君とレモンスカッシュ〜ずっと片想いしていました〜

はやしかわともえ

文字の大きさ
10 / 41

10話

しおりを挟む
「えーと、塩飴とお茶、あとは…」
バイトが終わったあと、僕は遊園地に持っていくものを買っていた。コンビニだと少し値が張るのでスーパーで節約することにしたのだ。店はまだ開店したばかりだというのに、既にレジには行列が出来ている。この店がいかに人気かよく分かるな。毎朝スカスカになった棚に根気強く商品を詰めている僕だけど、これだけお客さんが来ていればそうなるのもよく分かる。
「おやつ…もいるよね?」
遊園地までは電車で行くことになっている。早朝に集まって始発の各駅停車で行くなかなかの貧乏旅行だ。でも楽しみなのは間違いない。僕はしばらく迷って、チョコレートとスナック菓子を数個カゴに入れた。これで全部だろうか?もう一度指差し確認をする。
「よし、大丈夫だ」
僕がレジに向かうと先程より行列が短くなっていた。レジ打ちの人が如何に上手く素早くお客さまを捌いているかが分かる。いよいよ僕の番が来て、店員さんの顔を見たら海咲のお母さんだった。
「こんにちは、奏くん。帰り?」
もちろん海咲のお母さんも僕がここで働いていることを知っている。ドギマギしながら頷くと微笑まれた。
「奏くんいい子だから、レジの補助に配置して欲しいって皆言ってるの」
「僕なんかにレジの補助なんて無理ですよー」
「大丈夫よ、慣れてしまえば」
海咲のお母さんが話しながらスイスイ商品を通していく。速いなぁ。僕が補助に入ったら逆に遅くなるんじゃなかろうか。もはやクレームものだ。
「1352円になります」
会計を済ませて、僕は海咲のお母さんに挨拶をして自宅に帰った。
「ただいまー」
引き戸を開けると騒がしい。どうやら小学生の子たちが習字教室に来ているらしかった。
「あ!奏くんだぁ!!」
僕を見つけた女の子が叫ぶ。
「こんにちは。皆、お習字出来た?」
「奏くん!見て!!」
「僕のも!」
わらわらと小学生に取り囲まれる。低学年の子たちは無邪気で可愛いな。
「奏パイセン、バイト始めたの?マジ?」
「へえ、奏って仕事出来るんだ」
一方で高学年の子たちはこんな感じである。正直言って舐められている。
「僕にだって勤まる仕事あるんだからね!」
「奏は可愛いんだから痴漢に気を付けろよ?」
真顔で言われて、僕は言葉に詰まった。向こうの方が年下なはずなのに、身長は上だ。なんで伸びなかった、僕の身長…。
「大丈夫!痴漢なんてスーパーに来ないし…多分」
「おい、奏パイセンが怖がるだろ!」
「奏に変なやつがくっつかないように皆で見張ろうぜ」
え、なんだか話が大きくなっていませんか?
「あたしも見張るー!」
「僕もお手伝いできる?」
低学年の子たちもぞろぞろ参戦してきてしまった。
「なぁ奏。最近恋人できたろ?」
ぐ、と腕を掴まれた。
「恋人なんて出来てないけど?」
「これだから鈍ちんは嫌なんだ」
はー、と大きくため息をつかれる。
「じゃあいつも一緒にいるやたらでかいやつは誰なんだ?」
あ、と僕は思い当たった。
「それ、海咲くんのこと?」
「そいつぶっ飛ばす」
「えぇ!なんでそうなるの!!」
「奏のこと独り占めにしやがるからだよ」
僕はドキドキしてきてしまった。ここは年上として丸く収めなくては。
「独り占めなんてされてないよ。単純にバイトがあるからで」
「奏、あいつのこと好きなのか?」
ズバリ言い当てられて、僕は顔が熱くなった。
「うん、好き。でもムリだと思う」
ふふ、と笑って言ったら涙が溢れていた。ずっと溜まってきたものが崩れたんだろう。
「奏泣かすとか許せねえ」
「パイセン、なんとか告ってみたら?泣くのはそれからだっていいんだし」
小学生なのに皆、悟っているなぁ。
「今度行くんだろ?遊園地」
「うん」
「告ってこい」
「えぇ!?」
「やらない後悔よりやる後悔って言葉があるからな。観覧車に連れ込んでチューしろ」
「ひえぇ…」
僕はタジタジになっていた。
小学生怖い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―

なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。 その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。 死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。 かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。 そして、孤独だったアシェル。 凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。 だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。 生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー

龍の無垢、狼の執心~跡取り美少年は侠客の愛を知らない〜

中岡 始
BL
「辰巳会の次期跡取りは、俺の息子――辰巳悠真や」 大阪を拠点とする巨大極道組織・辰巳会。その跡取りとして名を告げられたのは、一見するとただの天然ボンボンにしか見えない、超絶美貌の若き御曹司だった。 しかも、現役大学生である。 「え、あの子で大丈夫なんか……?」 幹部たちの不安をよそに、悠真は「ふわふわ天然」な言動を繰り返しながらも、確実に辰巳会を掌握していく。 ――誰もが気づかないうちに。 専属護衛として選ばれたのは、寡黙な武闘派No.1・久我陣。 「命に代えても、お守りします」 そう誓った陣だったが、悠真の"ただの跡取り"とは思えない鋭さに次第に気づき始める。 そして辰巳会の跡目争いが激化する中、敵対組織・六波羅会が悠真の命を狙い、抗争の火種が燻り始める―― 「僕、舐められるの得意やねん」 敵の思惑をすべて見透かし、逆に追い詰める悠真の冷徹な手腕。 その圧倒的な"跡取り"としての覚醒を、誰よりも近くで見届けた陣は、次第に自分の心が揺れ動くのを感じていた。 それは忠誠か、それとも―― そして、悠真自身もまた「陣の存在が自分にとって何なのか」を考え始める。 「僕、陣さんおらんと困る。それって、好きってことちゃう?」 最強の天然跡取り × 一途な忠誠心を貫く武闘派護衛。 極道の世界で交差する、戦いと策謀、そして"特別"な感情。 これは、跡取りが"覚醒"し、そして"恋を知る"物語。

おっさんにミューズはないだろ!~中年塗師は英国青年に純恋を捧ぐ~

天岸 あおい
BL
英国の若き青年×職人気質のおっさん塗師。 「カツミさん、アナタはワタシのミューズです!」 「おっさんにミューズはないだろ……っ!」 愛などいらぬ!が信条の中年塗師が英国青年と出会って仲を深めていくコメディBL。男前おっさん×伝統工芸×田舎ライフ物語。 第10回BL小説大賞エントリー作品。よろしくお願い致します!

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...