劣等魔術師“口なし”の英雄譚

河内 祐

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西の街

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『ここが冒険者の街ですか!』

街に入った後、アイは声高らかにそう言った。

『どこを見ても人人人!先程の街との人数比がおかしいですねヒャッハー!』
「アイ⁉︎テンションがおかしくなってるよ⁉︎落ち着きなさい!」
「あのお嬢ちゃんとんでもない人だった……」

僕と一緒に乗ってた少女もアイの変貌ぶりに若干引いていた。

「じゃあ私はこれで……送ってくれてありがとうございます」
「いえいえ……こちらこそあの時、言ってくれなかったらアイを衛兵さんに突き出すところでした」
「困った時はお互い様ですよ。またどこかでお会いしましょう」
「はい」

そう言って僕達と少女は別れた。

『マスターここの近くに冒険者ギルドが……ってあれ?先程の少女がいませんね?まさか⁉︎』
「そうだよ……アイのテンションが」
『マスターが美味しく召し上がってのですね⁉︎』
「うん違うね⁉︎」

僕にはそんな趣味はないよ⁉︎

『そうですよね……流石にマスターは食人の趣味はございませんよね……』
「えっ……あっ!そう言うことね⁉︎」
『……マスターは一体どのような妄想を』
「さぁ冒険者ギルドに行こうか」
『……』
「……」
『……』
「……」

ダッ!

『あっちょっとマスター‼︎』

いたたまれない気持ちになり猛ダッシュで冒険者ギルドに向かう。

『ちょっと待ってください!ブースト使いますよ!』
「いつのまにそんな機能を⁉︎」

アイが知らない間に体を作り直してた!
ドドドド!
アイの体がすごい音共にちょっと浮いてる!

『フハハハ当たると肉が飛び散りますよ!お気をつけて!』
「やめろやめろ!」

危ないことこの上ないわ!

「他の人にも当たるよ⁉︎」
『たしかにそれは危険ですね』
「僕に対してもしてね⁉︎」

その後、僕たちは

『あっ!マスター!ギルドが見えましたよ!』
「えっ!」

確かにアイの指差す方向を見るとそこには「冒険者ギルド」と書かれた看板があった。
建物も近くにある家よりも何倍も大きかった。
しかし

「……ねぇアイ」
『……何でしょう?』
「すごい光景が見えない?」
『解……見えます』
「昔の口調に戻っちゃった⁉︎」

アイがおかしくなるくらいの景色。
それは……

「うっ……」
「あ……あ……」
「……」
「おい!こいつ息してねぇぞ!」
「やべぇぞ!いそげ!」

死屍累々と言う言葉が似合っているそんな惨状が広がっていた。
中にはゴツい鎧を身に纏っている人もいるし、一体何があったのか……

「明日にしない?」
『賛成です』
「宿取ろうか」
『賛成です』

僕たちはとりあえず、その場から1秒でも早く去るために180度転換して何も見なかったことにした。

「おい待てお前ら」

ガッ

「‼︎」

しかし、そんなに現実は甘くなく僕は後ろから誰かに頭を掴まれた。

『さよならマスター!』
「あっ!待てアイ!」

アイはすぐさま異変を感じ取ると猛ダッシュで僕を見捨てて逃げようとしたが

『離してください!マスター‼︎』

僕がすぐさまにアイの手を掴んで逃げれないようにした。

「嫌だ!一緒に死のう!」
『凄いこと言いますね⁉︎』

『うぉおおお!』とアイが踏ん張って抜け出そうとしていると……

ガッ

「『あっ』」

今度はアイの方も頭を掴まれた。

「お前たち……冒険者ギルドに入ろうとしてただろう?」
「はっ、はい」

声が上の方尚且つ、ゴツい腕が僕の視界端に見えるためにもう生きた心地がしない。
あぁ……後ろにはトロールの様な怪物がいるんだ。
僕の人生もあっけなかったなぁ。

「おいガキ共、人生を諦めた顔をしてねぇで来い」

ズルズルと僕たちは頭を掴まられながら引きずられる。

『誰かぁ……タスケテ……』

アイの声がすごく悲痛だった!

ガタン

ドアを開ける音がすると同時に景色が変わるどうやら冒険者ギルドの中に入った様だ。
屋根は高く周りには机が置いてあり、酔っ払いが寝ている。

「おいお嬢ちゃん」
「ドロンさんこんにちは」

後ろからさっきの人の声と別の人の声が聞こえる。
どうやら僕たちを運んできたのはドロンという名前らしい。

「こいつら冒険者になりたいそうだ」
「おや?そうなのですか?」

そう言った声が聞こた後、トコトコ歩く音がしたと思ったら目の前に僕より身長が低い女性が現れた。

「これ」

女性は僕とアイに紙を渡す。
そこには「登録書」と書かれていた。

「えっ?」

僕は思わず目を疑う。

「あれ?登録しにきたんじゃないの?」
「いやそうなんですけど」

僕は思わず聞いた。

「えっ僕達、この人に殺されませんか?」
「あ?」
「あぁわかります。ドロンさん怖いですもんね」
「あ?」

なんか心なしか僕たちの会話を聞いたドロンさんの頭を掴む力が強くなった気がする。

『マスター!変な地雷を踏まないでください!確かに怖い雰囲気はありますけどぉ!』
「いやアイの発言もまぁまぁ失礼だよ⁉︎」
「お前たち全員失礼じゃあああ!」







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