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幕間 4
作戦会議 〜マルーン帝国攻略計画〜
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第3王子が、言う。
「皆、よく集まってくれた。
マルーン帝国より宣戦布告があった後、我々は2度の戦を経験した。どちらも我々の勝利といってよかろうが、それにより困ったことが起きておる。ピノ」
ピノ、と呼ばれた女は、継いで話をする。
「帝国は、勝つまで戦をやめないそうです。つまり、我々が勝ち続ける限り、大小に関わらず、戦を仕掛けてくるということで…。我々の計算では、防衛戦を戦えるのはあと1回が限度かと。敵があと2回、攻めてくることがあると、厳しい」
厳めしい顔の男が言う。
「兵はそこまで損耗していると思わないが…問題は金と物資か」
ピノ、が言う。
「そうです、オイリ閣下。人命優先の戦闘ですから、当然そのぶん金と物がいります。
今回導入した新式の複討式の弓台が、かなり高額なのと、ロープの罠と…王城から学園へ美術品を運んだり、地味にあの大きな板も、高いです」
眼鏡の男が言う。
「北のササヤ共和国と、西のカナリ神国から多少の援助は引き出せそうですが…」
第3王子が言う。
「そうは言うても、あまり借りを作るのも良くない…と、いうことじゃな、セリ」
眼鏡の男が言う。
「は、マルーン帝国から賠償金を得て返すにしても、このあたりでけりをつけねば、あちらも払う金がなくなりますでしょうし…無いものは取れませんから」
ピノが言う。
「カレー殿、マルーンの懐具合、どのように見ておられます?」
カレー、と呼ばれた女が言う。
「そうね、皇家はともかく、皇都に住んでるお貴族様は相当苦しいと思う。中央だけで構成された軍を出すのは、とにかく人件費がかかるからねぇ。
出来れば辺境の領軍を投入したいところなんだろうけど、東の辺境伯は自分の妹…皇后陛下がお亡くなりになったから喪に服すって理由で、1つも動こうとしないのよね~。
皇后陛下は、うちとの戦にずっと反対してたんですって。だからっていうのもあるんじゃないかしら…妹さんを、それは大事になさってたそうだから。」
特徴のない男が言う。
「南の辺境伯も、最初の戦こそ後方支援に勤しんでいましたがね、次からはやれ何だかんだと理由をつけて戦線に合流してませんね。北の辺境伯…第2皇太子が「死んだ」ことも、影響しているようで。
東は動かない、北も動けない…つまり、帝国最強の座を競う両方の軍が出てこないんじゃあ、勝ち目なしって思ってるんじゃないかと…南のは、損切りが上手いですからね」
第3王子が言う。
「敵は中央だけか…好機かもしれんの」
オイリ閣下と呼ばれた男が言う。
「2度目の戦で、皇都騎士団が壊滅してますからね。
…あいつら、捕えて収容所に送ってみたはいいですが、どれもこれも見た目ばかりの筋肉で…。根性叩き直してやりたくてたまりませんよ」
ピノが言う。
「あっ、捕虜の生活費も、嵩んでます。そんなに寒くもないのに、薪使いすぎです」
オイリ閣下が言う。
「違う違う、あいつらな、暗いのが怖いらしくて、寝るとき余計に火をたいてやがるんだ」
第3王子が言う。
「おぉう?まさか、薪の疑問が解けるとは…。いや、西の砦の兵隊が、薪を倍取ってこいって命令されたとかいうやつじゃ。何の作戦かと思うたが、ただの怖がりとはの…」
おまけにその兵隊が、まさかの鬼神だとは…無駄遣いにも程があろうが、と続けてから、王子は言った。
「今度はこちらから行かせてもらう。…皇都を攻め落とし、皇帝の首をもらう。
…ああ、これは、カラスという男からの伝言じゃが…」
全員がそれ誰?という顔になる。
王子が続ける。
「戦を止めるのには、皇帝と第一皇太子の首を刎ねて、今まで併合してきた国や地域を独立させて、残った土地に傀儡の王でも据えれば、戦は止まるであろう、だとよ」
伝言の内容にほぼ全員が啞然とする中、今まで一言も発しなかった、会議の記録係である長身の男が言った。
「本当、面白い事言うやつがいたもんだ」
「皆、よく集まってくれた。
マルーン帝国より宣戦布告があった後、我々は2度の戦を経験した。どちらも我々の勝利といってよかろうが、それにより困ったことが起きておる。ピノ」
ピノ、と呼ばれた女は、継いで話をする。
「帝国は、勝つまで戦をやめないそうです。つまり、我々が勝ち続ける限り、大小に関わらず、戦を仕掛けてくるということで…。我々の計算では、防衛戦を戦えるのはあと1回が限度かと。敵があと2回、攻めてくることがあると、厳しい」
厳めしい顔の男が言う。
「兵はそこまで損耗していると思わないが…問題は金と物資か」
ピノ、が言う。
「そうです、オイリ閣下。人命優先の戦闘ですから、当然そのぶん金と物がいります。
今回導入した新式の複討式の弓台が、かなり高額なのと、ロープの罠と…王城から学園へ美術品を運んだり、地味にあの大きな板も、高いです」
眼鏡の男が言う。
「北のササヤ共和国と、西のカナリ神国から多少の援助は引き出せそうですが…」
第3王子が言う。
「そうは言うても、あまり借りを作るのも良くない…と、いうことじゃな、セリ」
眼鏡の男が言う。
「は、マルーン帝国から賠償金を得て返すにしても、このあたりでけりをつけねば、あちらも払う金がなくなりますでしょうし…無いものは取れませんから」
ピノが言う。
「カレー殿、マルーンの懐具合、どのように見ておられます?」
カレー、と呼ばれた女が言う。
「そうね、皇家はともかく、皇都に住んでるお貴族様は相当苦しいと思う。中央だけで構成された軍を出すのは、とにかく人件費がかかるからねぇ。
出来れば辺境の領軍を投入したいところなんだろうけど、東の辺境伯は自分の妹…皇后陛下がお亡くなりになったから喪に服すって理由で、1つも動こうとしないのよね~。
皇后陛下は、うちとの戦にずっと反対してたんですって。だからっていうのもあるんじゃないかしら…妹さんを、それは大事になさってたそうだから。」
特徴のない男が言う。
「南の辺境伯も、最初の戦こそ後方支援に勤しんでいましたがね、次からはやれ何だかんだと理由をつけて戦線に合流してませんね。北の辺境伯…第2皇太子が「死んだ」ことも、影響しているようで。
東は動かない、北も動けない…つまり、帝国最強の座を競う両方の軍が出てこないんじゃあ、勝ち目なしって思ってるんじゃないかと…南のは、損切りが上手いですからね」
第3王子が言う。
「敵は中央だけか…好機かもしれんの」
オイリ閣下と呼ばれた男が言う。
「2度目の戦で、皇都騎士団が壊滅してますからね。
…あいつら、捕えて収容所に送ってみたはいいですが、どれもこれも見た目ばかりの筋肉で…。根性叩き直してやりたくてたまりませんよ」
ピノが言う。
「あっ、捕虜の生活費も、嵩んでます。そんなに寒くもないのに、薪使いすぎです」
オイリ閣下が言う。
「違う違う、あいつらな、暗いのが怖いらしくて、寝るとき余計に火をたいてやがるんだ」
第3王子が言う。
「おぉう?まさか、薪の疑問が解けるとは…。いや、西の砦の兵隊が、薪を倍取ってこいって命令されたとかいうやつじゃ。何の作戦かと思うたが、ただの怖がりとはの…」
おまけにその兵隊が、まさかの鬼神だとは…無駄遣いにも程があろうが、と続けてから、王子は言った。
「今度はこちらから行かせてもらう。…皇都を攻め落とし、皇帝の首をもらう。
…ああ、これは、カラスという男からの伝言じゃが…」
全員がそれ誰?という顔になる。
王子が続ける。
「戦を止めるのには、皇帝と第一皇太子の首を刎ねて、今まで併合してきた国や地域を独立させて、残った土地に傀儡の王でも据えれば、戦は止まるであろう、だとよ」
伝言の内容にほぼ全員が啞然とする中、今まで一言も発しなかった、会議の記録係である長身の男が言った。
「本当、面白い事言うやつがいたもんだ」
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