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くまさんのマッサージ♡4(大地のこと①)
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「本当にある…」
翼の驚いたような声に、大地は思わず噴き出してしまった。
「そりゃああるよ、翼さん」
今、2人は開店直後の書店にいる。今日は翼が手がけたコミックスの発売日だった。翼はまだ信じられないのかコミックスを手に取って眺めている。どう見ても翼のイラストで、作者の名前も翼その人で間違い無い。
「俺の本が本屋さんに並んでる」
翼はほう、とため息を吐いている。
「翼さん、サイン会明後日なんだから、場所とかちゃんと確認しておかなくちゃ」
と言いながら、大地はコミックスを5冊手に取った。
「ちょ、ちょっと待って。大地君?そんなに買うの?」
慌てている年上のパートナーはいつでも可愛らしい。大地は笑った。
「越野と林田に頼まれてるんだよ。ついでに買ってきてって」
「え、えええ」
翼が目を白黒させている間に、大地はレジに向かったのだった。
✢✢✢
「え…ええ」
その日の夜、翼が電話をしながら困ったような声をあげている。どうしたのだろうかと大地も心配になったが、ひとまずは見守ることにした。
「うん、分かった。1泊くらいなら、うん」
翼が戸惑った様子で電話を切る。
「翼さん?何かあった?」
大地が尋ねると、翼は困ったような顔で見上げてくる。
「うん、従姉妹の娘さんを預かって欲しいって頼まれたの」
「え?」
「俺のサイン会にどうしても行きたいって聞かないんだって。勝手に決めてごめんね」
「その子、何歳?」
「7歳。すごくませてるんだ。女の子ってみんなそうなのかな?」
「うーん。その子は迎えに行ったほうがいいの?」
「ううん、明日の夜、直接送り届けてもらえるみたい」
「そうなんだ。なら、サイン会の時は俺が一緒にいればいい?」
「うん、そうしてくれるとすごく助かるよ」
「小さい女の子と接したこと、あまりないから怖がらせないようにしないとね」
「大地君なら大丈夫だよ」
✢✢✢
そんなこんなでサイン会前日の夜になっている。
「翼お兄ちゃん!」
「涼奈ちゃん、久し振りだね」
翼の元に駆け寄ってきたのは赤いカチューシャを付けた可愛らしい子だった。赤いワンピースは明らかに上等なものである。
「お兄ちゃん、会いたかったー」
涼奈と呼ばれた少女は翼の太ももに抱き着いている。
「涼奈ちゃん、この人が大地君だよ」
「大地君、よろしくね」
涼奈の言葉に大地は笑ってしまった。舌足らずなのにちゃんと女の子なのだと感心してしまったのだ。
「涼奈ちゃん、何か食べたいものはある?」
大地は屈んで涼奈に問いかけた。
「涼奈ね、おとーふが好きなの」
「豆腐?!もしかして、湯豆腐かな?」
「えーと、お醤油がかかってるやつ」
どうやら冷奴らしい。涼奈の見た目からして、親はかなり裕福なのだと分かる。
大地は翼に後で話を聞こうと思ったのだった。
翼の驚いたような声に、大地は思わず噴き出してしまった。
「そりゃああるよ、翼さん」
今、2人は開店直後の書店にいる。今日は翼が手がけたコミックスの発売日だった。翼はまだ信じられないのかコミックスを手に取って眺めている。どう見ても翼のイラストで、作者の名前も翼その人で間違い無い。
「俺の本が本屋さんに並んでる」
翼はほう、とため息を吐いている。
「翼さん、サイン会明後日なんだから、場所とかちゃんと確認しておかなくちゃ」
と言いながら、大地はコミックスを5冊手に取った。
「ちょ、ちょっと待って。大地君?そんなに買うの?」
慌てている年上のパートナーはいつでも可愛らしい。大地は笑った。
「越野と林田に頼まれてるんだよ。ついでに買ってきてって」
「え、えええ」
翼が目を白黒させている間に、大地はレジに向かったのだった。
✢✢✢
「え…ええ」
その日の夜、翼が電話をしながら困ったような声をあげている。どうしたのだろうかと大地も心配になったが、ひとまずは見守ることにした。
「うん、分かった。1泊くらいなら、うん」
翼が戸惑った様子で電話を切る。
「翼さん?何かあった?」
大地が尋ねると、翼は困ったような顔で見上げてくる。
「うん、従姉妹の娘さんを預かって欲しいって頼まれたの」
「え?」
「俺のサイン会にどうしても行きたいって聞かないんだって。勝手に決めてごめんね」
「その子、何歳?」
「7歳。すごくませてるんだ。女の子ってみんなそうなのかな?」
「うーん。その子は迎えに行ったほうがいいの?」
「ううん、明日の夜、直接送り届けてもらえるみたい」
「そうなんだ。なら、サイン会の時は俺が一緒にいればいい?」
「うん、そうしてくれるとすごく助かるよ」
「小さい女の子と接したこと、あまりないから怖がらせないようにしないとね」
「大地君なら大丈夫だよ」
✢✢✢
そんなこんなでサイン会前日の夜になっている。
「翼お兄ちゃん!」
「涼奈ちゃん、久し振りだね」
翼の元に駆け寄ってきたのは赤いカチューシャを付けた可愛らしい子だった。赤いワンピースは明らかに上等なものである。
「お兄ちゃん、会いたかったー」
涼奈と呼ばれた少女は翼の太ももに抱き着いている。
「涼奈ちゃん、この人が大地君だよ」
「大地君、よろしくね」
涼奈の言葉に大地は笑ってしまった。舌足らずなのにちゃんと女の子なのだと感心してしまったのだ。
「涼奈ちゃん、何か食べたいものはある?」
大地は屈んで涼奈に問いかけた。
「涼奈ね、おとーふが好きなの」
「豆腐?!もしかして、湯豆腐かな?」
「えーと、お醤油がかかってるやつ」
どうやら冷奴らしい。涼奈の見た目からして、親はかなり裕福なのだと分かる。
大地は翼に後で話を聞こうと思ったのだった。
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