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本編
第48話 『事件発生』 ③
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「……え、あ、あの……」
私は、アイザイア様のお言葉を聞いてただそんな声を上げることしか出来ませんでした。そんなの、冗談でしょう? そう思う私もいれば、嬉しいと思う私も確かにいるのです。私だけを愛してくださっている。それが、嬉しくて。しかも、冗談めいた表情でもなくて。だけど、それと同時に恐怖という感情さえも覚えて。
だって、依存させたいとはどういうことなのですか? そう、問いかけたかったけれど出来なかった。
「……ふふっ、モニカ、戸惑っているね。……まぁ、今はそれは冗談って言うことにしておこうかな。……でも、俺がモニカだけを愛しているのは本当だ。……あの女に近づいたのは、ビエナート侯爵家の不正の証拠を確たるものにするため。ただ、それだけだよ。……俺の、可愛い可愛いモニカ」
アイザイア様が、そうおっしゃって私のことをまっすぐに見つめてこられます。そのエメラルド色の瞳に、吸い込まれてしまうそうになる私もいる。私、アイザイア様のことを信じてもいいのよね? 可愛いって、おっしゃってくださっているじゃない。私のことを……愛してくれているt、おっしゃってくださっているじゃない。
「モニカ。明日のお茶会には出られそう? 出られないのならば、遠慮なく言ってくれてもいいんだよ? 俺としても、モニカが辛いのは見たくないからさ」
私の手を握って、アイザイア様がそんなことをおっしゃる。でも、私は参加する気でした。すべてを、見届けるために。私は、次期王妃。だから……今回の『粛清』も見届けなくてはいけない。そんな責任感が、ありました。
「いいえ、出ます。私、アイザイア様のお隣に並んでも、よろしいのですよね?」
私がそう問いかければ、アイザイア様はふんわりと笑ってくださいました。その笑みは、とても安心できるもので。私は、嬉しくなります。このお方のお隣に、私は並んでもいい。そう、実感をくださったから。
「モニカ。無茶だけは、しないで。辛かったら、すぐに言ってね。ルーサーも、連れていくから。俺が側にいない間は、ルーサーについてもらっていて」
「はい、分かりました」
ふんわりと笑われて、そうおっしゃるアイザイア様はいつも通りに見えました。先ほどのお言葉さえなければ、素直に喜べたのでしょう。でも、先ほどのお言葉があるからか、私は少しばかりの恐怖をアイザイア様に覚えてしまってもいました。だけど、それ以上に嬉しかった。そのため、私も微笑みを必死に浮かべました。
(……これで、アイザイア様と想いが通じ合ったって、すれ違いはなくなった、ということで、いいのかな……?)
私は、ふとそんなことを思いました。これで、すれ違いもなくなって、想いも通じ合って。そんなことで、いいのかなって。
「じゃあ、モニカ。俺はまた明日への最終会議があるから、少しいなくなるけれど……ヴィニーとルーサーがいるから、大丈夫だよね? ……お前たちも、しっかりとモニカを守ってね」
「はい、もちろん」
アイザイア様は最後に侍女たちにそう声をかけると、私に手を振ってお部屋を出て行かれました。だから、私も静かに頭を下げて手を振り返します。
(……私、ようやくアイザイア様と仲直りが出来たのよね。……あぁ、今日はぐっすりと眠れそうだわ)
今まで募りに募っていた心労が、消えていく気分でした。だから、私は明日に向けて気を引き締めることにしました。明日はきっと、レノーレ様やアラン様もいらっしゃる。そこで、全てが終わるとアイザイア様はおっしゃっていた。レノーレ様に近づかれたのは、ビエナート侯爵家の黒い部分の証拠をつかむため。アラン様が私に近づいてきて、それに怒りを露わにされたのは、私の身に危険が及ばないようにするため。そう言うことで、いいのですよね?
(……頑張らなくちゃ。明日は、きちんと堂々と振る舞うわ)
堂々と、誇り高く振る舞わなくては。そう思い、私は気を引き締めました。明日に向けて……そう、私は心の中で決意を固めていたのです。
**
「アイザイア様」
「あぁ、ルーサー。おかえり」
俺がモニカと別れてしばらくした後。俺は専属従者であるルーサーから報告を受けていた。モニカの部屋の前で起こったことなどを、事細かにまとめられた報告書を眺めながら、俺は決してモニカには見せないようにしている不気味な笑みをルーサーに向ける。そうすれば、ルーサーは満足気に頷いていた。こいつは、俺の黒い部分まで知って。それでも、俺に誠心誠意仕えてくれている貴重な存在なのだ。
「……こっちは、準備万端だよ。……さぁ、終わりに向けて幕を下ろそうか」
――ずっと、踊り続けるのも、疲れるだろうからね。
私は、アイザイア様のお言葉を聞いてただそんな声を上げることしか出来ませんでした。そんなの、冗談でしょう? そう思う私もいれば、嬉しいと思う私も確かにいるのです。私だけを愛してくださっている。それが、嬉しくて。しかも、冗談めいた表情でもなくて。だけど、それと同時に恐怖という感情さえも覚えて。
だって、依存させたいとはどういうことなのですか? そう、問いかけたかったけれど出来なかった。
「……ふふっ、モニカ、戸惑っているね。……まぁ、今はそれは冗談って言うことにしておこうかな。……でも、俺がモニカだけを愛しているのは本当だ。……あの女に近づいたのは、ビエナート侯爵家の不正の証拠を確たるものにするため。ただ、それだけだよ。……俺の、可愛い可愛いモニカ」
アイザイア様が、そうおっしゃって私のことをまっすぐに見つめてこられます。そのエメラルド色の瞳に、吸い込まれてしまうそうになる私もいる。私、アイザイア様のことを信じてもいいのよね? 可愛いって、おっしゃってくださっているじゃない。私のことを……愛してくれているt、おっしゃってくださっているじゃない。
「モニカ。明日のお茶会には出られそう? 出られないのならば、遠慮なく言ってくれてもいいんだよ? 俺としても、モニカが辛いのは見たくないからさ」
私の手を握って、アイザイア様がそんなことをおっしゃる。でも、私は参加する気でした。すべてを、見届けるために。私は、次期王妃。だから……今回の『粛清』も見届けなくてはいけない。そんな責任感が、ありました。
「いいえ、出ます。私、アイザイア様のお隣に並んでも、よろしいのですよね?」
私がそう問いかければ、アイザイア様はふんわりと笑ってくださいました。その笑みは、とても安心できるもので。私は、嬉しくなります。このお方のお隣に、私は並んでもいい。そう、実感をくださったから。
「モニカ。無茶だけは、しないで。辛かったら、すぐに言ってね。ルーサーも、連れていくから。俺が側にいない間は、ルーサーについてもらっていて」
「はい、分かりました」
ふんわりと笑われて、そうおっしゃるアイザイア様はいつも通りに見えました。先ほどのお言葉さえなければ、素直に喜べたのでしょう。でも、先ほどのお言葉があるからか、私は少しばかりの恐怖をアイザイア様に覚えてしまってもいました。だけど、それ以上に嬉しかった。そのため、私も微笑みを必死に浮かべました。
(……これで、アイザイア様と想いが通じ合ったって、すれ違いはなくなった、ということで、いいのかな……?)
私は、ふとそんなことを思いました。これで、すれ違いもなくなって、想いも通じ合って。そんなことで、いいのかなって。
「じゃあ、モニカ。俺はまた明日への最終会議があるから、少しいなくなるけれど……ヴィニーとルーサーがいるから、大丈夫だよね? ……お前たちも、しっかりとモニカを守ってね」
「はい、もちろん」
アイザイア様は最後に侍女たちにそう声をかけると、私に手を振ってお部屋を出て行かれました。だから、私も静かに頭を下げて手を振り返します。
(……私、ようやくアイザイア様と仲直りが出来たのよね。……あぁ、今日はぐっすりと眠れそうだわ)
今まで募りに募っていた心労が、消えていく気分でした。だから、私は明日に向けて気を引き締めることにしました。明日はきっと、レノーレ様やアラン様もいらっしゃる。そこで、全てが終わるとアイザイア様はおっしゃっていた。レノーレ様に近づかれたのは、ビエナート侯爵家の黒い部分の証拠をつかむため。アラン様が私に近づいてきて、それに怒りを露わにされたのは、私の身に危険が及ばないようにするため。そう言うことで、いいのですよね?
(……頑張らなくちゃ。明日は、きちんと堂々と振る舞うわ)
堂々と、誇り高く振る舞わなくては。そう思い、私は気を引き締めました。明日に向けて……そう、私は心の中で決意を固めていたのです。
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「アイザイア様」
「あぁ、ルーサー。おかえり」
俺がモニカと別れてしばらくした後。俺は専属従者であるルーサーから報告を受けていた。モニカの部屋の前で起こったことなどを、事細かにまとめられた報告書を眺めながら、俺は決してモニカには見せないようにしている不気味な笑みをルーサーに向ける。そうすれば、ルーサーは満足気に頷いていた。こいつは、俺の黒い部分まで知って。それでも、俺に誠心誠意仕えてくれている貴重な存在なのだ。
「……こっちは、準備万端だよ。……さぁ、終わりに向けて幕を下ろそうか」
――ずっと、踊り続けるのも、疲れるだろうからね。
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