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3話
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もう日曜日になっている。海咲は僕の家に迎えに来てくれるらしい。待っているとインターフォンが鳴った。慌てて出るとやっぱり海咲で僕は嬉しくなる。
「おはよう、奏」
「おはよう、海咲くん。喉渇いたでしょ?中でお茶を飲んでからいこうよ?」
そう誘ったら海咲もそうだなと頷いてくれた。
「いやあ暑いな」
「本当に。家の中はまだいいんだけどねえ」
僕は冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出してグラスに注いだ。
「どうぞ」
グラスを海咲の前に置く。海咲は一息でお茶を飲み干していた。それだけ暑いのだ。迎えに来てくれて嬉しい。
「ああ、生き返った。よし、行くか」
「うん」
僕はお母さんに断りを入れて出かけた。もちろん、お土産の菓子折りも忘れない。
*
海咲の家は相変わらず猫ちゃんがいっぱいいる。どうやら玄関先に猫ちゃんが捨てられていることが多々あるらしい。命を弄んでいるようで僕は悲しい気持ちになった。
「みゃあ」
僕を見つけるなりとたたと駆け寄ってきてくれる子もいる。猫ちゃんいいなあ、可愛いし癒される。この子の名前はビビちゃんといった。もうおばあちゃん猫なのだけどまだまだ現役だ。
「ビビちゃん、元気だった?」
僕がよしよしと体を撫でるとビビちゃんがみゃあと返事をする。他の子もわあっときた。あぁ、可愛い。
「おし、そろそろ勉強始めるか」
「うん」
僕たちは教科書とノートを広げた。学期末試験というのは範囲が広い。高校の授業は、こまめに復習していないとすぐ置いていかれてしまう。テスト範囲を確認して、苦手な問題を何度も解いてみる。地道だけどそれが一番だ。
「く・・この問題めんどいな」
海咲が頭を抱えている。どうやら古文の問題らしい。一方で僕は数学の教科書を見直していた。海咲が困ったように教科書とノートを交互に見ている。僕は隣から覗き込んだ。ここなら教えてあげられるかもと思ったからだ。
「海咲くん、そこの詞がここにかかってくるんだよ」
「あ、そうか。なるほど。さんきゅ」
僕たちはしばらく黙って勉強を続けた。40分程時間が経過しただろうか。部屋に海咲のお母さんが入ってきた。
「海咲、お母さん出かけるからね。お昼は冷蔵庫に入ってるし、ジュースも好きなの飲んでいいから。おやつはドーナツがあるからね」
「ああ、分かった。行ってらっしゃい」
海咲のお母さんは近くのスーパーでパートタイムで働いているらしい。お父さんは海外に単身赴任しているようだ。海咲がここに来たのは、お父さんの定年が近いこともあるらしい。家を買って落ち着こうと決めたのだそうだ。
「そろそろ休憩にしないか?喉渇いたし」
「うん」
海咲がキッチンに向かっている間、僕は周りの猫ちゃんを見つめた。どの子も皆、可愛いんだよね。触らせてくれないかなぁと期待していたら海咲が戻ってきた。
「お待たせ。とりあえずお茶とジュース持ってきた」
「ありがとう」
海咲の家に来ると必ず出てくるのが、あのレモンスカッシュだ。すごく美味しいんだよね。話を聞いたら海咲のお母さんのお手製らしい。
「お前、学校の自販機でもレモンスカッシュばかり飲んでるだろ?」
僕はそれにドキッとなってしまった。
「なんでそれを…」
「いや、前にたまたま見かけたから」
僕は顔が熱くなった。意外と人は人を見ている。
「なあ、奏?お前は俺のことどう思う?」
「優しいクラスメイト?」
まさか好きな人だとは言えない。しかも男同士でなんてすごく恥ずかしいし。海咲は僕の返事に明らかに落胆した表情を見せた。
「なぁ、奏」
いつの間にか僕は床に押し倒されている。僕は1人ドキドキしていた。
「海咲くん?」
「奏、俺は・・・」
海咲が何を言おうとしているのか僕には分からない。
「悪い、なんでもない。ジュース飲もう」
海咲に起き上がらせてもらって僕はレモンスカッシュを飲んだ。海咲はもしかして僕を好きでいてくれたりするんだろうかと僕の中で淡い期待が膨らんだ。それならそうはっきり言ってほしかった。
でもそれは僕にも同じことが言える。お互いに傷つくのが怖いだけだ。
好きっていう気持ちは難しい。数式のような完璧な答えは出せないのだ。
こんなにそばにいるのに本当の気持ちが分からなくてもどかしい。ふと視線を上げたら海咲と目が合った。にっと彼は笑ってくれて、僕の胸の高鳴りはますます速くなった。
「おはよう、奏」
「おはよう、海咲くん。喉渇いたでしょ?中でお茶を飲んでからいこうよ?」
そう誘ったら海咲もそうだなと頷いてくれた。
「いやあ暑いな」
「本当に。家の中はまだいいんだけどねえ」
僕は冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出してグラスに注いだ。
「どうぞ」
グラスを海咲の前に置く。海咲は一息でお茶を飲み干していた。それだけ暑いのだ。迎えに来てくれて嬉しい。
「ああ、生き返った。よし、行くか」
「うん」
僕はお母さんに断りを入れて出かけた。もちろん、お土産の菓子折りも忘れない。
*
海咲の家は相変わらず猫ちゃんがいっぱいいる。どうやら玄関先に猫ちゃんが捨てられていることが多々あるらしい。命を弄んでいるようで僕は悲しい気持ちになった。
「みゃあ」
僕を見つけるなりとたたと駆け寄ってきてくれる子もいる。猫ちゃんいいなあ、可愛いし癒される。この子の名前はビビちゃんといった。もうおばあちゃん猫なのだけどまだまだ現役だ。
「ビビちゃん、元気だった?」
僕がよしよしと体を撫でるとビビちゃんがみゃあと返事をする。他の子もわあっときた。あぁ、可愛い。
「おし、そろそろ勉強始めるか」
「うん」
僕たちは教科書とノートを広げた。学期末試験というのは範囲が広い。高校の授業は、こまめに復習していないとすぐ置いていかれてしまう。テスト範囲を確認して、苦手な問題を何度も解いてみる。地道だけどそれが一番だ。
「く・・この問題めんどいな」
海咲が頭を抱えている。どうやら古文の問題らしい。一方で僕は数学の教科書を見直していた。海咲が困ったように教科書とノートを交互に見ている。僕は隣から覗き込んだ。ここなら教えてあげられるかもと思ったからだ。
「海咲くん、そこの詞がここにかかってくるんだよ」
「あ、そうか。なるほど。さんきゅ」
僕たちはしばらく黙って勉強を続けた。40分程時間が経過しただろうか。部屋に海咲のお母さんが入ってきた。
「海咲、お母さん出かけるからね。お昼は冷蔵庫に入ってるし、ジュースも好きなの飲んでいいから。おやつはドーナツがあるからね」
「ああ、分かった。行ってらっしゃい」
海咲のお母さんは近くのスーパーでパートタイムで働いているらしい。お父さんは海外に単身赴任しているようだ。海咲がここに来たのは、お父さんの定年が近いこともあるらしい。家を買って落ち着こうと決めたのだそうだ。
「そろそろ休憩にしないか?喉渇いたし」
「うん」
海咲がキッチンに向かっている間、僕は周りの猫ちゃんを見つめた。どの子も皆、可愛いんだよね。触らせてくれないかなぁと期待していたら海咲が戻ってきた。
「お待たせ。とりあえずお茶とジュース持ってきた」
「ありがとう」
海咲の家に来ると必ず出てくるのが、あのレモンスカッシュだ。すごく美味しいんだよね。話を聞いたら海咲のお母さんのお手製らしい。
「お前、学校の自販機でもレモンスカッシュばかり飲んでるだろ?」
僕はそれにドキッとなってしまった。
「なんでそれを…」
「いや、前にたまたま見かけたから」
僕は顔が熱くなった。意外と人は人を見ている。
「なあ、奏?お前は俺のことどう思う?」
「優しいクラスメイト?」
まさか好きな人だとは言えない。しかも男同士でなんてすごく恥ずかしいし。海咲は僕の返事に明らかに落胆した表情を見せた。
「なぁ、奏」
いつの間にか僕は床に押し倒されている。僕は1人ドキドキしていた。
「海咲くん?」
「奏、俺は・・・」
海咲が何を言おうとしているのか僕には分からない。
「悪い、なんでもない。ジュース飲もう」
海咲に起き上がらせてもらって僕はレモンスカッシュを飲んだ。海咲はもしかして僕を好きでいてくれたりするんだろうかと僕の中で淡い期待が膨らんだ。それならそうはっきり言ってほしかった。
でもそれは僕にも同じことが言える。お互いに傷つくのが怖いだけだ。
好きっていう気持ちは難しい。数式のような完璧な答えは出せないのだ。
こんなにそばにいるのに本当の気持ちが分からなくてもどかしい。ふと視線を上げたら海咲と目が合った。にっと彼は笑ってくれて、僕の胸の高鳴りはますます速くなった。
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