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しおりを挟むラナとガブリエラはカレッジを卒業した。
ユージンが勉強を教えてくれた甲斐もあってラナは西部第1大学のセントマーガレットカレッジの3年に編入を果たした。主に文学を専攻するコースだ。
その年リベラルアーツカレッジから第1大学へ編入したのはラナだけで、他には第2大学と第3大学に合格した者が数名いた。
ガブリエラは我が事のように喜んでくれたが、二人の間には越えられない溝のようなものが横たわってもいた。
卒業式には東部からラナの両親も駆けつけ、鼻が高いと喜び、ユージンと
「これからも娘をよろしく」
と笑顔で握手を交わした。
その様子を少し離れた所から寂し気に見ていたガブリエラの気持ちを考えると、ラナは胸が詰まる思いがして素直に喜べなかった。
ガブリエラにお祝いの言葉を贈る親族はいなかったし、コルムも仕事で来られなかった。
ラナはガブリエラに近づいて確かめるように言った。
「私達、これっきりってことはないわよね?」
ちょっと間があってからガブリエラが応えた。
「当たり前じゃない。私達、親友でしょ?」
「ガブリエラ。情熱さえあれば、またいつからでも勉強はできるわ」
ガブリエラは一つ大きく息を吐いた。
「あなたに出会えたから、私は今ここにいるんだと思うの。
私は何も後悔していないわ。
ありがとう。ラナ」
ガブリエラの顔は泣くのを我慢しているみたいだった。
卒業式にはパティーも花束を持って駆けつけてくれて、
「卒業おめでとう!第1大学に進学するなんて凄いわ!」
と屈託のない笑顔で惜しみない賛辞を贈ってくれた。
パティーはドレスメーカーの専門学校に通っていて、
「ラナのウエディングドレスは私が作るからね!」
と会うたびに言ってくれる。パティーの花束にはメラニーからの卒業を祝うカードも添えられていた。
それからすぐにガブリエラは建設会社の事務員として働き始めた。
フルタイムで働けるのと、ガブリエラの分の学費が要らなくなったので暮らし向きは随分楽になったようだった。
一方ラナは秋の編入までの間2ヶ月間の夏休みを有意義に過ごそうと考えていた。
10代の内にしかできない青春の思い出を作りたかったが、ユージンとて暇ではなかった。
いよいよ新学期からは専門的に医学の勉強が始まるのでしっかりと予習しておく必要があった。
ラナも秀才達と机を並べることになるのだから準備しとかなければいけない。
結局二人は大学の図書館で貴重な夏の大半を過ごした。
「今年は花火見れそうだな」
来週に迫った港花火大会の告知を見ながらユージンが言った。
去年は荒天で中止になったのだ。
「あの場所で?」
ラナは声を弾ませ、ユージンはニカッと笑った。
「あのさ、ガブリエラ達も誘っちゃダメ?」
「う~ん。できればラナと二人っきりがいいんだけど、まあ、どっちみち近所のミカン農家のオジサンとかも来るからロマンチックにってわけにもいかないし。
まあ、パティーさんなんかも呼んで皆でワイワイいきますか!」
当日、ラナとユージン、ガブリエラとコルム、パティーとメラニー、デビットとジュリアの総勢8名が秘密の岩場に着くと、近所の農家の人も数名椅子を出してスタンバイしていた。
ユージンがソテツの植わった茂みに隠していた物を引っ張り出してセットする。
敷物を敷いて瞬く間にバーベキューの用意が出来上がった。
「なんだよ、これオマエ一人で準備したのかよ?」
コルムが呆れたように訊く。
「花火は良く見えるけど、あっちみたいに出店はないからな」
「人を喜ばせる天才だな」
オジサン達が、
「いいな~。バーベキューか」
と覗きに来る。
「お肉もたくさんありますから一緒に楽しみましょう」
「そうか?じゃあ、畑からトウモロコシ取ってくるから」
水の張った桶にはビタールも冷やしてあった。
水平線に太陽がこの世のものとは思えない煌めきを纏って沈むのを一同は歓声を上げて見送った。
すると一気に夕闇が迫ってきて、ドーンという音と共に大輪の花火が打ち上がった。
次々と打ち上がる花火に感動しながらも、しっかり肉を焼き、食べて飲んで騒いでオジサン達とも仲良くなった。
焼きトウモロコシも美味しくてガブリエラも楽しんでいる。
ジュリアとデビットはマシュマロを焼くのに夢中だ。
メラニーが、
「こんなに楽しいの初めて!
連れて来てくれてありがとう!」
と叫ぶように何回も言うので、ラナは何故だか泣きたいような気持ちになった。
歪んだ顔でイジメられてきたメラニーにはこんな友達同士の何気ないふれあいが無かったのかもしれない。
片付けをする時にユージンがこっそり、
「ホントはでかい花火の下でキスしたかったんだけど、来年までお預けだね」
と耳打ちした。
帰り際にパティーが、
「来年も皆で一緒に来ようね!」
と言い、皆がオーッ!と言った。
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