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15 笛ラムネ
しおりを挟む「すっごく意地悪で根性がひん曲がってたヤツが急に良い人になるなんてことあると思う?」
ラナの問いに〈笛ラムネ〉を咥えていたガブリエラが返事の代わりにピーと音を鳴らした。
「なによ、どっちなのよ。有るってこと?」
ピー⤴。
「無いってこと?」
ピー⤵。
「ちょっとマジメに答えてよ」
「すぐ怒る~」
ガブリエラはニヤニヤしている。
「まあ、有るんじゃない?人間だって成長するんだろうし」
「でも、人の本質とか性格ってそんなに簡単に変わる?」
「そうとも言うね。まあ、人それぞれ、ケースバイケースとしか言い様がない」
「そうだけどさ」
「どしたん?」
「・・・んー。例えばさ、大切な友達が嫌なヤツに傷つけられたとするじゃない?で、そいつのこと孫の代まで祟ってやる!って思ってたのに、なんか、そいつの言葉で救われてる自分がいたりして。
・・・それって裏切りだよね?」
「う~ん。具体的な話が分からないからなんとも言えないけど、一度でも罪を犯したらどんなに悔いても一生赦してもらえないとしたら生きていくのは辛いよね。
まあ、罪の大きさにもよるだろうけどさ」
「・・・私だって他人の事とやかく言えるような清廉な人間じゃないってのは分かってるんだ」
「まあ、私なんてラウザー家の人間ってだけで憎まれてたりもするからね。
生きてるってだけで誰かを傷つけてるってこともあるよ」
ラナはテレンスとパティーとの話をした。
「ホントはね。テレンスを憎む一番の理由はそれじゃないのかも知れないんだ」
この話は誰にもしたこと無いんだけど、そう前置きしてからラナは話出した。
「パティーが学校に来なくなって、私はテレンスに文句を言いに行ったのよ。
『私の大切な友達を傷つけたことを許さない!』って。
そしたらテレンスが、
『許さないって何?僕にどうしろって言うの?』
って言うわけ。
カチンと来たから、謝ることもできないのか?って詰め寄ったら、
『謝ったからってアイツの顔が気持ち悪いのは変わらないだろう?』
って。
私が呆然としていると、
『そんなに言うならさ、お前がアイツの顔と代わってやればいいじゃない?アイツは外見なんかに動かされない崇高な精神と人間性とやらを兼ねそなえてんだよな?』
って。
『代われるなら代わってやりたいわよ!』
って私が言ったら、
『ほらね!現実的には無理だって分かってるから安心してそんなこと言えんだろ?
ホントのホントに入れ替えが可能なら、お前は本心で言えるのかよ?アイツの顔と入れ替えたいって』
何も言えなくなった私にテレンスは言ったんだ。
『僕とオマエの間にどれだけの違いがあるんだよ?』
って」
秋風がベンチ前に枯れ葉を運んできた。
ガブリエラのピョ~~~~⤵があたりに物悲しく響いた。
~僕たちの文化では古来から月は邪悪な物、不吉な物っていう位置づけだっただろう?
僕は子供の頃から月って綺麗だなって思ってたんだけどさ、そんなこと言おうもんなら親はもちろん特に年寄りなんかに
「月に心を奪われると魔物に魅入られる」
なんて忌み嫌われたもんだったよ。
ところがさ、ヴェートスの転校生が来たって言っただろ?
彼のコミュニティじゃさ、月を愛でる行事があるんだって言うじゃないか。
農業神と結びついたものらしいんだけどね、月に酒やドングリ餅なんかを供えて宴をするんだって。
それでさ、僕達こっそり寮を抜け出して校舎裏の丘に登ったんだ。
今まで気付かなかったけど満月の光って思いの外明るいんだね。
月の光に照らされた道を僕達は迷うことなく歩いた。
そして僕らは頂上に着くと、それらしい大きな石の上に隠し持って来た酒と餅を置くと、月の女神に祈りを捧げた。
もっとも僕には祈りの言葉なんて分からないからヤツの隣で神妙な顔をしてただけだけどさ。
とにかくその夜の月は讃美に値いしたよ。
その荘厳な輝きを眺めながらヤツの独特の節回しの歌みたいな祈りを聴いていると、自然と涙が流れて来たんだ。
言葉の意味なんてちっとも分かんないのに。
感動するってこういうことなのかな、って。
その時僕は君のこと考えたんだ。
君にもこの美しい月を見せたいって。
君ならきっと月に祈りを捧げるなんて禍々しい、なんて言わないでくれるだろう?
それから二人で酒を飲んでドングリ餅を食べた。
「酒にドングリ餅は合わないな」
それが僕達の感想だ~
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