で横たわった。

「なに、を……」
「以前肌を重ねた時から、もしやと思っていたのですが……。貴方、耳が弱いのでしょう?」
「んぅッ、そん、なわけ……ないっ……!」
「そんなことはないでしょう?先程から身体が反応を示してくれていますよ」
「んくぅ……ッ!」

 耳元で喋りかけられるたび、腰骨にまで響く程の快楽の波がさざめく。実際、ヤクは耳を責められることにとことん弱い。鼓膜で声が震えると身体の芯で疼き、得も言われぬ快楽が湧いてしまうのだ。
 熱っぽいヴァダースの吐息が入り込むと、ヤクは喉を反らしながら腰を揺らす。口を塞ごうにも右手はヴァダースの手が絡められ、左手も思うように動かせずにいる。

「ここもこんなに膨らませて……」
「あァう!あッ……や、ぁ……」

 ヴァダースが空いている手で、ぷつんと勃ち上がりを見せていた突起を摘まみ上げる。これまでのキスで仕上がりを見せはじめたヤクの身体は、敏感に快楽を拾い上げていた。
 赤く染まっている突起の先端を指の腹で擦られたかと思えば、穿るように潰され、ぐりぐりと円を描くようにして嬲られる。

「あぁア、あッ……~~ッ」

 いたぶられている箇所は乳首なのに、神経は直結しているかのように先端からヤクの屹立へ、悦を届けている。キツく閉じた瞼の裏で、光が白く弾けてしまいそうだった。

「随分と可愛らしく育っていますね。胸だけでイけるのではありませんか?」
「そん、なッ……こと、ッ、あはァ!」
「折角だから見せてもらうとしましょうか。ほら、こうして──」
「くひィい!い、ァ、やめ……~ッ」

 乱暴に弄り倒したかと思えば、今度は乳暈を優しく丁寧に撫で回される。そのじれったさに乳首の先端はじんじんと痺れ、下腹部にも伝わり後孔がきゅう、と疼く。はしたなく起ち上がっている屹立もふるふると震え、先からしとどに愛液を滴らせていた。

「イッ……あ、も、もぅッ……やめ……!」

 仰け反り快楽から逃れようとしても、耳の裏をざらりと舐め上げられて別の肉欲が呼び覚まされる。もはやヤクに逃げ場などない。耳朶を甘噛みされながら、ヴァダースの囁きが入り込む。

「我慢は良くありません。快楽に素直になりなさい、ヤク・ノーチェ」

 毒薬とは、まさに彼の声のことだろう。ずぐん、と腹の底に沈むような甘い声を前に、ヤクの鼓膜は性感帯へと成り下がる。
 硬く尖りきった突起を乳暈ごと強く摘まれ、くびり出すかのように先端を爪の先でカリカリと引っかかれてしまえば、なす術もなく。
 執拗なまでの淫らな愛撫に、乳首の先から一気に屹立へ快楽が届けられる。碌に触られていないにもかかわらず、ヤクは髪を振り乱しながら清濁を解き放った。

「あッ──あはァあぁッ……!あひィ……!」

 びくびくと内腿を震わせながら白濁を撒き散らすヤク。身体を動かせる範囲の限界まで反らしながら、もたらされる白い快楽に身を落としていくのであった。
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