5 / 15
教室にて
しおりを挟む
小学校には僕と同じ幼稚園だった子もちらほらいた。でも僕はとにかく千尋に興味津々だった。
「ねえ、倉沢くんはゲームとかする?」
恐る恐る尋ねたら千尋は首を横に振った。
「やったことない。加那はゲーム好きなのか?」
「うん、よければ今日一緒にやらない?」
僕は最近発売したばかりの、最新のテレビゲームにハマっていた。
毎日の宿題や、お店のお手伝いも頑張るからとお父さんとお母さんをなんとか説き伏せて買ってもらったものだ。僕の大事な宝物の一つだった。
「じゃあ、宿題出たし、先にやろうな」
千尋は大人っぽかったし、すごく偉かった。頭がいいんだ、って僕はすぐに気が付いた。
千尋みたいな子は初めてだった。
「今日、お母さんがね、ケーキ焼いてくれるって言ってたよ」
「すごいな」
二人でどうでもいいことを話しながら、僕達は家に帰った。
「千尋くん!よく来てくれたわね!
ケーキあるわよお!」
僕のお母さんも千尋が大好きだった。
千尋は誰にでも礼儀正しかったし、優しい人だった。
僕の恋はもうここから始まっていたんだろうな。
それから僕は、千尋とケーキを食べながら宿題をした。
僕は入学早々、早速、勉強に躓いていた。
千尋はそんな僕に分かりやすく勉強を教えてくれた。
「わ、分かった!やっとできたよ」
「良かった。ケーキも美味いな」
その後、千尋のお母さんが迎えに来るまで、僕達はゲームで遊んだ。
千尋と出会っていなかったら、僕の人生はどうなっていたんだろう。
そう思うと正直ゾッとする。
「加那、口にクリーム付いてる」
「わわ!」
千尋が笑っている。僕は千尋が大好きだ。
会った時から彼に恋していた。
✣✣✣
低学年の時は気にならなかったことが中学年になるとちらちらと僕の中で現われ始めた。
いわゆる思春期ってやつだ。
とにかく周りのことが気になる。
僕はチビだったし気が弱かったからなおさら駄目だった。
今になったら「なんだ、そんなことか」っていうようなことでも、僕はいちいちクヨクヨウジウジ悩んだ。
ついに耐えきれなくなって、僕は休み時間になると、旧校舎の教室に隠れるようになった。
僕の通っていた小学校は古くて、新校舎の方を普段は使っていた。
もうすぐ旧校舎は取り壊されることになっていて、中に入れなくなる。
そしたら僕は何処に逃げればいいんだろう、なんて暗い気持ちでいた。
僕が隠れていると、千尋が毎回探しに来てくれた。
「加那、ここにいたのか。
もうみんな騒いでないぞ」
「ありがとう、倉沢くん」
僕はよく机の下に潜り込んで震えていた。
とにかく周りの全てが怖かったんだよね。
千尋はそんな僕を嫌がりもせずに探してくれた。こんな人はきっと千尋くらいだ。
好きになって当然だったとも言える。
ほのかだったこの思いがはっきり形になるまでそんなに時間がかからなかった。
でも、僕は男だ。
千尋を好きでいていいのか迷いもあった。
僕達は一緒にゲームをして遊んだり、ご飯を食べた。
とにかくこの時から千尋と一緒にいられて幸せだったんだ。
「ねえ、倉沢くんはゲームとかする?」
恐る恐る尋ねたら千尋は首を横に振った。
「やったことない。加那はゲーム好きなのか?」
「うん、よければ今日一緒にやらない?」
僕は最近発売したばかりの、最新のテレビゲームにハマっていた。
毎日の宿題や、お店のお手伝いも頑張るからとお父さんとお母さんをなんとか説き伏せて買ってもらったものだ。僕の大事な宝物の一つだった。
「じゃあ、宿題出たし、先にやろうな」
千尋は大人っぽかったし、すごく偉かった。頭がいいんだ、って僕はすぐに気が付いた。
千尋みたいな子は初めてだった。
「今日、お母さんがね、ケーキ焼いてくれるって言ってたよ」
「すごいな」
二人でどうでもいいことを話しながら、僕達は家に帰った。
「千尋くん!よく来てくれたわね!
ケーキあるわよお!」
僕のお母さんも千尋が大好きだった。
千尋は誰にでも礼儀正しかったし、優しい人だった。
僕の恋はもうここから始まっていたんだろうな。
それから僕は、千尋とケーキを食べながら宿題をした。
僕は入学早々、早速、勉強に躓いていた。
千尋はそんな僕に分かりやすく勉強を教えてくれた。
「わ、分かった!やっとできたよ」
「良かった。ケーキも美味いな」
その後、千尋のお母さんが迎えに来るまで、僕達はゲームで遊んだ。
千尋と出会っていなかったら、僕の人生はどうなっていたんだろう。
そう思うと正直ゾッとする。
「加那、口にクリーム付いてる」
「わわ!」
千尋が笑っている。僕は千尋が大好きだ。
会った時から彼に恋していた。
✣✣✣
低学年の時は気にならなかったことが中学年になるとちらちらと僕の中で現われ始めた。
いわゆる思春期ってやつだ。
とにかく周りのことが気になる。
僕はチビだったし気が弱かったからなおさら駄目だった。
今になったら「なんだ、そんなことか」っていうようなことでも、僕はいちいちクヨクヨウジウジ悩んだ。
ついに耐えきれなくなって、僕は休み時間になると、旧校舎の教室に隠れるようになった。
僕の通っていた小学校は古くて、新校舎の方を普段は使っていた。
もうすぐ旧校舎は取り壊されることになっていて、中に入れなくなる。
そしたら僕は何処に逃げればいいんだろう、なんて暗い気持ちでいた。
僕が隠れていると、千尋が毎回探しに来てくれた。
「加那、ここにいたのか。
もうみんな騒いでないぞ」
「ありがとう、倉沢くん」
僕はよく机の下に潜り込んで震えていた。
とにかく周りの全てが怖かったんだよね。
千尋はそんな僕を嫌がりもせずに探してくれた。こんな人はきっと千尋くらいだ。
好きになって当然だったとも言える。
ほのかだったこの思いがはっきり形になるまでそんなに時間がかからなかった。
でも、僕は男だ。
千尋を好きでいていいのか迷いもあった。
僕達は一緒にゲームをして遊んだり、ご飯を食べた。
とにかくこの時から千尋と一緒にいられて幸せだったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる