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王子様と皇太子殿下 6
皇太子、さらに悩む
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僕は不安だった。
「ただ、元に戻るだけ…なのに」
自分に価値が無くても、ソラ君は友情・元部下の皆は恩義で今まで通り付き合ってくれるだろう。
今まで頑張ってきた分の積み重ねが彼らにはあるから…きっと。
だけど、自分はトーリのみんなに何も出来ていない。
これからも出来るか分からない。
それがトーリの皆に分かってしまったら、今までの優しさは消えるだろう。
僕の知識なんか先生の足元にも及ばないし、ソラ君みたいに馬の調教ができるわけでもない。
野盗と戦えるわけでもないし、その…性的に人を悦ばせる事だって、もう…出来ない。
何も無い。
カラダを売る事すら出来ない。
「大きくなりたかった、だけなのにな」
大きくなったから、ついに最後の砦まで失った。
みんなと同じようになりたかった。
自分が心から望んだ事なのに、それが自分の価値を無くす事だと…分かっていたのに。
「こんな、気持ち悪い生き物…」
エースさんも、こんな僕を抱きたいとは思わないだろう。
だって、小さい頃の僕を見初めたって言ってた。
大きくなった僕も好きかどうかは分からない。
今はただお情けで、性が熟するのを手伝ってくれてるだけかもしれない。
優しくて、僕の事を理解してくれる人だから…不安にさせないようにしてくれてるだけかもしれない。
悩んでもどうしようも無いのは、分かっているのに…
ため息をついて、ふと窓を見る。
ソラ君とロウさんが仲良さそうにしているのが見える。
「いいなあ」
どうやって2人は知り合って、恋人になったんだろう。
愛し合うってどういうことなんだろう。
どうして羨ましいと思うんだろう…
「何で、だろう」
***
次の日、僕は思い切ってソラ君とロウさんの2人に相談することにした。
ロウさんは僕の事友だちと思ってないだろうから、相談しても駄目かもしれない。
だけど、エースさんの事知ってる人に聞きたいと思ったんだ。
なんでかは分からないけど。
僕が訪ねていくと、ソラ君とロウさんは何だか険悪な雰囲気だった。
相談しづらい…
でも、ソラ君が俺に聞いてくれた。
「どうしたの、急に」
だから、何とか相談することが出来た。
「ねえ、ソラ君、ロウさん。
今の僕に価値って、あると思う?」
2人は顔を見合わせて、何を言ってるんだという顔をした。
だから僕は自分の考えを伝えた。
今の自分はどこにも売れない。
それって価値が無いってことなんじゃないか…って。
エースさんが僕を小さいときに見初めたってことは、今の僕じゃ駄目なんじゃないかって事まで。
するとロウさんは笑って言った。
「くだらないことで悩んでんなお前!
アイツにとっちゃ、お前がたとえジジイになったとこで、価値は変わんないよ。
オレだって、ソラが子どもでもおじいちゃんでも抱けるよ?
そんなことよりだいぶ大きくなったな!
背も高くなってきたし!」
だって。ほんとかなぁ?
背のことは本当だけど…
ロウさんはいいな、背が高くて、体も大きいし。
何となくじとっとした目で見てしまう。
「だーいじょぶだって。
オレ、エースのことは良く知ってるから!
今度からそういうのオレに聞けよな!」
遠回しに、ソラ君にもう相談しにくるなって言われてしまった。
「そう…ですか」
「そうだよ。
大体そんな事エースに聞けばいいじゃん。
それをソラにいちいち…友だちだか何だか知らないけど、近過ぎ・邪魔・ムカつく。
ソラはオレのものなの。
お前のものじゃないの。
友だちだって言うんなら、迷惑かけに来んなよ。
お前賢いんだろ?
だったら自分で考えりゃいいじゃねーか」
「ロウさん!!」
目の前で喧嘩が始まった。
「何だよソラ。
オレよりこいつのほうが好きなのか!?
何でこいつの事大事にすんだよ!!
ソラは俺だけ大事にしてりゃいいんだよ!!」
ロウさんのあまりの剣幕に固まっていたら、ソラ君がキレた。
「ロウさん…そんなに自分勝手な人だったなんて、知らなかった」
「なんで!ソラは俺が一番じゃないのかよ!!」
ロウさんが叫ぶけど、ソラ君は怒ったままだ。
「さっきも言ったよね?
カラス君とおれが仲良くする理由。
ロウさんはカラス君がどうなってもいいんだ」
「そ…れは」
「おれはロウさん以外の人に欲情したりしない。
セックスするのもキスするのもロウさんだけ。
それだけじゃ足りないの?
いつから俺以外の人の事を考えられなくなったの?」
「そ、れは…」
ソラ君が怒って、ロウさんが静かになった。
「大体、さっきのカラス君の話の内容を聞いて何とも思わないなんてね。
『くだらない』って嗤って、おまけに友だちとの縁切りまで迫るんだね。
ロウさんはそうやって人間を馬鹿にするんだね。
それはもう眷属じゃなくて化物だよ」
「……ごめん」
「謝るのは俺にじゃないでしょ?」
「……うん。
ごめんな、クロエ…」
「そんな、気にしなくていいです。
僕はトーリの人たちにとっては無価値なんだって、はっきりして良かったです」
「カラス君!!」
ソラ君はまだ何か言いたそうだったけど、僕は1つ問題が解決してすっきりした。
だから、僕は躊躇いなくもう一つの相談をすることが出来た。
「その、もう1つ相談が、あるんですけど」
「ただ、元に戻るだけ…なのに」
自分に価値が無くても、ソラ君は友情・元部下の皆は恩義で今まで通り付き合ってくれるだろう。
今まで頑張ってきた分の積み重ねが彼らにはあるから…きっと。
だけど、自分はトーリのみんなに何も出来ていない。
これからも出来るか分からない。
それがトーリの皆に分かってしまったら、今までの優しさは消えるだろう。
僕の知識なんか先生の足元にも及ばないし、ソラ君みたいに馬の調教ができるわけでもない。
野盗と戦えるわけでもないし、その…性的に人を悦ばせる事だって、もう…出来ない。
何も無い。
カラダを売る事すら出来ない。
「大きくなりたかった、だけなのにな」
大きくなったから、ついに最後の砦まで失った。
みんなと同じようになりたかった。
自分が心から望んだ事なのに、それが自分の価値を無くす事だと…分かっていたのに。
「こんな、気持ち悪い生き物…」
エースさんも、こんな僕を抱きたいとは思わないだろう。
だって、小さい頃の僕を見初めたって言ってた。
大きくなった僕も好きかどうかは分からない。
今はただお情けで、性が熟するのを手伝ってくれてるだけかもしれない。
優しくて、僕の事を理解してくれる人だから…不安にさせないようにしてくれてるだけかもしれない。
悩んでもどうしようも無いのは、分かっているのに…
ため息をついて、ふと窓を見る。
ソラ君とロウさんが仲良さそうにしているのが見える。
「いいなあ」
どうやって2人は知り合って、恋人になったんだろう。
愛し合うってどういうことなんだろう。
どうして羨ましいと思うんだろう…
「何で、だろう」
***
次の日、僕は思い切ってソラ君とロウさんの2人に相談することにした。
ロウさんは僕の事友だちと思ってないだろうから、相談しても駄目かもしれない。
だけど、エースさんの事知ってる人に聞きたいと思ったんだ。
なんでかは分からないけど。
僕が訪ねていくと、ソラ君とロウさんは何だか険悪な雰囲気だった。
相談しづらい…
でも、ソラ君が俺に聞いてくれた。
「どうしたの、急に」
だから、何とか相談することが出来た。
「ねえ、ソラ君、ロウさん。
今の僕に価値って、あると思う?」
2人は顔を見合わせて、何を言ってるんだという顔をした。
だから僕は自分の考えを伝えた。
今の自分はどこにも売れない。
それって価値が無いってことなんじゃないか…って。
エースさんが僕を小さいときに見初めたってことは、今の僕じゃ駄目なんじゃないかって事まで。
するとロウさんは笑って言った。
「くだらないことで悩んでんなお前!
アイツにとっちゃ、お前がたとえジジイになったとこで、価値は変わんないよ。
オレだって、ソラが子どもでもおじいちゃんでも抱けるよ?
そんなことよりだいぶ大きくなったな!
背も高くなってきたし!」
だって。ほんとかなぁ?
背のことは本当だけど…
ロウさんはいいな、背が高くて、体も大きいし。
何となくじとっとした目で見てしまう。
「だーいじょぶだって。
オレ、エースのことは良く知ってるから!
今度からそういうのオレに聞けよな!」
遠回しに、ソラ君にもう相談しにくるなって言われてしまった。
「そう…ですか」
「そうだよ。
大体そんな事エースに聞けばいいじゃん。
それをソラにいちいち…友だちだか何だか知らないけど、近過ぎ・邪魔・ムカつく。
ソラはオレのものなの。
お前のものじゃないの。
友だちだって言うんなら、迷惑かけに来んなよ。
お前賢いんだろ?
だったら自分で考えりゃいいじゃねーか」
「ロウさん!!」
目の前で喧嘩が始まった。
「何だよソラ。
オレよりこいつのほうが好きなのか!?
何でこいつの事大事にすんだよ!!
ソラは俺だけ大事にしてりゃいいんだよ!!」
ロウさんのあまりの剣幕に固まっていたら、ソラ君がキレた。
「ロウさん…そんなに自分勝手な人だったなんて、知らなかった」
「なんで!ソラは俺が一番じゃないのかよ!!」
ロウさんが叫ぶけど、ソラ君は怒ったままだ。
「さっきも言ったよね?
カラス君とおれが仲良くする理由。
ロウさんはカラス君がどうなってもいいんだ」
「そ…れは」
「おれはロウさん以外の人に欲情したりしない。
セックスするのもキスするのもロウさんだけ。
それだけじゃ足りないの?
いつから俺以外の人の事を考えられなくなったの?」
「そ、れは…」
ソラ君が怒って、ロウさんが静かになった。
「大体、さっきのカラス君の話の内容を聞いて何とも思わないなんてね。
『くだらない』って嗤って、おまけに友だちとの縁切りまで迫るんだね。
ロウさんはそうやって人間を馬鹿にするんだね。
それはもう眷属じゃなくて化物だよ」
「……ごめん」
「謝るのは俺にじゃないでしょ?」
「……うん。
ごめんな、クロエ…」
「そんな、気にしなくていいです。
僕はトーリの人たちにとっては無価値なんだって、はっきりして良かったです」
「カラス君!!」
ソラ君はまだ何か言いたそうだったけど、僕は1つ問題が解決してすっきりした。
だから、僕は躊躇いなくもう一つの相談をすることが出来た。
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