それはダメだよ秋斗くん!

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「ありがとうな、気持ちよかった」

 木下家の風呂を借り、身を清めた僕はベッドの縁に腰をかけながらバスタオルで髪を拭っていた。そんな僕の髪を指先で弄り、隣に座った秋斗がひとりごちる。熱っぽい瞳に見つめられ、何も言えないまま手だけを動かした。

「……ずっとこうしたかった」

 グイと身を寄せた秋斗に耳元で囁かれ、身が強張る。先ほどまでの光景がフラッシュバックし、口の中の唾液を嚥下した。ドキドキと心臓が跳ね、火照っている体に冷や汗が滲む。

「好きで好きで、たまらなかった。八雲くんが大学に通うため引っ越すって知った時、ショックで寝込んだんだぜ。知らなかったろ?」

 首に腕を回され、抱きしめられた。掠れた声に、脳が沸騰する。耳朶に当たる熱い吐息に、思わず喘いでしまいそうだった。
 顎を掴まれ、視線を無理やり合わされる。茶色みが濃い瞳に見つめられ、頬が引き攣る。秋斗は真剣な表情をしており、気まずさが芽生えた。顔を背けようとしたが、それを彼の強い力で阻まれる。

「……んっ!」

 秋斗が唇に吸い付いてきた。驚きのあまり、口を開いてしまう。その隙間に舌が入り込み、じゅるりと唾液を吸われる。彼の肩に手を乗せ引き剥がそうと力を込めた。しかし、倍の力で抱き寄せられ抵抗さえできない。そのままベッドへ押し倒された。繋がったままの唇は離れたりくっついたりを繰り返す。吐息が漏れ、唾液が頬を伝った。
 肩に込めていた力が抜ける。秋斗の舌が愛しげに口内を擽るたびに、脳の奥がぼんやりとしてきた。
 そのケは一切ないはずだ。男を好いと思ったこともなければ、強引に扱われて興奮するヘキもないはずだ。それなのに、彼にこうやって嬲られている現状に頗る興奮している自分がいる。
 ────もっと暴いてほしい。もっとめちゃくちゃにしてほしい。
 ふと浮かんだ言葉がチクチクと脳を刺激する。拒絶しなければいけないという理性を溶かし、跡形もなく消し去ってしまうような気がした。
 秋斗は僕の葛藤など気にしていない様子である。頬を掴み逃さないように固定した彼は、舌を喉の奥にまで捩じ込んできた。嘔吐感に震える体と喉。それらを楽しむように何度も舌先で柔らかい粘膜を撫でる。その度に背筋が震え、涙が滲んだ。
 ゴリ、と固いものが体に当たり、彼の性器だと理解する。
 ────若いなぁ。
 先ほど出したばかりのそこは、元気よく育っている。発情期の犬如く腰を擦り付けられ、こちらまでその気が芽生える。
 ────やばい、気持ちいい。
 酸欠になる程の激しい口付けで眩暈さえ覚えているにも関わらず、蕩けるような快感が僕を支配していた。何度も唾液を交換しあい、時折舌を甘噛みされる。ゴツゴツとした分厚い手が耳の後ろを擽り、腹の奥がキュンと疼いた。

「は、んっ……んっ、んぅ……!」

 全体重をかけられ、肺が圧迫される。大きな秋斗の体に押さえつけられ身動きができない僕は、されるがままだ。
 ────もっと乱暴にしてほしい。
 ハチミツのように甘い快感とは裏腹に、鈍器で殴られるような暴力性を欲している自分が怖くなった。
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