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10話
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「えーと、塩飴とお茶、あとは…」
バイトが終わったあと、僕は遊園地に持っていくものを買っていた。コンビニだと少し値が張るのでスーパーで節約することにしたのだ。店はまだ開店したばかりだというのに、既にレジには行列が出来ている。この店がいかに人気かよく分かるな。毎朝スカスカになった棚に根気強く商品を詰めている僕だけど、これだけお客さんが来ていればそうなるのもよく分かる。
「おやつ…もいるよね?」
遊園地までは電車で行くことになっている。早朝に集まって始発の各駅停車で行くなかなかの貧乏旅行だ。でも楽しみなのは間違いない。僕はしばらく迷って、チョコレートとスナック菓子を数個カゴに入れた。これで全部だろうか?もう一度指差し確認をする。
「よし、大丈夫だ」
僕がレジに向かうと先程より行列が短くなっていた。レジ打ちの人が如何に上手く素早くお客さまを捌いているかが分かる。いよいよ僕の番が来て、店員さんの顔を見たら海咲のお母さんだった。
「こんにちは、奏くん。帰り?」
もちろん海咲のお母さんも僕がここで働いていることを知っている。ドギマギしながら頷くと微笑まれた。
「奏くんいい子だから、レジの補助に配置して欲しいって皆言ってるの」
「僕なんかにレジの補助なんて無理ですよー」
「大丈夫よ、慣れてしまえば」
海咲のお母さんが話しながらスイスイ商品を通していく。速いなぁ。僕が補助に入ったら逆に遅くなるんじゃなかろうか。もはやクレームものだ。
「1352円になります」
会計を済ませて、僕は海咲のお母さんに挨拶をして自宅に帰った。
「ただいまー」
引き戸を開けると騒がしい。どうやら小学生の子たちが習字教室に来ているらしかった。
「あ!奏くんだぁ!!」
僕を見つけた女の子が叫ぶ。
「こんにちは。皆、お習字出来た?」
「奏くん!見て!!」
「僕のも!」
わらわらと小学生に取り囲まれる。低学年の子たちは無邪気で可愛いな。
「奏パイセン、バイト始めたの?マジ?」
「へえ、奏って仕事出来るんだ」
一方で高学年の子たちはこんな感じである。正直言って舐められている。
「僕にだって勤まる仕事あるんだからね!」
「奏は可愛いんだから痴漢に気を付けろよ?」
真顔で言われて、僕は言葉に詰まった。向こうの方が年下なはずなのに、身長は上だ。なんで伸びなかった、僕の身長…。
「大丈夫!痴漢なんてスーパーに来ないし…多分」
「おい、奏パイセンが怖がるだろ!」
「奏に変なやつがくっつかないように皆で見張ろうぜ」
え、なんだか話が大きくなっていませんか?
「あたしも見張るー!」
「僕もお手伝いできる?」
低学年の子たちもぞろぞろ参戦してきてしまった。
「なぁ奏。最近恋人できたろ?」
ぐ、と腕を掴まれた。
「恋人なんて出来てないけど?」
「これだから鈍ちんは嫌なんだ」
はー、と大きくため息をつかれる。
「じゃあいつも一緒にいるやたらでかいやつは誰なんだ?」
あ、と僕は思い当たった。
「それ、海咲くんのこと?」
「そいつぶっ飛ばす」
「えぇ!なんでそうなるの!!」
「奏のこと独り占めにしやがるからだよ」
僕はドキドキしてきてしまった。ここは年上として丸く収めなくては。
「独り占めなんてされてないよ。単純にバイトがあるからで」
「奏、あいつのこと好きなのか?」
ズバリ言い当てられて、僕は顔が熱くなった。
「うん、好き。でもムリだと思う」
ふふ、と笑って言ったら涙が溢れていた。ずっと溜まってきたものが崩れたんだろう。
「奏泣かすとか許せねえ」
「パイセン、なんとか告ってみたら?泣くのはそれからだっていいんだし」
小学生なのに皆、悟っているなぁ。
「今度行くんだろ?遊園地」
「うん」
「告ってこい」
「えぇ!?」
「やらない後悔よりやる後悔って言葉があるからな。観覧車に連れ込んでチューしろ」
「ひえぇ…」
僕はタジタジになっていた。
小学生怖い。
バイトが終わったあと、僕は遊園地に持っていくものを買っていた。コンビニだと少し値が張るのでスーパーで節約することにしたのだ。店はまだ開店したばかりだというのに、既にレジには行列が出来ている。この店がいかに人気かよく分かるな。毎朝スカスカになった棚に根気強く商品を詰めている僕だけど、これだけお客さんが来ていればそうなるのもよく分かる。
「おやつ…もいるよね?」
遊園地までは電車で行くことになっている。早朝に集まって始発の各駅停車で行くなかなかの貧乏旅行だ。でも楽しみなのは間違いない。僕はしばらく迷って、チョコレートとスナック菓子を数個カゴに入れた。これで全部だろうか?もう一度指差し確認をする。
「よし、大丈夫だ」
僕がレジに向かうと先程より行列が短くなっていた。レジ打ちの人が如何に上手く素早くお客さまを捌いているかが分かる。いよいよ僕の番が来て、店員さんの顔を見たら海咲のお母さんだった。
「こんにちは、奏くん。帰り?」
もちろん海咲のお母さんも僕がここで働いていることを知っている。ドギマギしながら頷くと微笑まれた。
「奏くんいい子だから、レジの補助に配置して欲しいって皆言ってるの」
「僕なんかにレジの補助なんて無理ですよー」
「大丈夫よ、慣れてしまえば」
海咲のお母さんが話しながらスイスイ商品を通していく。速いなぁ。僕が補助に入ったら逆に遅くなるんじゃなかろうか。もはやクレームものだ。
「1352円になります」
会計を済ませて、僕は海咲のお母さんに挨拶をして自宅に帰った。
「ただいまー」
引き戸を開けると騒がしい。どうやら小学生の子たちが習字教室に来ているらしかった。
「あ!奏くんだぁ!!」
僕を見つけた女の子が叫ぶ。
「こんにちは。皆、お習字出来た?」
「奏くん!見て!!」
「僕のも!」
わらわらと小学生に取り囲まれる。低学年の子たちは無邪気で可愛いな。
「奏パイセン、バイト始めたの?マジ?」
「へえ、奏って仕事出来るんだ」
一方で高学年の子たちはこんな感じである。正直言って舐められている。
「僕にだって勤まる仕事あるんだからね!」
「奏は可愛いんだから痴漢に気を付けろよ?」
真顔で言われて、僕は言葉に詰まった。向こうの方が年下なはずなのに、身長は上だ。なんで伸びなかった、僕の身長…。
「大丈夫!痴漢なんてスーパーに来ないし…多分」
「おい、奏パイセンが怖がるだろ!」
「奏に変なやつがくっつかないように皆で見張ろうぜ」
え、なんだか話が大きくなっていませんか?
「あたしも見張るー!」
「僕もお手伝いできる?」
低学年の子たちもぞろぞろ参戦してきてしまった。
「なぁ奏。最近恋人できたろ?」
ぐ、と腕を掴まれた。
「恋人なんて出来てないけど?」
「これだから鈍ちんは嫌なんだ」
はー、と大きくため息をつかれる。
「じゃあいつも一緒にいるやたらでかいやつは誰なんだ?」
あ、と僕は思い当たった。
「それ、海咲くんのこと?」
「そいつぶっ飛ばす」
「えぇ!なんでそうなるの!!」
「奏のこと独り占めにしやがるからだよ」
僕はドキドキしてきてしまった。ここは年上として丸く収めなくては。
「独り占めなんてされてないよ。単純にバイトがあるからで」
「奏、あいつのこと好きなのか?」
ズバリ言い当てられて、僕は顔が熱くなった。
「うん、好き。でもムリだと思う」
ふふ、と笑って言ったら涙が溢れていた。ずっと溜まってきたものが崩れたんだろう。
「奏泣かすとか許せねえ」
「パイセン、なんとか告ってみたら?泣くのはそれからだっていいんだし」
小学生なのに皆、悟っているなぁ。
「今度行くんだろ?遊園地」
「うん」
「告ってこい」
「えぇ!?」
「やらない後悔よりやる後悔って言葉があるからな。観覧車に連れ込んでチューしろ」
「ひえぇ…」
僕はタジタジになっていた。
小学生怖い。
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