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ラナは大学に通い、ガブリエラは毎日淡々と仕事をしていた。
ガブリエラは時々ユージンのお母さんに料理を教えてもらって美味しいものが作れるようになっていた。
「なんでガブリエラがタイラー家伝統の味を継承してるわけ?」
「ラナも一緒に習えば?」
「いや、私は作ってもらったものを食べるのが幸せなの」
「大学の方はどう?」
「まあ、基本的には楽しいんだけどさ」
ラナはレモネードを一口飲んだ。
「まあさ、第1大学に来てる子たちって元々秀才エリートじゃない?
鷹揚な性格の人もいるけど、プライド高い人も多いんだよね。
だから私が編入してきたことを快く思わない人もいてさ」
「なんで?」
「うん。正規のルートじゃない、ズルして入った、みたいな」
「・・・あんなに努力したんだからさ、堂々としてなよ」
「うん。気にしないようにしてる。
してるんだけどさ~。なんか、リベラルアーツの寮にいた時のこととかフッと思いだしちゃうんだよね~」
明るく言ったラナの声は少し震えていて、それを誤魔化すようにラナはストローを口に含んだ。
ガブリエラは日々仕事をし、コルムとの生活を大切に暮らしているが、やはり「このままでいいのか?」という気持ちは常に心の片隅にあった。
そんな時いつも彼女は肌身離さずつけているコルムが作ってくれたペンダントを握りしめる。
そのときガブリエラはふと思った。
『このステキなデザインをアクセサリーにして一般の人達に販売してはどうか?』
思い立ったが吉日。
ガブリエラはコルムからヴェートスの伝統紋様について教えてもらうとデザインを始めた。
さすがは高級品に囲まれて育ったお嬢様。ガブリエラのデザインは伝統を踏襲しつつモダンかつハイセンスだった。
デザイン画を基にコルムが試作品を作る。
それをヴェートスの職人に作ってもらう。
出来上がったものはコルムの伝手で試しにブティックが置いてくれた。
評判は上々だった。
その頃ラナはタウン誌でアルバイトをしていたので、編集長に頼んでガブリエラのアクセサリーのことを写真入りで記事に載せた。
広告塔としてコルムにアクセサリーを身につけさせることで、若い女の子達が食いついた。
ガブリエラの元には雑貨屋などからも商品の問い合わせが来るようになったが、こうなるとチマチマ作っていたのでは間に合わない。
ガブリエラは大々的にブランディングして、アクセサリーに留まらずファッション全般、生活雑貨に至るヴェートスデザインの商品を制作販売する会社を設立することを思いついた。
しかし、その為には資金が要る。
コルムが綿密な事業計画書を作成し、銀行に融資を申し込んだ。
結果は惨敗。
どこも貸してはくれなかった。
「計画書の出来は素晴らしいよ。
資金さえあれば成功するんじゃないかと私は思うんですけどね」
担当者はすまなさそうに言った。
「担保のことですか?でも計画書に書いた通り、当面会社勤めを辞めるつもりはありませんし、お願いしている融資金額も大きくはありません。
事業規模は段階を踏んで拡大する予定で無理のある計画はしていません。
十分返済できる見込みがあるのでお願いしているのですが・・・」
担当者は目を反らすように言った。
「でも、・・・ねえ、分かるでしょ?
出資者の中には根強い差別意識を持っている人も一定数はいらっしゃるんですよね」
ガブリエラの隣でコルムは拳を固く握った。
そしてまたガブリエラは会社勤め、コルムは勉強とバイトの生活に戻って行った。
ヴェートスの製品を世に流行らせて、雇用を生み出してヴェートスの地位も向上させるんだ。
『いつかヴェートスとヴェートスじゃ無い人達が肩を並べて協力して働く場所を創る』
若者らしい夢と希望に満ちた一日の疲れを吹き飛ばす毎夜の語らいは、急速に萎んでしまった。
そしてまた何もなかったかのように淡々と日々の生活に追われていたある日、融資を断った銀行の担当者がアパートを訪れた。
「融資が可能になりました!」
「どうして急に?」
ガブリエラとコルムはぽかんとしていた。
「強力な保証人が現れたんですよ」
「・・・保証人?」
「ジュリアン・ラウザー元上院議長です」
ガブリエラは時々ユージンのお母さんに料理を教えてもらって美味しいものが作れるようになっていた。
「なんでガブリエラがタイラー家伝統の味を継承してるわけ?」
「ラナも一緒に習えば?」
「いや、私は作ってもらったものを食べるのが幸せなの」
「大学の方はどう?」
「まあ、基本的には楽しいんだけどさ」
ラナはレモネードを一口飲んだ。
「まあさ、第1大学に来てる子たちって元々秀才エリートじゃない?
鷹揚な性格の人もいるけど、プライド高い人も多いんだよね。
だから私が編入してきたことを快く思わない人もいてさ」
「なんで?」
「うん。正規のルートじゃない、ズルして入った、みたいな」
「・・・あんなに努力したんだからさ、堂々としてなよ」
「うん。気にしないようにしてる。
してるんだけどさ~。なんか、リベラルアーツの寮にいた時のこととかフッと思いだしちゃうんだよね~」
明るく言ったラナの声は少し震えていて、それを誤魔化すようにラナはストローを口に含んだ。
ガブリエラは日々仕事をし、コルムとの生活を大切に暮らしているが、やはり「このままでいいのか?」という気持ちは常に心の片隅にあった。
そんな時いつも彼女は肌身離さずつけているコルムが作ってくれたペンダントを握りしめる。
そのときガブリエラはふと思った。
『このステキなデザインをアクセサリーにして一般の人達に販売してはどうか?』
思い立ったが吉日。
ガブリエラはコルムからヴェートスの伝統紋様について教えてもらうとデザインを始めた。
さすがは高級品に囲まれて育ったお嬢様。ガブリエラのデザインは伝統を踏襲しつつモダンかつハイセンスだった。
デザイン画を基にコルムが試作品を作る。
それをヴェートスの職人に作ってもらう。
出来上がったものはコルムの伝手で試しにブティックが置いてくれた。
評判は上々だった。
その頃ラナはタウン誌でアルバイトをしていたので、編集長に頼んでガブリエラのアクセサリーのことを写真入りで記事に載せた。
広告塔としてコルムにアクセサリーを身につけさせることで、若い女の子達が食いついた。
ガブリエラの元には雑貨屋などからも商品の問い合わせが来るようになったが、こうなるとチマチマ作っていたのでは間に合わない。
ガブリエラは大々的にブランディングして、アクセサリーに留まらずファッション全般、生活雑貨に至るヴェートスデザインの商品を制作販売する会社を設立することを思いついた。
しかし、その為には資金が要る。
コルムが綿密な事業計画書を作成し、銀行に融資を申し込んだ。
結果は惨敗。
どこも貸してはくれなかった。
「計画書の出来は素晴らしいよ。
資金さえあれば成功するんじゃないかと私は思うんですけどね」
担当者はすまなさそうに言った。
「担保のことですか?でも計画書に書いた通り、当面会社勤めを辞めるつもりはありませんし、お願いしている融資金額も大きくはありません。
事業規模は段階を踏んで拡大する予定で無理のある計画はしていません。
十分返済できる見込みがあるのでお願いしているのですが・・・」
担当者は目を反らすように言った。
「でも、・・・ねえ、分かるでしょ?
出資者の中には根強い差別意識を持っている人も一定数はいらっしゃるんですよね」
ガブリエラの隣でコルムは拳を固く握った。
そしてまたガブリエラは会社勤め、コルムは勉強とバイトの生活に戻って行った。
ヴェートスの製品を世に流行らせて、雇用を生み出してヴェートスの地位も向上させるんだ。
『いつかヴェートスとヴェートスじゃ無い人達が肩を並べて協力して働く場所を創る』
若者らしい夢と希望に満ちた一日の疲れを吹き飛ばす毎夜の語らいは、急速に萎んでしまった。
そしてまた何もなかったかのように淡々と日々の生活に追われていたある日、融資を断った銀行の担当者がアパートを訪れた。
「融資が可能になりました!」
「どうして急に?」
ガブリエラとコルムはぽかんとしていた。
「強力な保証人が現れたんですよ」
「・・・保証人?」
「ジュリアン・ラウザー元上院議長です」
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