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16 話題に困ったら怪談に限る
しおりを挟む~子供の頃は恥ずかしげもなく大声で歌ってたの。ご機嫌でね。
歌手になろうなんて思ったことはないわよ。
歌うことが大好きだっただけ。
それがある時父から「お前は音痴だな~」って言われちゃって、それから歌おうとすると喉がグッと締まったみたいになって上手く声が出せなくなっちゃった。
今じゃ一人でこっそり鼻歌唄うのもなんだか緊張しちゃう。
カトレアでは芸術の単位で音楽か美術を選ぶんだけど、そういうわけで私は美術。決して絵が上手いわけじゃないんだけどね。
絵を描くことも子供の頃は自由に楽しくやっていたなって思うの。
今はどうしても他人の目が気になって上手に描こうとしてしまうから線が硬くなって色使いも無難な感じで落ち着いちゃってる。
一言で言えば、つまんない絵。
音痴でも無邪気に楽しく歌えて、下手くそな絵でも伸び伸びと自由に描けて。
そんな自分ならいいのに。
才能の無い人間は何をやっても無駄だと思う?
他人に披露する価値の無い程度の物しか生み出せない人間は何もしない方が良いと思う?
周囲の人達は卒業したら良い所に就職して良い相手を見つけて結婚しろって言うの。
それが普通の幸せだって。
もう少し勉強がしたいって言ったら、
「特別優秀なわけでもない人が勉強したって無意味」
だって。
カトレア程度の人間がもっと勉強したいだなんて、ちゃんちゃらおかしい事なのかな?~
ラナは書きかけた手紙を破いて捨てた。
『これじゃいくらなんでもメグとはかけ離れてる。
いつの間にかテレンスの手紙を心待ちにしている自分がいるけど、あくまでもテレンスの手紙の相手は私じゃない。メグだ。
優しい言葉で寄り添ってくれるのも、美しい月を見せたいのも私じゃなくてメグにだ。
もっとメグが書いてもおかしくないような日常的な当たり障りのない内容にするべきなのよ。
だって私はメグとして手紙を書かなきゃいけないんだから。
だいたいテレンスに自分の悩みを打ち明けるような手紙を書いてどうするつもりなのよ。
アイツが人間的に成長して今は良いヤツになったとしてもそれで過去の悪行がチャラになるわけじゃない!
アイツはパティーをあんなにも傷つけたんだもの!』
~『学校の7不思議』みたいなものがリバティにもあるかしら?
カトレアには7つは無いかも知れないけど、言い伝えというか怪談というか、そんなものがあるわ。
例えば東棟一階の大講堂の教壇の下には地下道の入口があって、市庁舎と繋がってるとか。
現在市庁舎のある場所にはかつて王宮があって、カトレアには王女様とか高位貴族のご令嬢達が在籍していたの。
戦争とか有事の時の避難経路だったという噂なの。
まあ、そんなものが本当にあるのか真偽のほどは不明なんだけどね。
その通路の先に秘密の小部屋が有って、亡命してきた敵国のお姫様と王子様が密会してたっていうロマンチックな言い伝えがあるのよ。
もっとも敵国のお姫様が亡命してくるはずはないし、嘘っぱちに決まってるんだけど、ホントかどうかなんてどうでもいいのよ。 女の子はそういう話が好きってこと。
男の子はこんな話されると舌出してゲーって言うんでしょうけど。
それから北棟3階のトイレには鏡が無いの。
有ると映っちゃうからなんだって。
「そりゃ鏡だもん、何か映るだろ?」
なんて言ってるんじゃないでしょうね?
なんでも設計に問題があったみたいでね、トイレの入口のドアを開くと廊下の突き当りの壁に掛けられた大きな鏡と洗面所に設置された鏡が合わせ鏡状態になっちゃうらしいの。
それでずっと昔の生徒が合わせ鏡の中から出てきた悪魔に連れ去られた、とかなんとか。
だったら廊下の鏡を外せばいいと思うでしょ?壁に埋め込まれたその鏡を外そうとすると必ず事故が起こって職人さんが怪我をするから外せないんですって。
みんな気味悪がって北棟3階で授業がある時はわざわざ別の階のトイレに行くのよ~
~楽しい手紙ありがとう。
どこの学校にも怪談の2つ3つはあるもんだよね。
だけど僕は愛する人との密会場所が地下通路だなんてイヤだな。
ネズミとか嫌な虫とかいそうだし、第一じめじめしててカビ臭そうじゃない?
僕は生まれ変わってもワインにはなりたくないなあ。
秘密の恋ってドキドキするのかな?
僕は好きな人とは堂々と青空の下を歩きたいよ。
他人に知られないように隠しておくのは嫌だな。
僕の好きな人はこの人だよって言いたいもん。
手を繋ぐのは恥ずかしいから、ちょっと離れて歩くけど。
時々振り返ってちゃんとついて来てるか確認したりしてさ。
そうそう怪談話だよね。
流石はカトレア、怪談もなんだか格調高いよね。
リバティにも幽霊話はあるんだけどさ、
『夜中に寮の廊下を走り回るトレーニングウェアの男』
とか。
なんか字にしただけでも騒がしいよね。
言い伝えによると、寮対抗運動会でリレーの選手にされた生徒が練習中に亡くなったらしいんだ。
彼は元々躰が弱くて運動は苦手だったのに、先輩達からの意地悪で選手にされたんだって。
「オマエのせいで負けたらどうなるか分かってんだろうな!」
って言われて必死で毎晩練習していた最中の事故だったんだ。
それからというもの、深夜にドタドタと誰かが走り回る音で起こされた生徒が廊下に出ると、走って来た男にタオルで首を締められるんだって・・・。
な~んてね、これはイジメはダメだよ!っていう、寮に代々伝わる啓蒙話なんだ。
新入生が入寮すると必ず聞かされてね、その日の深夜に先輩がトレーニングウェアを着てドタドタ廊下を走り回るんだけど、新入生達は震え上がってトイレにも行けずに困るんだ~
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