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茶会
招待
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勲章を届けて以来、シエラはグレイと顔を合わせていない。というもの、意図的にではなくただ単にすれ違っているだけだ。
グレイは時折、夜に帰ってきているというが、その時にはシエラは眠ってしまっている。
シエラが目を覚ました時には、グレイは王宮へ戻ってしまっている。
そんな生活が続いていた。
こういったことはよくあるので、シエラは寂しいとは思いながらも、「グレイは真面目に仕事に取り組んいるのだ。尊敬できる人だ。自分も尊敬されるような人になろう」と自らを鼓舞して、公爵夫人として公爵邸内部の仕事をこなしていた。
そんなある日。
「奥様、アマリア様よりのお手紙です」
「おば様から?……変ね。ご機嫌伺いのお手紙ならつい先日もらったばかりなのだけど」
アマリアは、シエラのことをとても大切にしてくれている。普通、ご機嫌伺いの手紙は年下のものから年上の者へ贈るものや、あるいは恩義のある人間に対するものだと認識しているのだが、アマリアは、ひと月に2回はご機嫌伺いのための手紙と贈り物(主にシーズンのドレス)をシエラに贈ってくれている。その手紙と贈り物はつい先日届いたばかり。短い日数しか空いていないのに2度目の手紙が届けられるなんて、変だ……。
と、訝しみながら、シエラはエナに手渡された手紙の封を切る。
アマリアらしく、毎度とても流麗な字だ。ほのかに香水の香りもする。
「…………は?」
思わず出てしまった声に、隣でエナが怪訝な表情で見つめてくる。
しかしシエラには説明する余裕がない。
(……王妃様が私を茶会に呼びたがっているなんて)
一体、どうしたことだろうか。確かに王妃様とアマリアはとても懇意にしている。それは知っている。
しかし、今までアマリアは人の多いところが苦手なシエラに気遣って、貴婦人達がシエラを茶会に招きたいと口にしても、断ってくれていた。
しかし、今回はどうした風の吹き回しか。
王妃様が、わざわざ「シエラ」の名前を出してまで茶会に招待したのだという。
たとえ女傑と呼ばれるアマリアでも、王妃たっての願いを断るわけにはいかない。さすがのシエラもそうまでして頑なに「茶会には行かない」と言えるわけがなかった。
手紙には、アマリアの「断りきれなくて申し訳ない」という気持ちが滲み出ている。
シエラはもう1度、手紙に目を通し自分が見た内容が正しいかを確認して、その手紙をエナに開いたまま渡した。
エナは心得たとばかりに手紙を読み込み、驚愕に目を瞬きながらも「奥様……」と心配そうに顔を覗き込んでくる。
「……仕方ないわよね。公爵夫人なのに、いつまでも人見知りを理由に茶会に出ないのは、良くないし」
シエラは額に片手を当てて、溜息を吐く。今まで最低限の社交の場には出てきた。しかしそれはあくまでも大体的に行われるもので、婦人たちだけが集まる茶会には参加したことがない。
自分には愛想というものが欠如している自覚もあったから、茶会に出ればより一層風当たりが強くなると予想していた。
有り体に言えば、これ以上やっかまれるのはごめんだったわけだ。
しかし、今回は王妃様からの招待。断るわけにはいかない。
まずは、グレイに知らせなくては。と、シエラは立ち上がる。
グレイは時折、夜に帰ってきているというが、その時にはシエラは眠ってしまっている。
シエラが目を覚ました時には、グレイは王宮へ戻ってしまっている。
そんな生活が続いていた。
こういったことはよくあるので、シエラは寂しいとは思いながらも、「グレイは真面目に仕事に取り組んいるのだ。尊敬できる人だ。自分も尊敬されるような人になろう」と自らを鼓舞して、公爵夫人として公爵邸内部の仕事をこなしていた。
そんなある日。
「奥様、アマリア様よりのお手紙です」
「おば様から?……変ね。ご機嫌伺いのお手紙ならつい先日もらったばかりなのだけど」
アマリアは、シエラのことをとても大切にしてくれている。普通、ご機嫌伺いの手紙は年下のものから年上の者へ贈るものや、あるいは恩義のある人間に対するものだと認識しているのだが、アマリアは、ひと月に2回はご機嫌伺いのための手紙と贈り物(主にシーズンのドレス)をシエラに贈ってくれている。その手紙と贈り物はつい先日届いたばかり。短い日数しか空いていないのに2度目の手紙が届けられるなんて、変だ……。
と、訝しみながら、シエラはエナに手渡された手紙の封を切る。
アマリアらしく、毎度とても流麗な字だ。ほのかに香水の香りもする。
「…………は?」
思わず出てしまった声に、隣でエナが怪訝な表情で見つめてくる。
しかしシエラには説明する余裕がない。
(……王妃様が私を茶会に呼びたがっているなんて)
一体、どうしたことだろうか。確かに王妃様とアマリアはとても懇意にしている。それは知っている。
しかし、今までアマリアは人の多いところが苦手なシエラに気遣って、貴婦人達がシエラを茶会に招きたいと口にしても、断ってくれていた。
しかし、今回はどうした風の吹き回しか。
王妃様が、わざわざ「シエラ」の名前を出してまで茶会に招待したのだという。
たとえ女傑と呼ばれるアマリアでも、王妃たっての願いを断るわけにはいかない。さすがのシエラもそうまでして頑なに「茶会には行かない」と言えるわけがなかった。
手紙には、アマリアの「断りきれなくて申し訳ない」という気持ちが滲み出ている。
シエラはもう1度、手紙に目を通し自分が見た内容が正しいかを確認して、その手紙をエナに開いたまま渡した。
エナは心得たとばかりに手紙を読み込み、驚愕に目を瞬きながらも「奥様……」と心配そうに顔を覗き込んでくる。
「……仕方ないわよね。公爵夫人なのに、いつまでも人見知りを理由に茶会に出ないのは、良くないし」
シエラは額に片手を当てて、溜息を吐く。今まで最低限の社交の場には出てきた。しかしそれはあくまでも大体的に行われるもので、婦人たちだけが集まる茶会には参加したことがない。
自分には愛想というものが欠如している自覚もあったから、茶会に出ればより一層風当たりが強くなると予想していた。
有り体に言えば、これ以上やっかまれるのはごめんだったわけだ。
しかし、今回は王妃様からの招待。断るわけにはいかない。
まずは、グレイに知らせなくては。と、シエラは立ち上がる。
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