囚われの踊り手は闇に舞う

徒然

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16 捨てきれぬ立場

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 神崎は荒い息を吐くレイの耳元に唇を寄せ、口付ける。
「好きだよ、レイ」
 甘く、想いを込めて囁けば、レイの顔が幸せそうにはにかむ。頬に瞼に口付け、吐息が触れ合う距離まで唇に寄せた。
「レイ、次は……俺の上で踊ってくれ」
 好きだ、ともう一度囁けば、レイが微笑んで唇を触れ合わせた。口付けと呼ぶには軽やかな触れ合いに、神崎の身体が再び熱を持つ。
「じゃあ、綺麗に飾らないとな」
 そう言って神崎は、飾り棚に目をやった。
 おいで、とレイを誘って立ち上がる神崎。釣られて立てば、綺麗に並べられた淫具の元に連れていかれた。
「これは?」
 神崎が手にした淫具の用途を一つ一つ説明させられ、レイは身体に刻み込まれた快楽を思い出す。何度も達したせいで媚薬はもう抜けている。それなのに触れられてもいない身体がびくびくと震え、後孔が切なく疼く。
 全て説明し終わる頃には、レイは神崎に縋るように立っていた。ペニスを勃たせ、雫を垂らす。そんなレイに、神崎は耳元で囁いた。
「レイの乳首を飾るものと、射精を邪魔しないくらいの、ペニスに付けるリングと……」
 これからレイを責めるもの。その中で一番気持ちいいと思うものを自分で選び、差し出せと神崎が言う。躊躇うレイを励ますように撫で、犯させろとばかりに反り立ったペニスを擦り付ける。

 レイが手にした幾つかの淫具を、神崎に見せる。神崎は恥じ入るように俯くレイの顎を取り、強引に視線を合わせた。
「俺を見ろ、レイ。それで飾り立てたお前を犯すのは誰だ?」
 腰を押し付けて張り詰めたペニスをレイに示しながら、神崎がレイを見据える。レイを煽るように腰を揺らせば、レイの後孔がずくりと疼く。
「ケン……、貴方がいい。私は、貴方に犯されたい」
 熱に浮かされたようにレイが呟く。ふ、と笑った神崎が、無防備に反り返るレイのペニスを撫でる。
「ちゃんと言えた褒美だ」
 何を、と思うまもなく、レイのペニスが、膝を付いた神崎の口内へと飲み込まれていく。両手を腰に回され、温かく湿った舌に先端を擽られ、レイが甘く喘ぐ。
 上目遣いでそれを見た神崎が、少しずつ頭を動かす。
 じゅぶ、ぐちゅ。
 神崎が唾液を絡ませた舌をペニスに這わせた。
「っあ、や、だめ、ケン……、そんなこと、しなくていい……っ」
 首を振り、拒絶の言葉を吐く声は、甘く掠れている。引き剥がすためにケンの頭に添えられた手は、指通りの良い髪を撫で梳いているだけだ。
 態度では受け入れていても、言葉が強く拒絶する。それが気にかかった神崎は、口内からペニスを抜き、それを扱きながらレイを見る。
「俺にされるのは、本当に嫌か?」
 ちゅく、ちゅくと先走りが鬼頭に塗りこめられる。その快感に腰を震わせるレイの指先が、神崎に縋り付く。
「私は……、貴方を穢したくない」
 泣きそうに告げるレイの指先が震えているのに、ペニスはずくずくと脈打っている。神崎はアレクの腕を撫で、真っ直ぐにレイを見上げた。
「俺はお前の恋人だ。穢すもなにもない。お前が俺にしてくれたように、レイ、お前を気持ちよくさせたいだけだ」
 戸惑うレイのペニスを、ゆっくり深くまで咥える。つるりとした先端が上顎を擦り、ずるりと奥に滑り込んだ。思わぬ深さに、神崎の口の端から唾液が流れた。

 神崎は唾液を拭って指に纏わせ、レイの後孔にひたりと付けた。
「ケン、だめだ、それは……っ!」
 慌てて制止するレイのペニスを舐め、指をつぷりと差し込む。レイの乱れる呼吸に、支配欲が湧き上がっては満たされる。そのまま神崎は頭を揺らし、埋め込む指を増やして中をまさぐる。
 そうしてしばらく、神崎はレイの甘い声と脈打つ筋肉の揺らぎを楽しんだ。
「だ、め、はなして、出ちゃ、う……っ、あ……」
 レイの泣きそうな声に煽られて、神崎が限界まで喉を開き、見つけた前立腺を指で捏ねる。
 びゅるる、びゅ、と喉に叩きつけられるレイの精液を胃に流し込みながら、指を一気に引き抜く。
「う、あ、ん……っ」
 びくびくと身を震わせて恍惚の表情を浮かべるレイ。神崎は口元を手の甲で拭いながら、レイを引き寄せて膝に座らせる。落ち着けるように背中を撫でながら、細い声で喘ぐレイの顎を取る。
 噛み付くように口付け、まだレイの精液が絡む舌を差し込むと、レイのそれが擦り寄せられた。
 じゅる、と音を立てて、神崎の舌が吸いつかれる。表面を撫でるように舌が這い、口内を隅々まで舐められる頃には、レイの出したものの味がすっかり消えていた。

 口付けを解いたレイは、泣きそうな顔で、ごめんなさい、と呟く。
「こんなこと、させるつもりはなかったのに……」
 神崎の唇から垂れた唾液を指で拭い、土下座の形を取る。
「ご主人様、どうか、至らぬ私にお仕置を与えてくださいませ」
 震える声で告げられた神崎は、頭をがしがしと掻き乱す。そうして悲しみを湛えた目を閉じ、深くため息を吐いた。
「レイ、顔を上げて」
 硬い声で呼ばれ、レイが恐る恐る従うと、神崎が瞼を開いてレイを見る。
「俺では、お前の恋人にはなれないか」
 悲しみを帯びる声に、レイの肩がぴくりと跳ねる。
「恋人、など……」
 ――私は……ただの、男娼でしかない。
 神崎には言えなかった言葉が、レイの胸を締め付ける。
 今にも泣きそうなレイを、神崎が包もうと手を伸ばす。それにびくりと震えて身構えたレイに、神崎はレイの置かれた環境を――暴力を振るわれることに慣れてしまった現状を悟る。

「好きだよ、レイ」
 優しくかけられた声に、レイが顔を上げる。神崎の切なげに眉を寄せた顔に、傷付いたような表情に、伸ばされたまま止まった手に、レイは自分の過ちに気付く。
 ――こんな顔を、させたかった訳じゃない。
 す、と神崎の手を取り、頬を擦り付ける。それが拒まれることなく受け入れられたことに、レイは小さく息を吐いた。
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