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「わ、久しぶりだなぁ。ここも」

「ショーゴはここの優勝経験者だもんね」

「ほとんど運だったけどね」

「運も実力のうちだよ」

バスに乗ってやってきたこの場所。そう、もちろん闘技場だ。ここの地下にははじまりの神殿兼かがやきの神殿がある。相変わらずの歓声、そして割れんばかりの拍手。今日もなかなか盛況らしい。

「ショーゴ」

影から飛び出してきた何かに抱き着かれた。なんだ?敵襲か?

「ダリアー!またそういうことしてー!」

なんだダリアさんか。ルネが怒っている。

「見てくれ、ショーゴ。今日はネイル可愛くしたんだ」

「え?はぁ…」

ゴテゴテした爪を見せられてもなんとも思わないけど、女の子は好きなんだよな。

「あ、えーと、可愛いですね」

ダリアさんが明らかにムスッとする。

「ショーゴには他の攻め方の方が良かったみたいだ」

「ダリア!まだショーゴを狙ってるの!」

ダリアさんは不敵に笑った。

「私は一夫多妻制でも構わない」

「僕は構うの!」

これははっきり言ったほうがダリアさんの為だよな。

「あの、俺はルネを一番大事にしているので、ダリアさんは他の人を当たっていただくと…」

ダリアさんの目つきが変わったぞ。めっちゃ怖い。

「ショーゴ、勝負しろ。今すぐにだ」

「えぇえ!」

ダリアさんは一度言い出すと聞かないんだよな。

「こら、ダリア!!」

鋭い喝が飛んできたかと思ったらカイエンさんだった。ダリアさんがビクッとなる。

「パパ!なんで?」

ダリアさんが青ざめている。

「お前は一度ショーゴに負けている。今更未練がましいことをするな!みっともない!」

うわぁ、バッサリ切り捨てた。ダリアさんがふるふる震えている。

「パパなんかだいっきらい!!」

あ、走って行っちゃったぞ。

「すまんな、ショーゴ。うちの娘はわがままなのだ」

「良く知ってる」

ルネが白けた表情で言う。冷たいな!カイエンさんは慌てて後を追った。

「とりあえずかがやきの神殿行く?」

気を取り直して、俺たちははじまりの神殿のある地下階段へ向かっていた。歩きながらルネが言う。

「ダリアは悪い子じゃないんだけど、ショーゴが初恋みたいなんだよね」

「そうなの?!」

あんなに綺麗なヒトの初恋が俺とか…。

「ほら、ダリア強すぎじゃない?過去に色々あったんじゃないかな」

「そうか」

確かにダリアさんは強すぎる。もう一度戦って、勝てるかどうか怪しい。あの時はダリアさんが、居合い切りを知らなかったから勝てただけだ。ラッキーだったのである。

「出来ればもう戦いたくないよ」

ため息を吐くとルネが笑った。

「ショーゴの周りの女性、割と戦闘力高めだもんね」

「ははは」

もう乾いた笑いしか出ないんですがね。地下へ向かう階段を俺たちは下っていた。はじまりの神殿に初めて行った時と同じ道程のはずなのに、なんだか色々思い出して、感慨深いものがある。

「ここまで色々あったよね」

どうやらそれはルネも同じだったみたいだ。俺はルネに手を差し出した。それをルネが握ってくれる。俺たちは手を繋いで階段を下った。

はじまりの神殿に繋がる道の後ろ側、つまり壁側に当たる場所にルネはペンダントを翳した。ビー、ビーと鈍い音がしてガコと何かが外れた。なんだ?と思って見ていたら、壁がズズと動いたのだ。奥には通路がある。

「こんなところに道が?!」

「僕も前来た時、同じこと言ったよ」

あはは、とルネが笑う。俺たちは通路を進んだ。やっぱり薄暗いな。
奥へ向かうと誰かがいた。

「姫様、よくここまでお越しになられました」

「ミコのオババ様!久しぶりだね!」

ルネが老婆に駆け寄る。

「番を見つけられたと聞きましたが、この方が」

彼女が俺を眩しそうに見つめる。

「翔吾といいます」

彼女は俺の手を優しく握ってくれた。

「姫様、龍の加護は過程を経て程なく戻るでしょう。貴方様の御子も間もなく産まれます。その暁には神事をお忘れなきよう」

「分かってる。忠告ありがとう」

ルネは御神体にペンダントを翳した。光がペンダントから溢れ出す。

ブブ、と端末が鳴り出した。毎度お馴染み、ルアナさんだ。

「ルネシア、ペンダントの解呪に成功したようですね」

解呪?俺とルネは顔を見合わせた。ルアナさんは気にせず続ける。

「龍姫のもとを離れるとペンダントはロックされます。その解呪条件が神殿巡りだったというわけです」

「そうだったんだ」

ルネが驚きの声を上げる。

「ルネシア、あなたには何度も説明していますよ」

ルアナさんの口調から、彼女の呆れた顔が目に浮かぶようだ。

「ルネシア、龍の里へ戻りなさい。皆で龍の加護を取り戻しますよ」

「分かった、すぐ行くよ」

いよいよ龍の加護が元に戻るのか。それにそろそろダン先生の検診だって控えている。

「ショーゴ、次に龍の里を出る時は二人じゃないよ」

俺はそれが嬉しかった。

「うん!」

頷くと、ルネが嬉しそうに笑う。ついに会えるんだ、俺たちの子供たちに。
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