9 / 41
9話
しおりを挟む
「そう、ここが分からなくてさ」
海咲がシャープペンシルの先で問題集をトントン叩きながら唸る。はじめは僕が海咲の家に行こうかと言ったのだけど、僕が疲れてそうだからと海咲が家に来てくれた。せっかくだから、一緒に課題をしようと僕が提案したら、分からないところがあると言われたのだった。それは現国の問題だった。海咲は随分頑張ったらしい。課題も残り僅かだ。僕も頑張らなくちゃな。
「(それ)が何を指すか説明しろっていうけどさ!なんのことかさっぱり分からねえよ!」
これは中学生の頃からよく出る問題だ。僕はまあまあと海咲を宥めた。
そういう問題には大抵解き方がある。
「あのね、そういう問題はだいたい該当の文章の前後に答えがあるから、まずはそれを探すといいよ」
なんだって?と海咲が僕を見つめる。
「え、俺一番最後の方まで文章読んで答え探してたぞ?!それ全部無駄じゃないか!」
「うん、それじゃ時間勿体ないよね」
海咲は相当ショックだったらしい。なんだ、そんなことだったのかと悔しそうにしている。
「とりあえずそれは、ワークブックの問題を何度も解いてみたらどう?練習になるよ」
それは課題ではないけれど、今後役に立つはずだ。
「やってみる」
海咲が燃えている。
✢
ひとまず今日の分の課題を終わらせた僕たちは、おやつを食べながらのんびりしている。自然と話題は遊園地のことになっていた。
「本当に皆から離れるの?」
僕は心配だった。海咲はニヤリと笑う。
「大丈夫、あいつら4人、それぞれ付き合ってるから」
「えぇ?!そうなの?」
僕はクラスのそういった事情に疎い。
「奏はもう少しクラスメイトに興味持ってやれよな」
「それは…そうだね、ごめん」
「だから俺たちは俺たちで楽しもうぜ」
「うん、楽しみ」
遊園地に行くのは来週末になっている。お金を貯めるためにバイトをひたすら頑張るしかない。
「奏、何のアトラクション乗るか決めようぜ」
海咲がスマートフォンを取り出して遊園地のマップを表示させた。アトラクションって思ったより色々あるなぁ。遊園地なんて小さな頃連れて行ってもらって以来行っていない。
「やっぱり、ジェットコースター乗りたいな」
「いいな!」
僕は言おうかどうか躊躇っていた。
「奏?どした?」
「め…」
「め?」
ここまで来たらもう言うか。恥ずかしいけど。
「メリーゴーランドも乗る」
「あぁ!乗ろうな!」
「笑わないの?男子高校生がメリーゴーランドって…」
「奏は似合うからなぁ。メリーゴーランド」
メリーゴーランドが似合う男子高校生ってどうなんだ?と思わなくもない。海咲が畳み掛けるように言う。
「馬に乗る時手伝うよ」
「い、いいよ。さすがに1人で乗れるよ」
顔がかあっと熱くなった。海咲って時々、僕を女の子だと思ってるのかなという時がある。それは恥ずかしいからやめていただきたいな。
「そっか」
海咲がしょぼんとしたので僕は慌てた。
「う、うん、いつもありがとうね」
「奏、お化け屋敷は?」
「怖いからヤダ」
海咲が吹き出している。
他に乗りたい物をいくつかピックアップしてみた。全部乗れたらいいなあ。
「きっと混んでるんだろうね」
「夏休みだしな。熱中症だけ気を付けよう」
海咲の言う通りだ。水分はこまめに取らなくちゃね。
遊園地、楽しみだな。
「明日もバイトなんだろ?」
「うん。頑張ってくる。海咲くんは?」
「実はこれからなんだよな」
「え?時間大丈夫?」
海咲の話を聞くに、そんなに忙しい仕事ではないらしい。今のガソリンスタンドはほとんどセルフだもんな。
「じゃ、そろそろ帰るわ。奏、よく休めよ」
「うん、またね」
「おう」
僕は玄関で海咲を見送った。やっぱり好きだなと思う。でも、今の良好な関係を僕は壊したくない。そのうち、海咲は誰かと付き合うかもしれない。それは絶対に嫌だとも思う。なんてわがままなんだろう。海咲の僕が「好き」は、どういう「好き」なんだろう?僕にはそれすら聞けないのだから、本当に臆病者だと思う。
海咲、僕は君が好きだよ。君はこんな僕を好きでいてくれる?僕は心の中で海咲に問い掛けていた。
海咲がシャープペンシルの先で問題集をトントン叩きながら唸る。はじめは僕が海咲の家に行こうかと言ったのだけど、僕が疲れてそうだからと海咲が家に来てくれた。せっかくだから、一緒に課題をしようと僕が提案したら、分からないところがあると言われたのだった。それは現国の問題だった。海咲は随分頑張ったらしい。課題も残り僅かだ。僕も頑張らなくちゃな。
「(それ)が何を指すか説明しろっていうけどさ!なんのことかさっぱり分からねえよ!」
これは中学生の頃からよく出る問題だ。僕はまあまあと海咲を宥めた。
そういう問題には大抵解き方がある。
「あのね、そういう問題はだいたい該当の文章の前後に答えがあるから、まずはそれを探すといいよ」
なんだって?と海咲が僕を見つめる。
「え、俺一番最後の方まで文章読んで答え探してたぞ?!それ全部無駄じゃないか!」
「うん、それじゃ時間勿体ないよね」
海咲は相当ショックだったらしい。なんだ、そんなことだったのかと悔しそうにしている。
「とりあえずそれは、ワークブックの問題を何度も解いてみたらどう?練習になるよ」
それは課題ではないけれど、今後役に立つはずだ。
「やってみる」
海咲が燃えている。
✢
ひとまず今日の分の課題を終わらせた僕たちは、おやつを食べながらのんびりしている。自然と話題は遊園地のことになっていた。
「本当に皆から離れるの?」
僕は心配だった。海咲はニヤリと笑う。
「大丈夫、あいつら4人、それぞれ付き合ってるから」
「えぇ?!そうなの?」
僕はクラスのそういった事情に疎い。
「奏はもう少しクラスメイトに興味持ってやれよな」
「それは…そうだね、ごめん」
「だから俺たちは俺たちで楽しもうぜ」
「うん、楽しみ」
遊園地に行くのは来週末になっている。お金を貯めるためにバイトをひたすら頑張るしかない。
「奏、何のアトラクション乗るか決めようぜ」
海咲がスマートフォンを取り出して遊園地のマップを表示させた。アトラクションって思ったより色々あるなぁ。遊園地なんて小さな頃連れて行ってもらって以来行っていない。
「やっぱり、ジェットコースター乗りたいな」
「いいな!」
僕は言おうかどうか躊躇っていた。
「奏?どした?」
「め…」
「め?」
ここまで来たらもう言うか。恥ずかしいけど。
「メリーゴーランドも乗る」
「あぁ!乗ろうな!」
「笑わないの?男子高校生がメリーゴーランドって…」
「奏は似合うからなぁ。メリーゴーランド」
メリーゴーランドが似合う男子高校生ってどうなんだ?と思わなくもない。海咲が畳み掛けるように言う。
「馬に乗る時手伝うよ」
「い、いいよ。さすがに1人で乗れるよ」
顔がかあっと熱くなった。海咲って時々、僕を女の子だと思ってるのかなという時がある。それは恥ずかしいからやめていただきたいな。
「そっか」
海咲がしょぼんとしたので僕は慌てた。
「う、うん、いつもありがとうね」
「奏、お化け屋敷は?」
「怖いからヤダ」
海咲が吹き出している。
他に乗りたい物をいくつかピックアップしてみた。全部乗れたらいいなあ。
「きっと混んでるんだろうね」
「夏休みだしな。熱中症だけ気を付けよう」
海咲の言う通りだ。水分はこまめに取らなくちゃね。
遊園地、楽しみだな。
「明日もバイトなんだろ?」
「うん。頑張ってくる。海咲くんは?」
「実はこれからなんだよな」
「え?時間大丈夫?」
海咲の話を聞くに、そんなに忙しい仕事ではないらしい。今のガソリンスタンドはほとんどセルフだもんな。
「じゃ、そろそろ帰るわ。奏、よく休めよ」
「うん、またね」
「おう」
僕は玄関で海咲を見送った。やっぱり好きだなと思う。でも、今の良好な関係を僕は壊したくない。そのうち、海咲は誰かと付き合うかもしれない。それは絶対に嫌だとも思う。なんてわがままなんだろう。海咲の僕が「好き」は、どういう「好き」なんだろう?僕にはそれすら聞けないのだから、本当に臆病者だと思う。
海咲、僕は君が好きだよ。君はこんな僕を好きでいてくれる?僕は心の中で海咲に問い掛けていた。
1
あなたにおすすめの小説
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
龍の無垢、狼の執心~跡取り美少年は侠客の愛を知らない〜
中岡 始
BL
「辰巳会の次期跡取りは、俺の息子――辰巳悠真や」
大阪を拠点とする巨大極道組織・辰巳会。その跡取りとして名を告げられたのは、一見するとただの天然ボンボンにしか見えない、超絶美貌の若き御曹司だった。
しかも、現役大学生である。
「え、あの子で大丈夫なんか……?」
幹部たちの不安をよそに、悠真は「ふわふわ天然」な言動を繰り返しながらも、確実に辰巳会を掌握していく。
――誰もが気づかないうちに。
専属護衛として選ばれたのは、寡黙な武闘派No.1・久我陣。
「命に代えても、お守りします」
そう誓った陣だったが、悠真の"ただの跡取り"とは思えない鋭さに次第に気づき始める。
そして辰巳会の跡目争いが激化する中、敵対組織・六波羅会が悠真の命を狙い、抗争の火種が燻り始める――
「僕、舐められるの得意やねん」
敵の思惑をすべて見透かし、逆に追い詰める悠真の冷徹な手腕。
その圧倒的な"跡取り"としての覚醒を、誰よりも近くで見届けた陣は、次第に自分の心が揺れ動くのを感じていた。
それは忠誠か、それとも――
そして、悠真自身もまた「陣の存在が自分にとって何なのか」を考え始める。
「僕、陣さんおらんと困る。それって、好きってことちゃう?」
最強の天然跡取り × 一途な忠誠心を貫く武闘派護衛。
極道の世界で交差する、戦いと策謀、そして"特別"な感情。
これは、跡取りが"覚醒"し、そして"恋を知る"物語。
雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―
なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。
その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。
死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。
かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。
そして、孤独だったアシェル。
凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。
だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。
生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー
おっさんにミューズはないだろ!~中年塗師は英国青年に純恋を捧ぐ~
天岸 あおい
BL
英国の若き青年×職人気質のおっさん塗師。
「カツミさん、アナタはワタシのミューズです!」
「おっさんにミューズはないだろ……っ!」
愛などいらぬ!が信条の中年塗師が英国青年と出会って仲を深めていくコメディBL。男前おっさん×伝統工芸×田舎ライフ物語。
第10回BL小説大賞エントリー作品。よろしくお願い致します!
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる