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千尋・加那太・真司・千晶
1pt足りない!
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加那太は最近、キャラクターのシールが付いている菓子パンにハマっている。毎日は流石に健康に悪いので控えているが、今日は千尋と少し大きいスーパーに来ていた。もちろん菓子パンのコーナーを見ないはずがない。キャラクターのシールは40種あり、ランダムに一枚入っている。毎回開けるのが楽しみだ。被ったとしても、千晶と交換する楽しみもある。
「2つ買っていい?」
千尋は基本的に加那太に甘い。すぐ頷いた。
「わー色々種類あるなぁ。どれにしよ」
流石大型のスーパーである。品揃えの豊富さに加那太は困ってしまった。加那太が余りにも迷うので、先に他の商品を見ていると千尋は野菜コーナーへ向かった。
「なにこれ、見たことないのもある」
加那太は中から選ぶに選んで2つのパンを掴んだ。千尋は生肉のコーナーで肉を吟味している。加那太がカゴにパンを入れると気が付いたらしい。声を掛けてきた。
「決まったのか?」
「うん。今日の夕飯なに?」
「トンカツかトンテキ…どっちにする?」
「トンテキ食べる」
千尋が加那太に笑う。
「分かった」
千尋と加那太は周りから見るとかなり目立つ。本人たちは全く気が付いていないが、イケメンの千尋と可愛らしい加那太は男女のカップルにしか見えない。可愛らしいなどと加那太が聞いたら怒るだろうが、それは無理な話というものである。
二人は帰宅していた。千尋が冷蔵庫に買ったものをしまっている。加那太も雑貨をしまったり千尋を手伝う。大型のスーパーに行くと楽しくて色々買ってしまう。二人にとっていい気分転換だ。
洗面所の棚に洗剤をしまった加那太が台所に戻ると、千尋が紙を持って固まっている。
「千尋?どうしたの?」
「1pt足りなかった…もう一つだったな」
千尋が見せてくれたのはポイントシールを集めて景品がもらえるというシール用の台紙である。加那太が買ってきたパンに貼り付いていたシールをいつの間にかこつこつ貯めていたらしい。
「千尋ってばいつの間に」
「このウサギの弁当箱可愛いだろ?」
それはウサギの顔の形をした弁当箱だった。まさか、と加那太は思いながら尋ねる。
「これ、誰が使うの?」
「加那が使う。これならおかずが沢山入るし」
やっぱりと加那太はげんなりした。成人男性がウサギ型の弁当箱を使うなんて…と思ったが、おかずが沢山入るという点では少し嬉しい。
今の弁当箱では量が足りなかったのだ。だがその弁当箱をもらうにはポイントが足りていない。期限まで残り僅かだ。
「これから買ってこようかな…」
「え?もう暗いのに?」
そんな折、インターホンが鳴る。モニタを見ると、千晶と真司だった。この二人が急に来るのは珍しい。とりあえず千晶と真司を中に招き入れた。
「すみません、急に来ちゃって」
「悪かったな」
千晶と真司はそう謝るが、来客というものはいつでも嬉しい。加那太は二人の目の前にお茶の入ったグラスを置いた。お菓子も出す。千晶が小さなジップロックに入った何かを取り出した。
「あの加那さん、このシール要りませんか?」
「へ?」
千晶が差し出したのはキャラクターのシールと千尋が集めているポイントシールだった。
「すみません、パンはお腹が空いて食べちゃったからもうなくて」
千晶が恥ずかしがっている。千尋が身を乗り出した。獲物を見つけた獅子のようである。
「あき、そのポイントシールもらっていいか?」
「あ、はい。俺はもう集め終わったので。可愛いですよねあのお弁当箱」
千晶はポイントシールを集めるのが大好きである。もう慣れているのかあっさり集め終えたらしい。千尋が台紙にシールを貼ると目標点数に届いたのだった。
一方で加那太も驚いていた。
「あきくん、このシールさ」
「はい。なんか限定のやつなんですよね?俺もう一枚持ってて」
千晶の強運ぶりに舌を巻く加那太である。
「ブログにこのこと、書いた?」
「はい、なんかコメントが沢山来てました」
ニコニコしながら千晶が言う。そりゃあコメントもしたくなる、と加那太は心の中で激しく突っ込んだのは言うまでもない。まめな千晶のことだ、コメントをしっかり読んで返信するだろう。その記事を後で読もうと加那太は誓った。
「あの、お土産にプリン買ってきたんで食べてくださいね」
「え、食べていかないの?」
加那太が驚いていると、千晶が笑った。
「今日ナキが検診でこれから迎えに行くんです」
「じゃあ、またな。二人も来てくれよ」
嵐のように二人は去っていった。
「なんかすごかったな」
「うん、僕もそう思った」
「あきの好きそうなケーキ探そうぜ」
「あ、今度のお土産だよね、やっぱりもうすぐ秋だし、栗かな?」
「真司さんはチョコレートケーキか?」
「あぁ、そんなイメージある」
二人で次回持っていくお土産を探し始めたのだった。
✢✢✢
おまけ
「わ、ウサギの主張強い」
加那太が昼飯を食べようと弁当箱を取り出す。ウサギ型の弁当箱は内地にキャラクターの絵が描かれた可愛らしさ重視のものだった。
千尋はその弁当箱に加那太の好きなおかずをたくさん詰めてくれる。食べ進めるとキャラクターが現れるのだ。加那太はいただきますをして食べ始めた。千尋の作る料理は本当に美味しい。出来合いのものと上手に組み合わせている。
「千尋が女の人だったらモテモテだよね」
加那太は食べながら呟いた。
「今もモテモテだけどね。僕のだけど」
一人で働いているとつい、独り言が多くなる。
今日も加那太は元気にご飯を食べているのだった。
おわり
「2つ買っていい?」
千尋は基本的に加那太に甘い。すぐ頷いた。
「わー色々種類あるなぁ。どれにしよ」
流石大型のスーパーである。品揃えの豊富さに加那太は困ってしまった。加那太が余りにも迷うので、先に他の商品を見ていると千尋は野菜コーナーへ向かった。
「なにこれ、見たことないのもある」
加那太は中から選ぶに選んで2つのパンを掴んだ。千尋は生肉のコーナーで肉を吟味している。加那太がカゴにパンを入れると気が付いたらしい。声を掛けてきた。
「決まったのか?」
「うん。今日の夕飯なに?」
「トンカツかトンテキ…どっちにする?」
「トンテキ食べる」
千尋が加那太に笑う。
「分かった」
千尋と加那太は周りから見るとかなり目立つ。本人たちは全く気が付いていないが、イケメンの千尋と可愛らしい加那太は男女のカップルにしか見えない。可愛らしいなどと加那太が聞いたら怒るだろうが、それは無理な話というものである。
二人は帰宅していた。千尋が冷蔵庫に買ったものをしまっている。加那太も雑貨をしまったり千尋を手伝う。大型のスーパーに行くと楽しくて色々買ってしまう。二人にとっていい気分転換だ。
洗面所の棚に洗剤をしまった加那太が台所に戻ると、千尋が紙を持って固まっている。
「千尋?どうしたの?」
「1pt足りなかった…もう一つだったな」
千尋が見せてくれたのはポイントシールを集めて景品がもらえるというシール用の台紙である。加那太が買ってきたパンに貼り付いていたシールをいつの間にかこつこつ貯めていたらしい。
「千尋ってばいつの間に」
「このウサギの弁当箱可愛いだろ?」
それはウサギの顔の形をした弁当箱だった。まさか、と加那太は思いながら尋ねる。
「これ、誰が使うの?」
「加那が使う。これならおかずが沢山入るし」
やっぱりと加那太はげんなりした。成人男性がウサギ型の弁当箱を使うなんて…と思ったが、おかずが沢山入るという点では少し嬉しい。
今の弁当箱では量が足りなかったのだ。だがその弁当箱をもらうにはポイントが足りていない。期限まで残り僅かだ。
「これから買ってこようかな…」
「え?もう暗いのに?」
そんな折、インターホンが鳴る。モニタを見ると、千晶と真司だった。この二人が急に来るのは珍しい。とりあえず千晶と真司を中に招き入れた。
「すみません、急に来ちゃって」
「悪かったな」
千晶と真司はそう謝るが、来客というものはいつでも嬉しい。加那太は二人の目の前にお茶の入ったグラスを置いた。お菓子も出す。千晶が小さなジップロックに入った何かを取り出した。
「あの加那さん、このシール要りませんか?」
「へ?」
千晶が差し出したのはキャラクターのシールと千尋が集めているポイントシールだった。
「すみません、パンはお腹が空いて食べちゃったからもうなくて」
千晶が恥ずかしがっている。千尋が身を乗り出した。獲物を見つけた獅子のようである。
「あき、そのポイントシールもらっていいか?」
「あ、はい。俺はもう集め終わったので。可愛いですよねあのお弁当箱」
千晶はポイントシールを集めるのが大好きである。もう慣れているのかあっさり集め終えたらしい。千尋が台紙にシールを貼ると目標点数に届いたのだった。
一方で加那太も驚いていた。
「あきくん、このシールさ」
「はい。なんか限定のやつなんですよね?俺もう一枚持ってて」
千晶の強運ぶりに舌を巻く加那太である。
「ブログにこのこと、書いた?」
「はい、なんかコメントが沢山来てました」
ニコニコしながら千晶が言う。そりゃあコメントもしたくなる、と加那太は心の中で激しく突っ込んだのは言うまでもない。まめな千晶のことだ、コメントをしっかり読んで返信するだろう。その記事を後で読もうと加那太は誓った。
「あの、お土産にプリン買ってきたんで食べてくださいね」
「え、食べていかないの?」
加那太が驚いていると、千晶が笑った。
「今日ナキが検診でこれから迎えに行くんです」
「じゃあ、またな。二人も来てくれよ」
嵐のように二人は去っていった。
「なんかすごかったな」
「うん、僕もそう思った」
「あきの好きそうなケーキ探そうぜ」
「あ、今度のお土産だよね、やっぱりもうすぐ秋だし、栗かな?」
「真司さんはチョコレートケーキか?」
「あぁ、そんなイメージある」
二人で次回持っていくお土産を探し始めたのだった。
✢✢✢
おまけ
「わ、ウサギの主張強い」
加那太が昼飯を食べようと弁当箱を取り出す。ウサギ型の弁当箱は内地にキャラクターの絵が描かれた可愛らしさ重視のものだった。
千尋はその弁当箱に加那太の好きなおかずをたくさん詰めてくれる。食べ進めるとキャラクターが現れるのだ。加那太はいただきますをして食べ始めた。千尋の作る料理は本当に美味しい。出来合いのものと上手に組み合わせている。
「千尋が女の人だったらモテモテだよね」
加那太は食べながら呟いた。
「今もモテモテだけどね。僕のだけど」
一人で働いているとつい、独り言が多くなる。
今日も加那太は元気にご飯を食べているのだった。
おわり
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