君とレモンスカッシュ〜ずっと片想いしていました〜

はやしかわともえ

文字の大きさ
3 / 41

3話

しおりを挟む
もう日曜日になっている。海咲は僕の家に迎えに来てくれるらしい。待っているとインターフォンが鳴った。慌てて出るとやっぱり海咲で僕は嬉しくなる。
「おはよう、奏」
「おはよう、海咲くん。喉渇いたでしょ?中でお茶を飲んでからいこうよ?」
そう誘ったら海咲もそうだなと頷いてくれた。
「いやあ暑いな」
「本当に。家の中はまだいいんだけどねえ」
僕は冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出してグラスに注いだ。
「どうぞ」
グラスを海咲の前に置く。海咲は一息でお茶を飲み干していた。それだけ暑いのだ。迎えに来てくれて嬉しい。
「ああ、生き返った。よし、行くか」
「うん」
僕はお母さんに断りを入れて出かけた。もちろん、お土産の菓子折りも忘れない。

海咲の家は相変わらず猫ちゃんがいっぱいいる。どうやら玄関先に猫ちゃんが捨てられていることが多々あるらしい。命を弄んでいるようで僕は悲しい気持ちになった。
「みゃあ」
僕を見つけるなりとたたと駆け寄ってきてくれる子もいる。猫ちゃんいいなあ、可愛いし癒される。この子の名前はビビちゃんといった。もうおばあちゃん猫なのだけどまだまだ現役だ。
「ビビちゃん、元気だった?」
僕がよしよしと体を撫でるとビビちゃんがみゃあと返事をする。他の子もわあっときた。あぁ、可愛い。
「おし、そろそろ勉強始めるか」
「うん」
僕たちは教科書とノートを広げた。学期末試験というのは範囲が広い。高校の授業は、こまめに復習していないとすぐ置いていかれてしまう。テスト範囲を確認して、苦手な問題を何度も解いてみる。地道だけどそれが一番だ。
「く・・この問題めんどいな」
海咲が頭を抱えている。どうやら古文の問題らしい。一方で僕は数学の教科書を見直していた。海咲が困ったように教科書とノートを交互に見ている。僕は隣から覗き込んだ。ここなら教えてあげられるかもと思ったからだ。
「海咲くん、そこの詞がここにかかってくるんだよ」
「あ、そうか。なるほど。さんきゅ」
僕たちはしばらく黙って勉強を続けた。40分程時間が経過しただろうか。部屋に海咲のお母さんが入ってきた。
「海咲、お母さん出かけるからね。お昼は冷蔵庫に入ってるし、ジュースも好きなの飲んでいいから。おやつはドーナツがあるからね」
「ああ、分かった。行ってらっしゃい」
海咲のお母さんは近くのスーパーでパートタイムで働いているらしい。お父さんは海外に単身赴任しているようだ。海咲がここに来たのは、お父さんの定年が近いこともあるらしい。家を買って落ち着こうと決めたのだそうだ。
「そろそろ休憩にしないか?喉渇いたし」
「うん」
海咲がキッチンに向かっている間、僕は周りの猫ちゃんを見つめた。どの子も皆、可愛いんだよね。触らせてくれないかなぁと期待していたら海咲が戻ってきた。
「お待たせ。とりあえずお茶とジュース持ってきた」
「ありがとう」
海咲の家に来ると必ず出てくるのが、あのレモンスカッシュだ。すごく美味しいんだよね。話を聞いたら海咲のお母さんのお手製らしい。
「お前、学校の自販機でもレモンスカッシュばかり飲んでるだろ?」
僕はそれにドキッとなってしまった。
「なんでそれを…」
「いや、前にたまたま見かけたから」
僕は顔が熱くなった。意外と人は人を見ている。
「なあ、奏?お前は俺のことどう思う?」
「優しいクラスメイト?」
まさか好きな人だとは言えない。しかも男同士でなんてすごく恥ずかしいし。海咲は僕の返事に明らかに落胆した表情を見せた。
「なぁ、奏」
いつの間にか僕は床に押し倒されている。僕は1人ドキドキしていた。
「海咲くん?」
「奏、俺は・・・」
海咲が何を言おうとしているのか僕には分からない。
「悪い、なんでもない。ジュース飲もう」
海咲に起き上がらせてもらって僕はレモンスカッシュを飲んだ。海咲はもしかして僕を好きでいてくれたりするんだろうかと僕の中で淡い期待が膨らんだ。それならそうはっきり言ってほしかった。
でもそれは僕にも同じことが言える。お互いに傷つくのが怖いだけだ。
好きっていう気持ちは難しい。数式のような完璧な答えは出せないのだ。
こんなにそばにいるのに本当の気持ちが分からなくてもどかしい。ふと視線を上げたら海咲と目が合った。にっと彼は笑ってくれて、僕の胸の高鳴りはますます速くなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

龍の無垢、狼の執心~跡取り美少年は侠客の愛を知らない〜

中岡 始
BL
「辰巳会の次期跡取りは、俺の息子――辰巳悠真や」 大阪を拠点とする巨大極道組織・辰巳会。その跡取りとして名を告げられたのは、一見するとただの天然ボンボンにしか見えない、超絶美貌の若き御曹司だった。 しかも、現役大学生である。 「え、あの子で大丈夫なんか……?」 幹部たちの不安をよそに、悠真は「ふわふわ天然」な言動を繰り返しながらも、確実に辰巳会を掌握していく。 ――誰もが気づかないうちに。 専属護衛として選ばれたのは、寡黙な武闘派No.1・久我陣。 「命に代えても、お守りします」 そう誓った陣だったが、悠真の"ただの跡取り"とは思えない鋭さに次第に気づき始める。 そして辰巳会の跡目争いが激化する中、敵対組織・六波羅会が悠真の命を狙い、抗争の火種が燻り始める―― 「僕、舐められるの得意やねん」 敵の思惑をすべて見透かし、逆に追い詰める悠真の冷徹な手腕。 その圧倒的な"跡取り"としての覚醒を、誰よりも近くで見届けた陣は、次第に自分の心が揺れ動くのを感じていた。 それは忠誠か、それとも―― そして、悠真自身もまた「陣の存在が自分にとって何なのか」を考え始める。 「僕、陣さんおらんと困る。それって、好きってことちゃう?」 最強の天然跡取り × 一途な忠誠心を貫く武闘派護衛。 極道の世界で交差する、戦いと策謀、そして"特別"な感情。 これは、跡取りが"覚醒"し、そして"恋を知る"物語。

雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―

なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。 その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。 死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。 かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。 そして、孤独だったアシェル。 凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。 だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。 生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー

おっさんにミューズはないだろ!~中年塗師は英国青年に純恋を捧ぐ~

天岸 あおい
BL
英国の若き青年×職人気質のおっさん塗師。 「カツミさん、アナタはワタシのミューズです!」 「おっさんにミューズはないだろ……っ!」 愛などいらぬ!が信条の中年塗師が英国青年と出会って仲を深めていくコメディBL。男前おっさん×伝統工芸×田舎ライフ物語。 第10回BL小説大賞エントリー作品。よろしくお願い致します!

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...