劣等魔術師“口なし”の英雄譚

間話 道中

「さてと、それじゃあ行こうか」　
『了解です！』

そうやって元気よく返事をしたアイは馬型のゴーレムで勢いよく前に出た。

『さぁマスター！恒例の“早くついた方が勝ち”という勝負をしましょう‼︎』
「2回目なのにもう早くも恒例なの⁉︎」

それにフライングもしてるしルールガバガバだな！

「待て！」

僕は慌ててゴーレムを発進させてアイに追いつこうと頑張る。

『Hey Hey マスター！相変わらず呑気なスタートですね！こんなんじゃあ日がくれちまうぜ！』
「キャラが変わってる⁉︎」
『負けた方は罰ゲームですよ！前回してないですし‼︎』
「そういえばそうだね！」

途中から僕達は互いに並走しながら次の街に向かっていた。
まだだ！今回こそは負けてたまるか！

ーーー

「ふーむ」

私は思わす顎をさする。
別にヒゲとか生えていないし、なんなら幼女を象徴する“ロリ”と言われる状態なのだが。

「「「おい！お嬢ちゃん！金目の物を出しな！」」」

そんな私を怖がらせたいのか怖い顔をしながら、揃って同じ発言をする髭がぼーぼーの3人組男達がいた。
ことの発端はこうだ西の街に行こうとしたら盗賊ABCが現れた！ということだ。

「金目の物、持ってないです」

その後、「それじゃ」と言ってその場を去ろうとするが、

「そうは問屋が下さねぇぜ！お嬢ちゃん！」

男の1人が懐からナイフを取り出し私を更に脅してきた。
いや、冷静に考えて小さい幼女が金目の物を持ってるわけないだろ。
馬鹿かこいつら。

「俺たちの観察眼はハズレねぇぜ！お嬢ちゃん金目の物を持ってるだろ」

馬鹿だったわ。
そんな目は捨ててしまえ。

「あんまりしつこいと……」

そう言うと私は彼らにお灸を添えようとするが。

ガッン‼︎
『あっ！』

目の前で3人組が勢いよく何かに吹っ飛ばされた。

『大丈夫ですか！』

その何かからは女性の声が聞こえてきた。
何故かゴーレムの馬に乗っているが、慌てて降りて男たちの様子を見にきた。

『どうしよう白目向いてる！』
「アイ！どうし…た…」

慌ててる女性に向かって声をかける男性が青年が後から来て、目の前の惨状に言葉を失っていた。

「アイ……とうとう」
『いや違いますよ！事故です！事故なんです！』
「けど」
『う』
「これ死ん」
『うわぁぁぁん！』

青年が言い終わる前に女性は泣き出す。

「あの～……」

いかん。はやくこの場を収取せねば。

「生きてますよ？その人たち」
『「えっ」』
「嫌だから」

私はそのあと、彼女達に説明した。
アレは気絶してるだけで生きていると。
それにアレは盗賊してたから死んでも法的に問題ないこと。

『「良かった～」』

私の説明に2人は心底安堵した様な顔をした。

『いや～この歳で余生を牢獄で暮らすのかと思いました。ありがとうございます』

そう言って女性は頭を下げる。

『マスター！お礼に何かしてあげたいです！』
「そうだね……君、これからどこに行くの？」

私は西の街に向かっていることを彼女達に話す。

『私たちも西の街を目指してるです。お礼を兼ねて一緒に行きましょう！早いですよ』
「それが良いね。君が嫌じゃなければ一緒に行かないかい？」

特に断る理由もなく私は了承する。

『よしではこちらへ』

女性がゴーレムに跨り、こちらに手を差し伸べるが。

「お願いします」
「了解」
『あれー！なんでそっちなんですか！』